第二十六話 クロノス遺跡
禁書庫に刻まれた文字。
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第三のレガリア。
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永刻のレガリア。
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眠る地――クロノス遺跡。
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その名を聞いた瞬間。
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アルドの表情が変わった。
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「まさか……」
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セレスが振り向く。
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「知っているんですか?」
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アルドはゆっくり頷いた。
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「存在は知られている」
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「だが場所は不明だった」
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「今まではな」
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禁書庫は静まり返る。
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千年間。
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誰も見つけられなかった遺跡。
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それが突然姿を現した。
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偶然ではない。
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誰もがそう思った。
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ヴァイスが石碑を見つめる。
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金色の瞳が細められる。
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「始まったな」
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小さな声だった。
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しかし。
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アークには聞こえた。
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始まった。
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何が。
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レガリア争奪戦か。
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それとも。
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千年前の続きか。
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どちらにしても。
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もう後戻りはできない。
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その時。
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石碑の文字がさらに光る。
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全員の視線が集まる。
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新たな文章。
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今まで隠されていた文字。
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ゆっくりと浮かび上がる。
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アークは読む。
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「永刻の継承者は」
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「時を失った者の中に眠る」
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沈黙。
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フィンが眉をひそめる。
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「意味分からん」
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全員同じだった。
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だが。
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アイリスだけは違う。
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顔色が変わっていた。
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アークは気付く。
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「何か知ってるのか」
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アイリスは迷う。
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しかし。
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今は隠せなかった。
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「たぶん」
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小さく呟く。
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「たぶんだけど……」
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全員が耳を傾ける。
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「クロノス遺跡は普通の場所じゃない」
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静かな声。
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だが重かった。
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「時間が壊れてる」
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セレスが目を見開く。
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「時間が?」
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アイリスは頷く。
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「昔聞いたことがある」
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記憶が戻り始めている。
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まだ断片的だ。
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それでも。
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以前より確実だった。
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「遺跡の中では」
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「過去と現在が混ざる」
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フィンが嫌そうな顔をする。
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「絶対面倒なやつだ」
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誰も否定できなかった。
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その時。
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グレンが立ち上がる。
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「なら急ぐぞ」
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話は単純だった。
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第三のレガリアがある。
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マルクトも狙う。
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なら先に行く。
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それだけだ。
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アークも頷く。
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もう迷いはない。
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アイリスを守る。
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レガリアを守る。
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そして。
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ネフィリムを止める。
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やるべきことは決まっていた。
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翌朝。
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セレスティアの空港。
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巨大な空船が停泊している。
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長距離航路用。
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クロノス地方行き。
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出発の準備は整っていた。
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セレスは大量の本を抱えている。
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「多くない?」
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アークが聞く。
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「少ないです」
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嘘だった。
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どう見ても多い。
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フィンが呆れる。
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「船沈むぞ」
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「沈みません」
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「たぶん」
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「たぶん言うな」
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少しだけ笑いが起きる。
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久しぶりだった。
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戦いの後の穏やかな時間。
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だが。
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その平和も長くは続かない。
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出航直前。
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ヴァイスが空を見る。
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そして。
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ぽつりと呟く。
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「来る」
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アークが振り返る。
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「何が」
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答えはすぐに分かった。
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空の彼方。
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雲海の向こう。
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黒い点。
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一つ。
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二つ。
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十。
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百。
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いや。
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もっと。
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無数だった。
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魔獣の群れ。
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セレスティアへではない。
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彼らが乗る空船へ向かっている。
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リリアが顔をしかめる。
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「完全に待ち伏せね」
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ヴァイスが剣へ手を掛ける。
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そして。
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その群れの先頭。
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巨大な黒い竜が姿を現した。
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今までの敵とは明らかに違う。
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圧倒的な存在感。
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圧倒的な魔力。
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その額には。
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ネフィリムの紋章。
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マルクトはもう動いていた。
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第三のレガリアを巡る争奪戦が。
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空の上で始まろうとしていた。




