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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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27/31

第二十六話 クロノス遺跡

 禁書庫に刻まれた文字。


 ⸻


 第三のレガリア。


 ⸻


 永刻のレガリア。


 ⸻


 眠る地――クロノス遺跡。


 ⸻


 その名を聞いた瞬間。


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 アルドの表情が変わった。


 ⸻


「まさか……」


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 セレスが振り向く。


 ⸻


「知っているんですか?」


 ⸻


 アルドはゆっくり頷いた。


 ⸻


「存在は知られている」


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「だが場所は不明だった」


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「今まではな」


 ⸻


 禁書庫は静まり返る。


 ⸻


 千年間。


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 誰も見つけられなかった遺跡。


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 それが突然姿を現した。


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 偶然ではない。


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 誰もがそう思った。


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 ヴァイスが石碑を見つめる。


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 金色の瞳が細められる。


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「始まったな」


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 小さな声だった。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 アークには聞こえた。


 ⸻


 始まった。


 ⸻


 何が。


 ⸻


 レガリア争奪戦か。


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 それとも。


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 千年前の続きか。


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 どちらにしても。


 ⸻


 もう後戻りはできない。


 ⸻


 その時。


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 石碑の文字がさらに光る。


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 全員の視線が集まる。


 ⸻


 新たな文章。


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 今まで隠されていた文字。


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 ゆっくりと浮かび上がる。


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 アークは読む。


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「永刻の継承者は」


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「時を失った者の中に眠る」


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 沈黙。


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 フィンが眉をひそめる。


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「意味分からん」


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 全員同じだった。


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 だが。


 ⸻


 アイリスだけは違う。


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 顔色が変わっていた。


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 アークは気付く。


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「何か知ってるのか」


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 アイリスは迷う。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 今は隠せなかった。


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「たぶん」


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 小さく呟く。


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「たぶんだけど……」


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 全員が耳を傾ける。


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「クロノス遺跡は普通の場所じゃない」


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 静かな声。


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 だが重かった。


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「時間が壊れてる」


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 セレスが目を見開く。


 ⸻


「時間が?」


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 アイリスは頷く。


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「昔聞いたことがある」


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 記憶が戻り始めている。


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 まだ断片的だ。


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 それでも。


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 以前より確実だった。


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「遺跡の中では」


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「過去と現在が混ざる」


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 フィンが嫌そうな顔をする。


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「絶対面倒なやつだ」


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 誰も否定できなかった。


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 その時。


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 グレンが立ち上がる。


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「なら急ぐぞ」


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 話は単純だった。


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 第三のレガリアがある。


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 マルクトも狙う。


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 なら先に行く。


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 それだけだ。


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 アークも頷く。


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 もう迷いはない。


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 アイリスを守る。


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 レガリアを守る。


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 そして。


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 ネフィリムを止める。


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 やるべきことは決まっていた。


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 翌朝。


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 セレスティアの空港。


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 巨大な空船が停泊している。


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 長距離航路用。


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 クロノス地方行き。


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 出発の準備は整っていた。


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 セレスは大量の本を抱えている。


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「多くない?」


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 アークが聞く。


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「少ないです」


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 嘘だった。


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 どう見ても多い。


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 フィンが呆れる。


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「船沈むぞ」


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「沈みません」


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「たぶん」


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「たぶん言うな」


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 少しだけ笑いが起きる。


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 久しぶりだった。


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 戦いの後の穏やかな時間。


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 だが。


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 その平和も長くは続かない。


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 出航直前。


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 ヴァイスが空を見る。


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 そして。


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 ぽつりと呟く。


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「来る」


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 アークが振り返る。


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「何が」


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 答えはすぐに分かった。


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 空の彼方。


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 雲海の向こう。


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 黒い点。


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 一つ。


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 二つ。


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 十。


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 百。


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 いや。


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 もっと。


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 無数だった。


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 魔獣の群れ。


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 セレスティアへではない。


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 彼らが乗る空船へ向かっている。


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 リリアが顔をしかめる。


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「完全に待ち伏せね」


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 ヴァイスが剣へ手を掛ける。


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 そして。


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 その群れの先頭。


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 巨大な黒い竜が姿を現した。


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 今までの敵とは明らかに違う。


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 圧倒的な存在感。


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 圧倒的な魔力。


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 その額には。


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 ネフィリムの紋章。


 ⸻


 マルクトはもう動いていた。


 ⸻


 第三のレガリアを巡る争奪戦が。


 ⸻


 空の上で始まろうとしていた。

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