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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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25/31

第二十四話 創世の少女

 禁書庫は静まり返っていた。


 ⸻


 誰も喋らない。


 ⸻


 誰も動かない。


 ⸻


 全員の視線が。


 ⸻


 アイリスへ集まっていた。


 ⸻


 アイリスは映像を見つめている。


 ⸻


 千年前の自分を。


 ⸻


 いや。


 ⸻


 自分と同じ顔をした少女を。


 ⸻


 長い沈黙。


 ⸻


 やがて。


 ⸻


 アイリスは震える声で言った。


 ⸻


「分からない」


 ⸻


 本音だった。


 ⸻


 嘘ではない。


 ⸻


 本当に分からない。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 それだけではなかった。


 ⸻


「でも……」


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 頭を押さえる。


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 苦しそうに。


 ⸻


 辛そうに。


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 まるで閉じ込められていた記憶が暴れ始めたように。


 ⸻


「思い出しそうなの」


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 アークは一歩前へ出る。


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「無理するな」


 ⸻


 その声に。


 ⸻


 アイリスは少しだけ救われたような顔をした。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 もう遅かった。


 ⸻


 禁書庫中央の水晶が輝く。


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 強く。


 ⸻


 今まで以上に。


 ⸻


 アルドが顔色を変える。


 ⸻


「まさか」


 ⸻


 次の瞬間。


 ⸻


 映像が変わった。


 ⸻


 強制的に。


 ⸻


 誰の意思でもなく。


 ⸻


 水晶が勝手に記録を再生し始める。


 ⸻


 映し出される千年前。


 ⸻


 戦場だった。


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 燃える世界。


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 崩れる都市。


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 黒い空。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 ネフィリム。


 ⸻


 巨大な黒い瞳。


 ⸻


 世界を覆う災厄。


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 誰も言葉を失う。


 ⸻


 神話ではない。


 ⸻


 現実だった。


 ⸻


 本当に起きたことだった。


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 その中で。


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 五英雄が戦っている。


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 アルト。


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 ノクト。


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 ヴォルグ。


 ⸻


 エルナ。


 ⸻


 レイ。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 その中心に立つ少女。


 ⸻


 アイリス。


 ⸻


 彼女は泣いていた。


 ⸻


 悲しそうに。


 ⸻


 苦しそうに。


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 それでも。


 ⸻


 決意した顔で。


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 何かを抱いている。


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 蒼く輝く光。


 ⸻


 アルドが震える声で言った。


 ⸻


「創世のレガリア……」


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 七つ目。


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 最後のレガリア。


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 そして。


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 最も強大な力。


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 映像の中で。


 ⸻


 アルトがアイリスへ叫ぶ。


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『行け!』


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『もう時間がない!』


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 アイリスが泣きながら首を振る。


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『嫌!』


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『みんな死んじゃう!』


 ⸻


 アークの胸が締め付けられる。


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 まるで。


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 自分がそこにいたように。


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 感情まで伝わってくる。


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 アルトは笑った。


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 不思議なくらい穏やかに。


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『だから頼む』


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『お前しかできない』


 ⸻


 映像の中のアイリスが泣く。


 ⸻


 何度も。


 ⸻


 何度も。


 ⸻


 首を振る。


 ⸻


 しかし。


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 最後には。


 ⸻


 頷いた。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 創世のレガリアが輝く。


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 世界が白く染まる。


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 ネフィリムを包み込む。


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 封印。


 ⸻


 千年前の真実だった。


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 誰も喋れない。


 ⸻


 映像はまだ続いていた。


 ⸻


 光が消える。


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 そこには。


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 誰もいなかった。


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 アルトも。


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 ノクトも。


 ⸻


 仲間たちも。


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 アイリスも。


 ⸻


 全て消えていた。


 ⸻


 封印と引き換えに。


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 世界を救った。


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 その記録だった。


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 そして。


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 最後。


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 映像の終わり際。


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 消える直前のアイリスが。


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 こちらを見た。


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 ありえない。


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 記録のはずだ。


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 なのに。


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 真っ直ぐ。


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 今のアークを見るように。


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 そして。


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 微笑んだ。


 ⸻


『ごめんね』


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 その言葉と同時に。


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 映像が消える。


 ⸻


 静寂。


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 誰も動かない。


 ⸻


 そして。


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 アイリスの瞳から涙が溢れた。


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 止まらない。


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 理由も分からない。


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 なのに。


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 悲しい。


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 苦しい。


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 胸が痛い。


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 そして。


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 頭の奥で。


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 閉ざされていた扉が開く。


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 無数の記憶。


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 無数の時間。


 ⸻


 千年分の孤独。


 ⸻


 一気に流れ込んでくる。


 ⸻


 アイリスは膝をついた。


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「思い……出した……」


 ⸻


 その一言に。


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 全員の鼓動が止まる。


 ⸻


 ついに。


 ⸻


 物語最大の謎が解かれようとしていた。

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