第二十三話 禁書庫
セレスティア中央図書館。
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その最深部。
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一般の学者ですら存在を知らない場所。
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禁書庫。
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アルドに導かれながら。
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アークたちは地下へ降りていく。
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一階。
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二階。
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三階。
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どこまでも続く石階段。
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フィンが顔をしかめる。
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「まだかよ……」
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「あと少しです」
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セレスは少し興奮していた。
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禁書庫。
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学者なら誰もが憧れる場所。
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伝説そのものだった。
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その時。
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グレンが前方を見る。
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「止まれ」
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全員の足が止まる。
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目の前。
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巨大な扉。
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高さ五メートル以上。
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古代文字が刻まれている。
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アークは無意識に読み上げた。
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「記憶なき者は入るべからず」
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アルドが頷く。
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「正しい」
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セレスが呆然とする。
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もう誰も驚かなくなっていた。
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アークが古代文字を読むことに。
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それ自体が異常なのだが。
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今はもっと異常なことが多すぎた。
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アルドは扉へ手を置く。
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そして。
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静かに呟く。
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「開門」
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古代語だった。
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重い音。
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ゴゴゴゴ……
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千年の眠りから目覚めるように。
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扉が開いていく。
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その先。
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巨大な空間が広がっていた。
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全員が息を呑む。
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そこは図書館ではなかった。
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神殿だった。
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無数の石碑。
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巨大な壁画。
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天井へ伸びる柱。
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そして中央には。
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蒼く輝く水晶。
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まるで聖域だった。
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アイリスの足が止まる。
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「ここ……」
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その声は震えていた。
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知らないはずなのに。
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知っている。
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そんな顔だった。
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アルドは振り返る。
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そして。
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静かに言った。
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「ここは真実を残す場所だ」
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「歴史に消された記録」
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「王国が隠した記録」
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「神殿が封印した記録」
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全てがここにある。
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セレスが息を呑む。
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学者として。
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これ以上ない宝だった。
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しかし。
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今は興奮している場合ではない。
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アルドは中央の水晶へ歩く。
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そして。
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手を触れた。
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蒼い光。
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空間全体に文字が浮かび上がる。
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古代文字。
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そして。
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映像。
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アークたちの前に。
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千年前の世界が映し出された。
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誰も声を出せない。
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まるでその場にいるようだった。
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広大な大地。
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巨大な都市。
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今よりも遥かに栄えた文明。
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そして。
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一人の青年。
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深い蒼色の髪。
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蒼い剣。
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アークと同じ色。
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アークと似た顔。
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アルト。
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黎明の五英雄のリーダー。
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アークの胸が高鳴る。
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映像の中のアルトは笑っていた。
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英雄には見えない。
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普通の青年だった。
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仲間と笑い。
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馬鹿なことを言い。
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未来を語る。
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そんな青年。
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フィンが呟く。
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「思ったより普通だな」
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「同感だ」
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グレンも頷いた。
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伝説の勇者。
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もっと特別な存在を想像していた。
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しかし。
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目の前にいるのは人間だった。
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その時。
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映像が変わる。
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一人の少女が現れる。
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白銀の髪。
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蒼い瞳。
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優しい笑顔。
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アイリスと同じだった。
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いや。
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同じではない。
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そのものだった。
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アークは息を呑む。
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セレスも言葉を失う。
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フィンも固まる。
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誰もが理解した。
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偶然じゃない。
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ありえない。
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そして。
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映像の中のアルトが言う。
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「アイリス」
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時間が止まった。
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アイリスの顔から血の気が引く。
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映像の少女。
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そして今ここにいる少女。
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同じ名前。
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同じ顔。
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千年前。
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ありえない。
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絶対に。
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ありえない。
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しかし。
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現実はそこにあった。
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アルドが静かに目を閉じる。
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そして。
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真実を告げた。
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「アイリス」
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「君は誰なんだ」
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それは問いではなかった。
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確認だった。
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そして。
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ついに。
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千年間隠されてきた真実が。
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姿を現そうとしていた。




