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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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24/31

第二十三話 禁書庫

 セレスティア中央図書館。


 ⸻


 その最深部。


 ⸻


 一般の学者ですら存在を知らない場所。


 ⸻


 禁書庫。


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 アルドに導かれながら。


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 アークたちは地下へ降りていく。


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 一階。


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 二階。


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 三階。


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 どこまでも続く石階段。


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 フィンが顔をしかめる。


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「まだかよ……」


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「あと少しです」


 ⸻


 セレスは少し興奮していた。


 ⸻


 禁書庫。


 ⸻


 学者なら誰もが憧れる場所。


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 伝説そのものだった。


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 その時。


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 グレンが前方を見る。


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「止まれ」


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 全員の足が止まる。


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 目の前。


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 巨大な扉。


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 高さ五メートル以上。


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 古代文字が刻まれている。


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 アークは無意識に読み上げた。


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「記憶なき者は入るべからず」


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 アルドが頷く。


 ⸻


「正しい」


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 セレスが呆然とする。


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 もう誰も驚かなくなっていた。


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 アークが古代文字を読むことに。


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 それ自体が異常なのだが。


 ⸻


 今はもっと異常なことが多すぎた。


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 アルドは扉へ手を置く。


 ⸻


 そして。


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 静かに呟く。


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「開門」


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 古代語だった。


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 重い音。


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 ゴゴゴゴ……


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 千年の眠りから目覚めるように。


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 扉が開いていく。


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 その先。


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 巨大な空間が広がっていた。


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 全員が息を呑む。


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 そこは図書館ではなかった。


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 神殿だった。


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 無数の石碑。


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 巨大な壁画。


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 天井へ伸びる柱。


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 そして中央には。


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 蒼く輝く水晶。


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 まるで聖域だった。


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 アイリスの足が止まる。


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「ここ……」


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 その声は震えていた。


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 知らないはずなのに。


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 知っている。


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 そんな顔だった。


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 アルドは振り返る。


 ⸻


 そして。


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 静かに言った。


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「ここは真実を残す場所だ」


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「歴史に消された記録」


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「王国が隠した記録」


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「神殿が封印した記録」


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 全てがここにある。


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 セレスが息を呑む。


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 学者として。


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 これ以上ない宝だった。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 今は興奮している場合ではない。


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 アルドは中央の水晶へ歩く。


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 そして。


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 手を触れた。


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 蒼い光。


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 空間全体に文字が浮かび上がる。


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 古代文字。


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 そして。


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 映像。


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 アークたちの前に。


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 千年前の世界が映し出された。


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 誰も声を出せない。


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 まるでその場にいるようだった。


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 広大な大地。


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 巨大な都市。


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 今よりも遥かに栄えた文明。


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 そして。


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 一人の青年。


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 深い蒼色の髪。


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 蒼い剣。


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 アークと同じ色。


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 アークと似た顔。


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 アルト。


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 黎明の五英雄のリーダー。


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 アークの胸が高鳴る。


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 映像の中のアルトは笑っていた。


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 英雄には見えない。


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 普通の青年だった。


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 仲間と笑い。


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 馬鹿なことを言い。


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 未来を語る。


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 そんな青年。


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 フィンが呟く。


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「思ったより普通だな」


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「同感だ」


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 グレンも頷いた。


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 伝説の勇者。


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 もっと特別な存在を想像していた。


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 しかし。


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 目の前にいるのは人間だった。


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 その時。


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 映像が変わる。


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 一人の少女が現れる。


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 白銀の髪。


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 蒼い瞳。


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 優しい笑顔。


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 アイリスと同じだった。


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 いや。


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 同じではない。


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 そのものだった。


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 アークは息を呑む。


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 セレスも言葉を失う。


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 フィンも固まる。


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 誰もが理解した。


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 偶然じゃない。


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 ありえない。


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 そして。


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 映像の中のアルトが言う。


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「アイリス」


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 時間が止まった。


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 アイリスの顔から血の気が引く。


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 映像の少女。


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 そして今ここにいる少女。


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 同じ名前。


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 同じ顔。


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 千年前。


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 ありえない。


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 絶対に。


 ⸻


 ありえない。


 ⸻


 しかし。


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 現実はそこにあった。


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 アルドが静かに目を閉じる。


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 そして。


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 真実を告げた。


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「アイリス」


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「君は誰なんだ」


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 それは問いではなかった。


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 確認だった。


 ⸻


 そして。


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 ついに。


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 千年間隠されてきた真実が。


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 姿を現そうとしていた。

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