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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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第二十話 災厄の瞳

 空が消えた。


 ⸻


 巨大な黒い瞳。


 ⸻


 それだけで十分だった。


 ⸻


 誰も動けない。


 ⸻


 誰も声を出せない。


 ⸻


 ただ見上げる。


 ⸻


 本能が警鐘を鳴らしている。


 ⸻


 逃げろ。


 ⸻


 見てはいけない。


 ⸻


 関わるな。


 ⸻


 それなのに目を離せない。


 ⸻


 圧倒的な存在感だった。


 ⸻


「ネフィリム……」


 ⸻


 アイリスの声が震える。


 ⸻


 その名前を聞いた瞬間。


 ⸻


 アークの頭に激痛が走った。


 ⸻


 ズキッ――


 ⸻


 今までとは比べ物にならない。


 ⸻


 視界が真っ白になる。


 ⸻


 崩壊した大地。


 ⸻


 燃える空。


 ⸻


 無数の死体。


 ⸻


 絶望。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 あの瞳。


 ⸻


 世界を覆う巨大な瞳。


 ⸻


『まだ終わっていない』


 ⸻


 誰かの声が聞こえる。


 ⸻


『封印が崩れる』


 ⸻


『急げ』


 ⸻


 知らないはずの記憶。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 確かにそこにあった。


 ⸻


 アークは膝をつく。


 ⸻


「アーク!」


 ⸻


 アイリスが駆け寄る。


 ⸻


 セレスも慌てて支える。


 ⸻


「大丈夫ですか!?」


 ⸻


 答えられない。


 ⸻


 頭の中が記憶で溢れていた。


 ⸻


 その時だった。


 ⸻


 空の瞳が消える。


 ⸻


 まるで幻だったかのように。


 ⸻


 黒い雲も消えていく。


 ⸻


 静寂。


 ⸻


 誰もが呆然としていた。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 マルクトだけは笑っている。


 ⸻


 満足そうに。


 ⸻


 嬉しそうに。


 ⸻


「見ましたか」


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 誰に向けた言葉なのか。


 ⸻


 全員へだった。


 ⸻


「偉大なる存在を」


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 ヴァイスが剣を向ける。


 ⸻


「黙れ」


 ⸻


 マルクトは肩を竦める。


 ⸻


「まだ完全ではありません」


 ⸻


「だからこそ価値がある」


 ⸻


 その言葉に。


 ⸻


 アルドの顔色が変わる。


 ⸻


「まさか」


 ⸻


「封印を解こうとしているのか」


 ⸻


 マルクトは笑う。


 ⸻


 否定しない。


 ⸻


 つまり答えだった。


 ⸻


 セレスが息を呑む。


 ⸻


「正気じゃない……」


 ⸻


「正気ですよ」


 ⸻


 即答だった。


 ⸻


 そして。


 ⸻


「世界は一度終わるべきです」


 ⸻


 狂っていた。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 本人は本気だった。


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 だからこそ恐ろしい。


 ⸻


 その時。


 ⸻


 星記のレガリアが強く輝く。


 ⸻


 蒼い本。


 ⸻


 空中でページが開く。


 ⸻


 無数の文字。


 ⸻


 無数の記録。


 ⸻


 千年分の歴史。


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 全てが溢れ出す。


 ⸻


 アイリスが顔を上げる。


 ⸻


 ヴァイスも気付いた。


 ⸻


「まずい」


 ⸻


 珍しく焦っている。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 レガリアは反応する。


 ⸻


 誰かに。


 ⸻


 一直線に。


 ⸻


 蒼い光が伸びる。


 ⸻


 アークではない。


 ⸻


 アイリスでもない。


 ⸻


 セレスだった。


 ⸻


「え?」


 ⸻


 本人が一番驚いていた。


 ⸻


 蒼い光が彼女を包む。


 ⸻


 本が浮かび上がる。


 ⸻


 周囲に古代文字が現れる。


 ⸻


 まるで祝福するように。


 ⸻


 アルドが目を見開く。


 ⸻


「継承者……!」


 ⸻


 セレスは理解できていない。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 本能で分かった。


 ⸻


 頭の中へ知識が流れ込んでくる。


 ⸻


 知らない歴史。


 ⸻


 知らない文明。


 ⸻


 知らない世界。


 ⸻


 全てが。


 ⸻


「きゃああああっ!」


 ⸻


 セレスが叫ぶ。


 ⸻


 光が爆発する。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 その手の中に一冊の本が現れた。


 ⸻


 蒼く輝く魔導書。


 ⸻


 星記のレガリア。


 ⸻


 第二のレガリアだった。


 ⸻


 静寂。


 ⸻


 誰もが息を呑む。


 ⸻


 セレス自身も。


 ⸻


 震える手で本を見つめていた。


 ⸻


 その時。


 ⸻


 マルクトが笑った。


 ⸻


「やはり」


 ⸻


 その目は細められる。


 ⸻


「予定通りですね」


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 嫌な予感がした。


 ⸻


 ヴァイスも同じだった。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 遅かった。


 ⸻


 マルクトの足元に巨大な魔法陣が広がる。


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 黒い光。


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 禍々しい気配。


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「退け!」


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 ヴァイスが叫ぶ。


 ⸻


 次の瞬間。


 ⸻


 地面が割れた。


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 巨大な腕が現れる。


 ⸻


 黒い結晶で覆われた異形。


 ⸻


 人ではない。


 ⸻


 魔物でもない。


 ⸻


 もっと別の何か。


 ⸻


 マルクトは笑う。


 ⸻


「さあ」


 ⸻


「第二幕の始まりです」


 ⸻


 その言葉と共に。


 ⸻


 セレスティアを揺るがす新たな戦いが始まった。

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