第十八話 星記のレガリア
「来い」
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ヴァイスはそれだけ言った。
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説明はない。
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相変わらずだった。
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「だから説明しろ!」
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アークが叫ぶ。
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だが。
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ヴァイスは振り返らない。
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「説明している時間はない」
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「毎回それだな!」
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フィンも突っ込む。
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リリアが申し訳なさそうな顔をした。
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「ごめんね」
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「本当にごめん」
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仲間も苦労しているらしい。
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その時だった。
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黒翼獣が広場へ降下する。
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轟音。
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石畳が砕ける。
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衛兵たちが吹き飛ばされた。
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「まずい!」
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グレンが前へ出る。
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大剣を構える。
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だが。
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黒翼獣はグレンではなく。
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アイリスを見ていた。
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真っ直ぐ。
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獲物を見るように。
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アイリスの顔色が変わる。
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「っ……!」
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黒翼獣が咆哮する。
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そして。
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突撃。
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アークは反射的に飛び出した。
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「アイリス!」
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蒼空のレガリアを抜く。
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蒼い光。
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風が巻き起こる。
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黒翼獣の爪と剣がぶつかる。
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衝撃。
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アークは数メートル押し込まれた。
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重い。
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圧倒的な力。
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「くそっ!」
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だが。
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負けるわけにはいかない。
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後ろには仲間がいる。
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アイリスがいる。
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その時。
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ヴァイスが動いた。
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黒い剣が閃く。
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一撃。
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黒翼獣の片翼が切り裂かれる。
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さらに。
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グレンが踏み込む。
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大剣が叩き込まれる。
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フィンが側面へ回る。
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セレスが魔導術を放つ。
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初めてだった。
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全員が同時に戦うのは。
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黒翼獣は押され始める。
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そして。
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最後。
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アークが飛び込んだ。
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蒼空のレガリアが輝く。
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一閃。
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黒翼獣の核が砕けた。
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魔獣は崩れ落ちる。
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静寂。
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しかし。
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終わりではなかった。
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ヴァイスは時計塔の方向を見る。
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「遅い」
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その声は焦っていた。
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アークは気付く。
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この男。
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本当に急いでいる。
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理由は分からない。
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だが。
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嘘ではない。
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その時。
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セレスティア中央。
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巨大な光が空へ伸びた。
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白い柱。
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天まで届きそうな光。
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街中の人々が見上げる。
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セレスが顔色を変えた。
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「まさか……!」
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アルドも息を呑む。
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「封印が……」
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誰もが理解した。
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何かが起きている。
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最悪の形で。
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ヴァイスが剣を握る。
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金色の瞳が細められる。
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「間に合わなかったか」
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その言葉が終わる。
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次の瞬間。
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光の柱の中心から。
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無数の文字が空へ広がった。
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古代文字。
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巨大な魔法陣。
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そして。
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その中央に。
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ひとつの本が浮かび上がる。
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蒼く輝く本。
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神秘的な光。
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セレスが震える声で呟く。
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「星記のレガリア……」
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第二のレガリア。
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ついに姿を現した。
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だが。
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同時に。
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別の存在も現れる。
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光の中から。
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黒いローブを纏った老人が歩み出る。
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長い白髪。
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細い身体。
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異様な瞳。
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アークは見覚えがあった。
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リベルタ地下。
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セレスティア襲撃。
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全ての裏にいた男。
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マルクト。
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ネフィリム教団の教祖。
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ついに。
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黒幕が姿を現した。
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「ようやく辿り着きました」
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老人は微笑む。
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その視線は。
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星記のレガリア。
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そして。
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アイリスへ向いていた。
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まるで。
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ずっと探していたものを見つけたように。
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アイリスの顔から血の気が引く。
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マルクトは笑った。
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「お久しぶりです」
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その言葉に。
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アークたちは凍り付く。
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お久しぶり。
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初対面ではない。
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つまり。
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マルクトはアイリスを知っている。
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そして。
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アイリスもまた。
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彼を知っている。
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隠されていた真実が。
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少しずつ姿を見せ始める。




