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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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18/31

第十七話 黒翼襲来

 警鐘が鳴り響く。


 ⸻


 ゴォォォン!!


 ⸻


 ゴォォォン!!


 ⸻


 セレスティア中に緊張が走った。


 ⸻


 学者たちが逃げ惑う。


 ⸻


 学生たちが避難する。


 ⸻


 街中が騒然としていた。


 ⸻


「数が多すぎる……!」


 ⸻


 窓の外を見たフィンが顔を引きつらせる。


 ⸻


 空を埋め尽くす黒い影。


 ⸻


 昨日リベルタで見た魔獣と同じ。


 ⸻


 しかし規模が違った。


 ⸻


 軍隊だ。


 ⸻


 完全に。


 ⸻


「先生!」


 ⸻


 セレスが振り返る。


 ⸻


 アルドは険しい顔で空を見ていた。


 ⸻


「狙いは間違いなくここだ」


 ⸻


「第二のレガリアですか?」


 ⸻


 アルドは頷く。


 ⸻


「星記のレガリア」


 ⸻


 ついに名前が出た。


 ⸻


 第二のレガリア。


 ⸻


 アークたちは顔を見合わせる。


 ⸻


 ヴァイスの言葉は本当だった。


 ⸻


 確実に何かが動いている。


 ⸻


 その時だった。


 ⸻


 ドォォォン!!


 ⸻


 巨大な衝撃。


 ⸻


 塔全体が揺れる。


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 天井から砂埃が落ちる。


 ⸻


「まずい!」


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 グレンが立ち上がる。


 ⸻


「来たぞ!」


 ⸻


 窓の外。


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 巨大な魔獣が図書館へ突撃していた。


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 普通の個体ではない。


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 大きい。


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 五メートル以上ある。


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 全身が黒い結晶に覆われている。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 胸には例の紋章。


 ⸻


 ネフィリムの紋章。


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「なんだあれ……」


 ⸻


 フィンが呟く。


 ⸻


 誰も答えられなかった。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 アルドだけは知っていた。


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「黒翼獣」


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 その声は重い。


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「千年前の記録にある」


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「まさか……」


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 セレスが息を呑む。


 ⸻


「そんなものが本当に」


 ⸻


 存在した。


 ⸻


 目の前に。


 ⸻


 黒翼獣は咆哮する。


 ⸻


 その声だけで窓ガラスに亀裂が入った。


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 そして。


 ⸻


 再び突撃。


 ⸻


 図書館の外壁が砕け散る。


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 悲鳴が響く。


 ⸻


「避難が先だ!」


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 グレンが叫ぶ。


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 全員が動く。


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 書庫を飛び出す。


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 階段を駆け下りる。


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 図書館の内部は混乱していた。


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 本が散乱している。


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 職員たちが逃げている。


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 学生たちもいる。


 ⸻


 アークは近くの子供を抱き上げた。


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「出口はどっちだ!?」


 ⸻


「こ、こっち!」


 ⸻


 子供が指差す。


 ⸻


 案内しながら避難を続ける。


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 その途中。


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 ズキッ――


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 頭痛。


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 まただった。


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 知らない記憶。


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 崩壊する塔。


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 逃げる人々。


 ⸻


 そして。


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 空を埋め尽くす黒い翼。


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 今と同じ光景。


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『間に合わない』


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 誰かが言う。


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『レガリアを守れ』


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 声が響く。


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 アークは歯を食いしばった。


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「くそっ!」


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 なぜこんなものが見える。


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 なぜ自分だけ。


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 だが。


 ⸻


 考える時間はなかった。


 ⸻


 外へ飛び出す。


 ⸻


 広場には既に避難民が集まっている。


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 しかし。


 ⸻


 空から魔獣が降りてきた。


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 一体。


 ⸻


 二体。


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 三体。


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 数が多い。


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 衛兵たちが応戦している。


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 だが押されていた。


 ⸻


「アーク!」


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 アイリスの声。


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 振り向く。


 ⸻


 彼女の顔色が悪い。


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 明らかに。


 ⸻


 何かがおかしい。


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「大丈夫か!?」


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 アイリスは答えない。


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 ただ。


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 遠くを見ていた。


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 街の中央。


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 巨大な時計塔。


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 その先。


 ⸻


 セレスティア最深部。


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 そこにあるものを。


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「星記のレガリアが……」


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 小さく呟く。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 初めてはっきり言った。


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「狙われてる」


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 全員が固まる。


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 今まで曖昧だった。


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 記憶がないと言っていた。


 ⸻


 だが。


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 今の言葉は違う。


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 確信だった。


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 アークはアイリスを見る。


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 アイリスも気付く。


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 自分が口にしてしまったことに。


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 沈黙。


 ⸻


 そして。


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 遠くの空で爆発が起きた。


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 轟音。


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 炎。


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 悲鳴。


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 セレスティアが戦場になっていく。


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 その時。


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 誰かが空から降り立った。


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 黒い外套。


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 白銀の髪。


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 金色の瞳。


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 ヴァイス。


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 彼は着地と同時に剣を抜く。


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 そして。


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 アークへ言った。


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「来い」


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「何?」


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「時間がない」


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 ヴァイスの表情は真剣だった。


 ⸻


「星記のレガリアを奪われたら終わる」


 ⸻


 その言葉と共に。


 ⸻


 第二のレガリアを巡る戦いが始まる。

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