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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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17/31

第十六話 黎明の五英雄

 書庫の空気が静まり返る。


 ⸻


 誰も口を開かない。


 ⸻


 アルドの言葉を待っていた。


 ⸻


 千年前。


 ⸻


 アルカディアが滅びかけた。


 ⸻


 そんな話は神話でしか聞いたことがない。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 今までの出来事を考えれば。


 ⸻


 笑い飛ばせる話でもなかった。


 ⸻


 アルドは机の上へ一枚の古い地図を広げる。


 ⸻


 今のアルカディアとは違う。


 ⸻


 もっと大きい。


 ⸻


 もっと広い。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 どこか壊れている。


 ⸻


「これが千年前の世界だ」


 ⸻


 セレスが息を呑む。


 ⸻


「本物ですか……?」


 ⸻


「写本だがな」


 ⸻


 アルドは頷く。


 ⸻


「当時の記録を元に作られている」


 ⸻


 アークは地図を見る。


 ⸻


 すると。


 ⸻


 まただった。


 ⸻


 ズキッ――


 ⸻


 頭痛。


 ⸻


 知らない景色。


 ⸻


 巨大な都市。


 ⸻


 青い空。


 ⸻


 笑い声。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 炎。


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 崩壊。


 ⸻


 悲鳴。


 ⸻


 映像が流れ込む。


 ⸻


 まるで。


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 自分がそこにいたように。


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「くっ……」


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 頭を押さえる。


 ⸻


 アイリスが心配そうに覗き込む。


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「アーク」


 ⸻


「平気だ」


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 嘘だった。


 ⸻


 全然平気じゃない。


 ⸻


 しかし。


 ⸻


 話は続く。


 ⸻


 アルドは地図の中央を指差した。


 ⸻


「天裂の災厄」


 ⸻


 その言葉が出た瞬間。


 ⸻


 アイリスの肩が僅かに震えた。


 ⸻


 誰も気付かなかった。


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 アーク以外は。


 ⸻


「それが世界崩壊の名前だ」


 ⸻


「ネフィリムと関係あるんですか」


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 セレスが聞く。


 ⸻


 アルドは頷いた。


 ⸻


「ある」


 ⸻


 そして。


 ⸻


「全ての始まりだ」


 ⸻


 部屋が静まり返る。


 ⸻


 アルドは古い本を開く。


 ⸻


 そこに描かれていたのは六人。


 ⸻


 五人ではない。


 ⸻


 六人だった。


 ⸻


 アークは目を見開く。


 ⸻


 中央に立つ青年。


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 蒼い剣。


 ⸻


 深い蒼色の髪。


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 どこか自分に似ていた。


 ⸻


「この男がアルト」


 ⸻


「黎明の五英雄のリーダー」


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 アークの鼓動が早くなる。


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 アルト。


 ⸻


 夢で何度も見た男。


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 間違いない。


 ⸻


「そして」


 ⸻


 アルドが隣を指差す。


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 白銀の髪の少女。


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 優しそうな笑顔。


 ⸻


 アイリスにそっくりだった。


 ⸻


「創世の巫女リシア」


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 アイリスが目を伏せる。


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 何かを知っている顔だった。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 まだ何も言わない。


 ⸻


 アルドは説明を続ける。


 ⸻


「騎士ヴォルグ」


 ⸻


 大剣を持つ大男。


 ⸻


 グレンに少し似ていた。


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「賢者エルナ」


 ⸻


 本を抱えた女性。


 ⸻


 セレスが目を輝かせる。


 ⸻


「学者だ……!」


 ⸻


 そこか。


 ⸻


「盗賊レイ」


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 笑っている少年。


 ⸻


 フィンにそっくりだった。


 ⸻


「なんか嫌だな」


 ⸻


 本人は不満そうだった。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 アルドの指が最後の人物へ移る。


 ⸻


 黒いコート。


 ⸻


 鋭い目。


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 長剣。


 ⸻


「第六の英雄」


 ⸻


 その名前を聞いた瞬間。


 ⸻


 空気が変わった。


 ⸻


「ノクト」


 ⸻


 アークの頭に浮かぶ。


 ⸻


 白銀の髪。


 ⸻


 金色の瞳。


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 ヴァイス。


 ⸻


 アルドは静かに続ける。


 ⸻


「だが歴史から消された」


 ⸻


「消された?」


 ⸻


 グレンが聞く。


 ⸻


「そうだ」


 ⸻


 アルドは頷く。


 ⸻


「現在の歴史書には存在しない」


 ⸻


 セレスが驚く。


 ⸻


「なぜですか」


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 長い沈黙。


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 やがて。


 ⸻


 アルドは答えた。


 ⸻


「裏切り者だからだ」


 ⸻


 部屋が静まり返る。


 ⸻


 アークは息を呑む。


 ⸻


 裏切り者。


 ⸻


 ノクトが。


 ⸻


「しかし」


 ⸻


 アルドは言葉を続ける。


 ⸻


「私は違うと思っている」


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「え?」


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「資料が合わない」


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 学者らしい答えだった。


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 感情ではない。


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 記録。


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 証拠。


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 それが合わない。


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「誰かが歴史を書き換えた」


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 その言葉に。


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 全員の背筋が寒くなる。


 ⸻


 千年前の真実。


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 英雄たち。


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 消された存在。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 ヴァイス。


 ⸻


 全てが少しずつ繋がり始めていた。


 ⸻


 その時だった。


 ⸻


 ドォォォォォン!!


 ⸻


 突然。


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 図書館全体が揺れた。


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 本棚が震える。


 ⸻


 悲鳴が響く。


 ⸻


 窓ガラスが鳴る。


 ⸻


「なっ!?」


 ⸻


 フィンが立ち上がる。


 ⸻


 アルドも顔色を変えた。


 ⸻


 ただ事ではない。


 ⸻


 再び衝撃。


 ⸻


 ドォォォォン!!


 ⸻


 今度はもっと近い。


 ⸻


 セレスが窓へ駆け寄る。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 絶句した。


 ⸻


「そんな……」


 ⸻


 アークたちも窓を見る。


 ⸻


 セレスティアの空。


 ⸻


 そこに。


 ⸻


 巨大な黒い翼が広がっていた。


 ⸻


 一体ではない。


 ⸻


 十体。


 ⸻


 二十体。


 ⸻


 いや。


 ⸻


 数え切れない。


 ⸻


 黒い魔獣の群れ。


 ⸻


 街へ向かって飛来している。


 ⸻


 そしてその中心。


 ⸻


 雲の向こうに。


 ⸻


 城のような巨大な影が浮かんでいた。


 ⸻


 アルドが青ざめる。


 ⸻


「馬鹿な……」


 ⸻


 その声は震えていた。


 ⸻


「まだ早すぎる」


 ⸻


 誰に言ったのか分からない。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 その表情だけで理解できた。


 ⸻


 最悪の事態だと。


 ⸻


 セレスティアが襲われる。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 第二のレガリアを巡る戦いが始まる。

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