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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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16/31

第十五話 賢者アルド

 老人の名はアルド。


 ⸻


 セレスティア中央図書館の館長。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 アルカディアでも指折りの歴史学者だった。


 ⸻


「ついて来なさい」


 ⸻


 アルドはそう言って歩き出す。


 ⸻


 アークたちは顔を見合わせた。


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 ただ事ではない。


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 それだけは分かった。


 ⸻


 図書館の奥へ進む。


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 一般人が入れない区域。


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 関係者専用通路。


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 地下へ続く階段。


 ⸻


 フィンが小声で呟く。


 ⸻


「秘密の匂いがする」


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「大体合ってます」


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 セレスも否定しなかった。


 ⸻


 やがて。


 ⸻


 重厚な扉の前へ到着する。


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 アルドが鍵を差し込む。


 ⸻


 ゴゴゴ……


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 扉が開く。


 ⸻


 そこは書庫だった。


 ⸻


 ただし普通ではない。


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 壁一面に古文書。


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 石板。


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 魔導記録。


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 数百年分の歴史が眠っている。


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 アークは圧倒された。


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 セレスに至っては目が輝いている。


 ⸻


「天国だ……」


 ⸻


「お前だけだ」


 ⸻


 フィンが即答した。


 ⸻


 アルドは中央の机へ向かう。


 ⸻


 そして。


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 一冊の古い本を取り出した。


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 革表紙。


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 かなり古い。


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 下手をすれば千年近いかもしれない。


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「見なさい」


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 本が開かれる。


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 そこには絵が描かれていた。


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 一人の青年。


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 剣を持っている。


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 その剣を見た瞬間。


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 アークは立ち上がった。


 ⸻


「それ……」


 ⸻


 蒼空のレガリア。


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 間違いない。


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 今自分が持っている剣だった。


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 アルドは静かに頷く。


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「そうだ」


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 そして。


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「その剣は伝説だ」


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 部屋が静まり返る。


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 誰も喋らない。


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 アルドはページをめくる。


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 次の絵。


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 五人の英雄。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 白銀の髪の少女。


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 アークの心臓が止まりそうになる。


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 夢で見た。


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 何度も。


 ⸻


 何度も。


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 見た少女だった。


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「っ!」


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 頭痛。


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 激しい痛み。


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 視界が揺れる。


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 知らない景色。


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 崩壊する都市。


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 戦場。


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 血。


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 そして。


 ⸻


 一人の青年。


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 深い蒼の髪。


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 蒼空のレガリアを握っている。


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『前へ進め』


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 声が聞こえる。


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『絶対に振り返るな』


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 その瞬間。


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 アークは椅子から落ちそうになった。


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「アーク!」


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 アイリスが支える。


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 グレンも立ち上がる。


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「大丈夫か」


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「……ああ」


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 だが。


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 大丈夫ではなかった。


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 夢じゃない。


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 今のは。


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 記憶だ。


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 そんな気がした。


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 アルドはその様子を見ていた。


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 驚いてはいない。


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 まるで予想していたように。


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 そして。


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 静かに告げる。


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「やはりか」


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「何がですか」


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 セレスが聞く。


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 アルドはアークを見る。


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 真っ直ぐに。


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「君は選ばれた」


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 その言葉に。


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 アークは眉をひそめる。


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 まただ。


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 最近そういう言葉ばかり聞く。


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 選ばれた。


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 継承者。


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 運命。


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 どいつもこいつも説明が足りない。


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 フィンも同じことを思ったらしい。


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「ちゃんと説明してくれ」


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 珍しく真面目だった。


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 アルドは小さく笑う。


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 そして。


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 本を閉じた。


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「いいだろう」


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 長い沈黙。


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 やがて。


 ⸻


 賢者は語り始める。


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「千年前」


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「アルカディアは一度滅びかけた」


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 その言葉と共に。


 ⸻


 物語は。


 ⸻


 ついに千年前の真実へ近付き始める。

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