第十五話 賢者アルド
老人の名はアルド。
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セレスティア中央図書館の館長。
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そして。
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アルカディアでも指折りの歴史学者だった。
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「ついて来なさい」
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アルドはそう言って歩き出す。
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アークたちは顔を見合わせた。
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ただ事ではない。
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それだけは分かった。
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図書館の奥へ進む。
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一般人が入れない区域。
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関係者専用通路。
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地下へ続く階段。
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フィンが小声で呟く。
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「秘密の匂いがする」
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「大体合ってます」
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セレスも否定しなかった。
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やがて。
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重厚な扉の前へ到着する。
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アルドが鍵を差し込む。
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ゴゴゴ……
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扉が開く。
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そこは書庫だった。
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ただし普通ではない。
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壁一面に古文書。
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石板。
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魔導記録。
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数百年分の歴史が眠っている。
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アークは圧倒された。
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セレスに至っては目が輝いている。
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「天国だ……」
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「お前だけだ」
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フィンが即答した。
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アルドは中央の机へ向かう。
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そして。
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一冊の古い本を取り出した。
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革表紙。
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かなり古い。
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下手をすれば千年近いかもしれない。
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「見なさい」
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本が開かれる。
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そこには絵が描かれていた。
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一人の青年。
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剣を持っている。
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その剣を見た瞬間。
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アークは立ち上がった。
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「それ……」
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蒼空のレガリア。
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間違いない。
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今自分が持っている剣だった。
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アルドは静かに頷く。
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「そうだ」
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そして。
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「その剣は伝説だ」
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部屋が静まり返る。
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誰も喋らない。
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アルドはページをめくる。
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次の絵。
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五人の英雄。
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そして。
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白銀の髪の少女。
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アークの心臓が止まりそうになる。
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夢で見た。
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何度も。
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何度も。
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見た少女だった。
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「っ!」
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頭痛。
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激しい痛み。
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視界が揺れる。
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知らない景色。
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崩壊する都市。
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戦場。
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血。
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そして。
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一人の青年。
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深い蒼の髪。
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蒼空のレガリアを握っている。
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『前へ進め』
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声が聞こえる。
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『絶対に振り返るな』
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その瞬間。
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アークは椅子から落ちそうになった。
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「アーク!」
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アイリスが支える。
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グレンも立ち上がる。
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「大丈夫か」
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「……ああ」
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だが。
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大丈夫ではなかった。
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夢じゃない。
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今のは。
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記憶だ。
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そんな気がした。
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アルドはその様子を見ていた。
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驚いてはいない。
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まるで予想していたように。
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そして。
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静かに告げる。
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「やはりか」
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「何がですか」
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セレスが聞く。
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アルドはアークを見る。
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真っ直ぐに。
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「君は選ばれた」
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その言葉に。
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アークは眉をひそめる。
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まただ。
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最近そういう言葉ばかり聞く。
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選ばれた。
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継承者。
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運命。
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どいつもこいつも説明が足りない。
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フィンも同じことを思ったらしい。
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「ちゃんと説明してくれ」
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珍しく真面目だった。
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アルドは小さく笑う。
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そして。
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本を閉じた。
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「いいだろう」
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長い沈黙。
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やがて。
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賢者は語り始める。
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「千年前」
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「アルカディアは一度滅びかけた」
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その言葉と共に。
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物語は。
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ついに千年前の真実へ近付き始める。




