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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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15/31

第十四話 天空学術都市セレスティア

 リベルタを出発して三日。


 ⸻


 空船は雲海の上を進んでいた。


 ⸻


 目的地はセレスティア。


 ⸻


 学術都市。


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 知識の都。


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 そして。


 ⸻


 セレスの故郷。


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「帰るの久しぶりか?」


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 アークが聞く。


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 セレスは頷いた。


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「二年ぶりです」


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「そんなに?」


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「研究で各地を回ってましたから」


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 フィンが呆れた顔をする。


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「十九歳で家出みたいなことしてんのか」


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「学術調査です」


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 即座に訂正された。


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 しかし。


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 グレンもフィン側だった。


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「家出だな」


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「違います!」


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 船内に笑いが広がる。


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 アイリスも少しだけ笑った。


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 最近。


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 彼女はよく笑うようになった。


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 アークはそれが嬉しかった。


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 出会った頃のアイリスは。


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 どこか壊れそうだったから。


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 その時だった。


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 船員が叫ぶ。


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「見えてきたぞ!」


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 全員が窓へ向かう。


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 そして。


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 アークは息を呑んだ。


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 巨大だった。


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 空に浮かぶ白い都市。


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 何本もの橋。


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 何十もの塔。


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 巨大な時計塔。


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 そして。


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 都市全体を覆うように建てられた大図書館。


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 まるで空に浮かぶ王国だった。


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「すげぇ……」


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 自然と声が漏れる。


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 リベルタも大きかった。


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 だが。


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 雰囲気が違う。


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 ここは知識の街だった。


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 セレスが少し誇らしそうに言う。


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「ようこそ」


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「天空学術都市セレスティアへ」


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 数時間後。


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 空船は港へ到着した。


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 街へ降りる。


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 すぐに分かった。


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 この街は変だ。


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 良い意味で。


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 歩いている人の多くが本を持っている。


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 道端で議論している。


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 広場で講義をしている。


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 子供まで本を読んでいる。


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 フィンが顔を引きつらせた。


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「息苦しい」


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「失礼ですね」


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 セレスが抗議する。


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 しかし。


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 アークも少し同意だった。


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 本が多すぎる。


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 すると。


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 セレスが歩き出す。


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「まずは図書館です」


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 やっぱりだった。


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 セレスティア中央図書館。


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 それはもはや建物ではなかった。


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 城だった。


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 高さだけで十階以上。


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 無数の書庫。


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 無数の資料。


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 何百万冊あるのか想像もできない。


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 フィンが絶望した顔をする。


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「終わった」


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「何が」


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「ここ全部調べるの?」


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「そんなわけないです」


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 さすがのセレスもそこまでは言わない。


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 たぶん。


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 図書館へ入る。


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 すると。


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 受付にいた老人が顔を上げた。


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 白髪。


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 眼鏡。


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 優しそうな顔。


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 そして。


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 セレスを見るなり固まった。


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「セレス」


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「先生!」


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 セレスが駆け寄る。


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 どうやら知り合いらしい。


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 老人は深くため息を吐いた。


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「また危険な遺跡に潜っていたな」


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「なぜ分かるんですか」


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「顔だ」


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 慣れていた。


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 完全に慣れていた。


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 アークは苦笑する。


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 すると。


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 老人の視線がこちらへ向く。


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 正確には。


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 アークではない。


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 腰に下げた蒼空のレガリアだった。


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 老人の顔色が変わる。


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 一瞬で。


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 空気が変わった。


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「その剣は」


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 低い声だった。


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 今までとは違う。


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 アークは無意識に剣へ手を添える。


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 老人はしばらく沈黙する。


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 そして。


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 静かに言った。


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「奥へ来なさい」


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 セレスが驚く。


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「先生?」


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 老人は答えない。


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 ただ。


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 蒼空のレガリアを見つめ続けていた。


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 まるで。


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 昔から知っているように。


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 その頃。


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 セレスティアの最上層。


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 巨大な塔の頂上。


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 白銀の髪を揺らしながら。


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 ヴァイスが街を見下ろしていた。


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 その隣にはリリア。


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 リリアは空を見上げる。


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「本当にここで目覚めるの?」


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 ヴァイスは答える。


 ⸻


「間違いない」


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 金色の瞳が細められる。


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「第二のレガリアはここにある」


 ⸻


 そして。


 ⸻


「星記のレガリアが」


 ⸻


 物語は次の段階へ進もうとしていた。

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