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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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13/31

第十二話 エクリプスの継承者

 広間の空気が張り詰める。


 ⸻


 ヴァイスの背後には三人。


 黒い外套を纏った男女が立っていた。


 ⸻


 誰も武器を抜いていない。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 強い。


 ⸻


 アークにも分かった。


 ⸻


 昨日店で見た時とは違う。


 ⸻


 今目の前にいるのはただの旅人ではない。


 ⸻


 戦う者だ。


 ⸻


「エクリプス……」


 ⸻


 セレスが小さく呟く。


 ⸻


 その声にヴァイスが反応する。


 ⸻


「知っているのか」


 ⸻


「名前だけです」


 ⸻


 セレスは一歩後ろへ下がる。


 ⸻


 学者として色々な文献を読んできた。


 ⸻


 その中で時々出てくる組織。


 ⸻


 エクリプス。


 ⸻


 レガリアを追う者たち。


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 歴史の裏側で動く影。


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 真偽不明の記録ばかりだった。


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 だからこそ。


 ⸻


 実在していることに驚いていた。


 ⸻


 ヴァイスは視線をアークへ戻す。


 ⸻


 正確には。


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 蒼空のレガリアへ。


 ⸻


「継承は成功したようだな」


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 アークは剣を構える。


 ⸻


「何者だ」


 ⸻


「ヴァイス」


 ⸻


 短い答えだった。


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「それは知ってる」


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「なら十分だ」


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 話にならない。


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 フィンが小声で言う。


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「面倒な奴だな」


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「同感です」


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 セレスも頷いた。


 ⸻


 その時。


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 ヴァイスの隣にいた少女がため息を吐く。


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 黒髪。


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 紫色の瞳。


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 年齢はアークたちと同じくらい。


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 魔導士のような服装。


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「相変わらず説明不足ね」


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「必要ない」


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「あると思うけど」


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 完全に慣れている会話だった。


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 どうやら仲間らしい。


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 少女はアークたちへ向き直る。


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「私はリリア」


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 軽く会釈する。


 ⸻


「エクリプス所属」


 ⸻


 普通に自己紹介された。


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 逆に困る。


 ⸻


 敵なのか味方なのか分からない。


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 フィンも同じことを思ったらしい。


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「で?」


 ⸻


「敵?」


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 リリアは少し考える。


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 そして。


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「今は違うかな」


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 曖昧だった。


 ⸻


 ますます分からない。


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 その時。


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 グレンが前へ出る。


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「目的は何だ」


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 空気が変わった。


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 先ほどまでの雑談とは違う。


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 戦士同士の会話。


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 ヴァイスも理解している。


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 だから答えた。


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「確認だ」


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「何を」


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「蒼空の継承者を」


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 アークを見る。


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 金色の瞳。


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 まるで昔から知っているような目だった。


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「期待外れではなかった」


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 褒められているのか。


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 そうでないのか。


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 よく分からない。


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 だが。


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 次の言葉は全員を驚かせた。


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「近いうちに第二のレガリアが目覚める」


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 広間が静まり返る。


 ⸻


 第二のレガリア。


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 蒼空以外にもある。


 ⸻


 アークは当然知らなかった。


 ⸻


 セレスは目を見開く。


 ⸻


 アイリスは俯く。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 グレンだけが無表情だった。


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 まるで知っていたかのように。


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「どこだ」


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 ヴァイスは答えない。


 ⸻


 代わりに。


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「お前たちも来る」


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 そう言った。


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「来る?」


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「運命だからだ」


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 フィンが頭を抱えた。


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「また意味分かんねぇこと言い始めた」


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 リリアが吹き出す。


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 どうやら同じことを思っていたらしい。


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 しかし。


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 ヴァイスは笑わなかった。


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「時間がない」


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 その言葉だけは本気だった。


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 そして。


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 初めて焦りのようなものが見えた。


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「ネフィリムはもう動いている」


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 その名前が出た瞬間。


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 遺跡の空気が重くなる。


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 セレスが息を呑む。


 ⸻


 アークの頭にも夢の断片が浮かぶ。


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 崩壊する世界。


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 黒い巨影。


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 終わりの光景。


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 ヴァイスは静かに言った。


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「次に会う時までに覚悟を決めろ」


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「何の」


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 アークが聞く。


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 ヴァイスは少しだけ目を細めた。


 ⸻


 そして。


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「世界を救う覚悟だ」


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 黒い魔法陣が広がる。


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 光。


 ⸻


 次の瞬間。


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 エクリプスの姿は消えていた。


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 静寂。


 ⸻


 残されたのはアークたちだけ。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 第二のレガリアという新たな謎。


 ⸻


 アイリスは蒼空のレガリアを見つめる。


 ⸻


 不安そうに。


 ⸻


 どこか悲しそうに。


 ⸻


 まるで未来を知っているような目で。

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