第十二話 エクリプスの継承者
広間の空気が張り詰める。
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ヴァイスの背後には三人。
黒い外套を纏った男女が立っていた。
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誰も武器を抜いていない。
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だが。
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強い。
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アークにも分かった。
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昨日店で見た時とは違う。
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今目の前にいるのはただの旅人ではない。
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戦う者だ。
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「エクリプス……」
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セレスが小さく呟く。
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その声にヴァイスが反応する。
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「知っているのか」
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「名前だけです」
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セレスは一歩後ろへ下がる。
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学者として色々な文献を読んできた。
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その中で時々出てくる組織。
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エクリプス。
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レガリアを追う者たち。
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歴史の裏側で動く影。
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真偽不明の記録ばかりだった。
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だからこそ。
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実在していることに驚いていた。
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ヴァイスは視線をアークへ戻す。
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正確には。
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蒼空のレガリアへ。
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「継承は成功したようだな」
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アークは剣を構える。
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「何者だ」
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「ヴァイス」
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短い答えだった。
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「それは知ってる」
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「なら十分だ」
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話にならない。
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フィンが小声で言う。
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「面倒な奴だな」
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「同感です」
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セレスも頷いた。
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その時。
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ヴァイスの隣にいた少女がため息を吐く。
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黒髪。
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紫色の瞳。
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年齢はアークたちと同じくらい。
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魔導士のような服装。
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「相変わらず説明不足ね」
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「必要ない」
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「あると思うけど」
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完全に慣れている会話だった。
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どうやら仲間らしい。
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少女はアークたちへ向き直る。
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「私はリリア」
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軽く会釈する。
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「エクリプス所属」
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普通に自己紹介された。
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逆に困る。
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敵なのか味方なのか分からない。
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フィンも同じことを思ったらしい。
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「で?」
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「敵?」
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リリアは少し考える。
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そして。
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「今は違うかな」
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曖昧だった。
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ますます分からない。
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その時。
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グレンが前へ出る。
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「目的は何だ」
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空気が変わった。
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先ほどまでの雑談とは違う。
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戦士同士の会話。
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ヴァイスも理解している。
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だから答えた。
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「確認だ」
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「何を」
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「蒼空の継承者を」
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アークを見る。
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金色の瞳。
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まるで昔から知っているような目だった。
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「期待外れではなかった」
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褒められているのか。
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そうでないのか。
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よく分からない。
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だが。
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次の言葉は全員を驚かせた。
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「近いうちに第二のレガリアが目覚める」
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広間が静まり返る。
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第二のレガリア。
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蒼空以外にもある。
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アークは当然知らなかった。
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セレスは目を見開く。
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アイリスは俯く。
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そして。
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グレンだけが無表情だった。
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まるで知っていたかのように。
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「どこだ」
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ヴァイスは答えない。
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代わりに。
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「お前たちも来る」
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そう言った。
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「来る?」
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「運命だからだ」
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フィンが頭を抱えた。
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「また意味分かんねぇこと言い始めた」
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リリアが吹き出す。
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どうやら同じことを思っていたらしい。
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しかし。
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ヴァイスは笑わなかった。
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「時間がない」
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その言葉だけは本気だった。
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そして。
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初めて焦りのようなものが見えた。
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「ネフィリムはもう動いている」
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その名前が出た瞬間。
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遺跡の空気が重くなる。
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セレスが息を呑む。
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アークの頭にも夢の断片が浮かぶ。
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崩壊する世界。
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黒い巨影。
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終わりの光景。
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ヴァイスは静かに言った。
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「次に会う時までに覚悟を決めろ」
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「何の」
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アークが聞く。
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ヴァイスは少しだけ目を細めた。
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そして。
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「世界を救う覚悟だ」
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黒い魔法陣が広がる。
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光。
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次の瞬間。
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エクリプスの姿は消えていた。
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静寂。
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残されたのはアークたちだけ。
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そして。
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第二のレガリアという新たな謎。
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アイリスは蒼空のレガリアを見つめる。
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不安そうに。
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どこか悲しそうに。
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まるで未来を知っているような目で。




