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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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11/31

第十話 蒼空の遺跡

 遺跡の入口に立つと、空気が変わった。


 外は暖かかった。


 だが中から流れてくる風は妙に冷たい。


 ⸻


「なんか嫌だな……」


 フィンが素直に言う。


 ⸻


「今さらですか?」


 ⸻


「いや、だって普通に怖いだろ」


 ⸻


 それにはセレスも反論できなかった。


 ⸻


 正直。


 アークも少し怖かった。


 ⸻


 だが。


 ⸻


 足は止まらない。


 ⸻


 遺跡の奥から何かが呼んでいる気がした。


 ⸻


「行こう」


 ⸻


 グレンが先頭へ出る。


 ⸻


 大剣を肩に担ぐ。


 ⸻


「俺が前に立つ」


 ⸻


「了解」


 ⸻


 アークが続く。


 ⸻


 アイリス。


 ⸻


 セレス。


 ⸻


 フィン。


 ⸻


 五人は遺跡へ足を踏み入れた。


 ⸻


 内部は予想以上に広かった。


 ⸻


 石造りの通路。


 ⸻


 高い天井。


 ⸻


 壁には見たことのない文字。


 ⸻


 セレスの目が輝く。


 ⸻


 完全に研究者の顔だった。


 ⸻


「すごい……」


 ⸻


「仕事中だぞ」


 ⸻


 グレンが釘を刺す。


 ⸻


「分かってます!」


 ⸻


 分かっていない顔だった。


 ⸻


 しばらく進む。


 ⸻


 すると。


 ⸻


 アークの視線が止まる。


 ⸻


 壁の文字。


 ⸻


 自然と意味が頭へ流れ込んできた。


 ⸻


『蒼空は巡る』


 ⸻


『希望は受け継がれる』


 ⸻


『選ばれし者へ』


 ⸻


 アークは無意識に読み上げる。


 ⸻


 セレスが固まる。


 ⸻


「やっぱり読める……」


 ⸻


「俺にも理由は分からない」


 ⸻


「その方が怖いです」


 ⸻


 それはそうだった。


 ⸻


 その時。


 ⸻


 アイリスが立ち止まる。


 ⸻


「どうした?」


 ⸻


 アークが振り返る。


 ⸻


 アイリスは壁へ触れていた。


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 その表情は少し苦しそうだった。


 ⸻


「ここ」


 ⸻


「知ってるのか?」


 ⸻


「違う」


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 首を振る。


 ⸻


「知らない」


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 でも。


 ⸻


「懐かしい」


 ⸻


 その言葉に誰も返事ができなかった。


 ⸻


 彼女自身も困惑している。


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 まるで記憶ではなく。


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 魂が覚えているような感覚。


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 そんな風に見えた。


 ⸻


 さらに奥へ進む。


 ⸻


 やがて通路が終わる。


 ⸻


 広間だった。


 ⸻


 巨大な空間。


 ⸻


 中央には祭壇。


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 その上には蒼い結晶が浮かんでいる。


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 美しかった。


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 まるで空を閉じ込めたような色。


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 アークは思わず見入る。


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 その瞬間。


 ⸻


 結晶が光った。


 ⸻


 眩い蒼光。


 ⸻


 遺跡全体が震える。


 ⸻


「なっ!?」


 ⸻


 セレスが声を上げる。


 ⸻


 アイリスの顔色が変わる。


 ⸻


 そして。


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 アークの胸が熱くなる。


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 心臓が暴れる。


 ⸻


 頭の奥で何かが目覚めようとしていた。


 ⸻


 その時だった。


 ⸻


 ゴゴゴゴゴ……


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 低い音。


 ⸻


 祭壇の前の床が割れる。


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 巨大な影が姿を現した。


 ⸻


 石でできた騎士。


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 高さは三メートル以上。


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 蒼い光を宿した両目。


 ⸻


 巨大な剣。


 ⸻


 まるで遺跡の守護者だった。


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 フィンが顔を引きつらせる。


 ⸻


「聞いてないぞ!」


 ⸻


「私もです!」


 ⸻


 セレスも叫ぶ。


 ⸻


 グレンは既に剣を抜いていた。


 ⸻


「来るぞ」


 ⸻


 守護騎士が一歩踏み出す。


 ⸻


 轟音。


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 地面が揺れる。


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 圧倒的な存在感。


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 普通の魔物ではない。


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 アークにも分かった。


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 強い。


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 今まで戦った相手とは別格だ。


 ⸻


 守護騎士が剣を構える。


 ⸻


 その切っ先が。


 ⸻


 真っ直ぐアークへ向いた。


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「なんで俺!?」


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 フィンが即座に後退する。


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「頑張れ!」


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「お前も戦え!」


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 そんなやり取りすら一瞬だった。


 ⸻


 次の瞬間。


 ⸻


 守護騎士が突撃する。


 ⸻


 広間が震える。


 ⸻


 アークは剣を抜いた。


 ⸻


 頭の奥で声が響く。


 ⸻


 夢の中で何度も聞いた声。


 ⸻


『恐れるな』


 ⸻


『蒼空はお前を選んだ』


 ⸻


 そして。


 ⸻


 祭壇の蒼い結晶が。


 ⸻


 アークへ向かって輝き始めた。

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