第九話 最初の遺跡
翌朝。
リベルタの空は快晴だった。
昨日の不穏な出来事が嘘のように穏やかだ。
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しかし。
アークたちの気持ちは穏やかではなかった。
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「つまり」
フィンがパンをかじりながら言う。
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「ネフィリムとかいうヤバい奴の話と」
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「変な紋章付き魔物が出てきて」
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「白銀のイケメンが意味深なこと言って帰った」
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「大体そうです」
セレスが頷く。
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「雑だなぁ」
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「要点は合ってます」
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アークは頭を抱えた。
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整理しても意味が分からない。
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だが一つだけ確かなことがある。
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何かが始まっている。
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そして。
その中心に自分がいる。
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その予感だけは強くなっていた。
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「で」
グレンが話を戻す。
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「今日はどうする」
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本来の目的を忘れていた。
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アイリスの身元調査。
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情報収集。
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それがリベルタへ来た理由だ。
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すると。
セレスが勢いよく手を挙げた。
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嫌な予感がする。
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「あります!」
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やっぱりだった。
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「何が?」
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「遺跡です!」
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「帰る」
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「待ってください!」
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即答だった。
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セレスは慌てる。
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「ちゃんと理由があります!」
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グレンがため息を吐く。
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「聞くだけ聞こう」
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セレスは鞄から地図を広げた。
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リベルタ郊外。
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山岳地帯。
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その一角に赤丸が付いている。
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「三日前」
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「新しい遺跡が発見されました」
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「新しい遺跡?」
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「正確には崩落で入口が見つかったんです」
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アークが地図を覗き込む。
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その瞬間。
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ズキッ――
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頭痛。
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まただった。
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一瞬だけ。
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見覚えのない石造りの通路が脳裏を過ぎる。
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巨大な扉。
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蒼い光。
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そして。
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同じ場所。
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「っ!」
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アークは思わず地図を掴んだ。
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「どうしました!?」
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セレスが驚く。
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アークは地図の一点を指差した。
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「ここ」
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「え?」
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「この場所」
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「何かある」
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自分でも説明できない。
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でも分かる。
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夢と同じだ。
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昨日から続いている幻覚とも同じ。
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そこに何かがある。
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間違いなく。
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グレンはアークを見る。
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嘘をついている顔ではない。
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そして。
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アイリスもまた地図を見ていた。
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顔色が少し悪い。
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「アイリス?」
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彼女は小さく呟く。
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「レガリア……」
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その場が静まり返った。
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初めてだった。
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アイリスが自分からその名前を口にしたのは。
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「知ってるのか?」
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アークが聞く。
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アイリスは困ったように目を伏せる。
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「分からない」
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「でも」
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「その場所を見た時」
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胸元を押さえる。
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「苦しいの」
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グレンとセレスが顔を見合わせる。
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偶然とは思えない。
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フィンも流石に真面目な顔になっていた。
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そして。
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グレンが決断する。
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「行くぞ」
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「え」
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「どうせ放っておいても気になる」
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その通りだった。
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アークも頷く。
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セレスは大喜びしている。
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「やった!」
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「遺跡に行けるから喜んでるだろ」
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「当然です!」
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隠す気もなかった。
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数時間後。
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リベルタ郊外。
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山岳地帯。
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目的の遺跡へ到着する。
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崩れた石柱。
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風化した壁。
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古代文明の名残。
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そして。
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山肌にぽっかりと空いた巨大な入口。
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まるで獣の口だった。
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アークはその暗闇を見つめる。
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心臓が早くなる。
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怖い。
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でも。
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どこか懐かしい。
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まるで昔来たことがあるような。
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ありえない感覚だった。
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その時。
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誰も気付かなかった。
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遺跡を見下ろす崖の上。
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そこに立つ白銀の髪の青年を。
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ヴァイス。
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彼は静かにアークたちを見下ろしていた。
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「来たか」
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その声は風に消える。
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そして。
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彼の背後にはもう一人。
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黒いローブを纏った少女が立っていた。
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「本当に任せるの?」
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少女が聞く。
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ヴァイスは答える。
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「試す必要がある」
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金色の瞳が遺跡へ向けられる。
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「蒼空の継承者を」
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遺跡の奥で待つもの。
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それがアークたちの運命を大きく変えることになる。




