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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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10/31

第九話 最初の遺跡

 翌朝。


 リベルタの空は快晴だった。


 昨日の不穏な出来事が嘘のように穏やかだ。


 ⸻


 しかし。


 アークたちの気持ちは穏やかではなかった。


 ⸻


「つまり」


 フィンがパンをかじりながら言う。


 ⸻


「ネフィリムとかいうヤバい奴の話と」


 ⸻


「変な紋章付き魔物が出てきて」


 ⸻


「白銀のイケメンが意味深なこと言って帰った」


 ⸻


「大体そうです」


 セレスが頷く。


 ⸻


「雑だなぁ」


 ⸻


「要点は合ってます」


 ⸻


 アークは頭を抱えた。


 ⸻


 整理しても意味が分からない。


 ⸻


 だが一つだけ確かなことがある。


 ⸻


 何かが始まっている。


 ⸻


 そして。


 その中心に自分がいる。


 ⸻


 その予感だけは強くなっていた。


 ⸻


「で」


 グレンが話を戻す。


 ⸻


「今日はどうする」


 ⸻


 本来の目的を忘れていた。


 ⸻


 アイリスの身元調査。


 ⸻


 情報収集。


 ⸻


 それがリベルタへ来た理由だ。


 ⸻


 すると。


 セレスが勢いよく手を挙げた。


 ⸻


 嫌な予感がする。


 ⸻


「あります!」


 ⸻


 やっぱりだった。


 ⸻


「何が?」


 ⸻


「遺跡です!」


 ⸻


「帰る」


 ⸻


「待ってください!」


 ⸻


 即答だった。


 ⸻


 セレスは慌てる。


 ⸻


「ちゃんと理由があります!」


 ⸻


 グレンがため息を吐く。


 ⸻


「聞くだけ聞こう」


 ⸻


 セレスは鞄から地図を広げた。


 ⸻


 リベルタ郊外。


 ⸻


 山岳地帯。


 ⸻


 その一角に赤丸が付いている。


 ⸻


「三日前」


 ⸻


「新しい遺跡が発見されました」


 ⸻


「新しい遺跡?」


 ⸻


「正確には崩落で入口が見つかったんです」


 ⸻


 アークが地図を覗き込む。


 ⸻


 その瞬間。


 ⸻


 ズキッ――


 ⸻


 頭痛。


 ⸻


 まただった。


 ⸻


 一瞬だけ。


 ⸻


 見覚えのない石造りの通路が脳裏を過ぎる。


 ⸻


 巨大な扉。


 ⸻


 蒼い光。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 同じ場所。


 ⸻


「っ!」


 ⸻


 アークは思わず地図を掴んだ。


 ⸻


「どうしました!?」


 ⸻


 セレスが驚く。


 ⸻


 アークは地図の一点を指差した。


 ⸻


「ここ」


 ⸻


「え?」


 ⸻


「この場所」


 ⸻


「何かある」


 ⸻


 自分でも説明できない。


 ⸻


 でも分かる。


 ⸻


 夢と同じだ。


 ⸻


 昨日から続いている幻覚とも同じ。


 ⸻


 そこに何かがある。


 ⸻


 間違いなく。


 ⸻


 グレンはアークを見る。


 ⸻


 嘘をついている顔ではない。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 アイリスもまた地図を見ていた。


 ⸻


 顔色が少し悪い。


 ⸻


「アイリス?」


 ⸻


 彼女は小さく呟く。


 ⸻


「レガリア……」


 ⸻


 その場が静まり返った。


 ⸻


 初めてだった。


 ⸻


 アイリスが自分からその名前を口にしたのは。


 ⸻


「知ってるのか?」


 ⸻


 アークが聞く。


 ⸻


 アイリスは困ったように目を伏せる。


 ⸻


「分からない」


 ⸻


「でも」


 ⸻


「その場所を見た時」


 ⸻


 胸元を押さえる。


 ⸻


「苦しいの」


 ⸻


 グレンとセレスが顔を見合わせる。


 ⸻


 偶然とは思えない。


 ⸻


 フィンも流石に真面目な顔になっていた。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 グレンが決断する。


 ⸻


「行くぞ」


 ⸻


「え」


 ⸻


「どうせ放っておいても気になる」


 ⸻


 その通りだった。


 ⸻


 アークも頷く。


 ⸻


 セレスは大喜びしている。


 ⸻


「やった!」


 ⸻


「遺跡に行けるから喜んでるだろ」


 ⸻


「当然です!」


 ⸻


 隠す気もなかった。


 ⸻


 数時間後。


 ⸻


 リベルタ郊外。


 ⸻


 山岳地帯。


 ⸻


 目的の遺跡へ到着する。


 ⸻


 崩れた石柱。


 ⸻


 風化した壁。


 ⸻


 古代文明の名残。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 山肌にぽっかりと空いた巨大な入口。


 ⸻


 まるで獣の口だった。


 ⸻


 アークはその暗闇を見つめる。


 ⸻


 心臓が早くなる。


 ⸻


 怖い。


 ⸻


 でも。


 ⸻


 どこか懐かしい。


 ⸻


 まるで昔来たことがあるような。


 ⸻


 ありえない感覚だった。


 ⸻


 その時。


 ⸻


 誰も気付かなかった。


 ⸻


 遺跡を見下ろす崖の上。


 ⸻


 そこに立つ白銀の髪の青年を。


 ⸻


 ヴァイス。


 ⸻


 彼は静かにアークたちを見下ろしていた。


 ⸻


「来たか」


 ⸻


 その声は風に消える。


 ⸻


 そして。


 ⸻


 彼の背後にはもう一人。


 ⸻


 黒いローブを纏った少女が立っていた。


 ⸻


「本当に任せるの?」


 ⸻


 少女が聞く。


 ⸻


 ヴァイスは答える。


 ⸻


「試す必要がある」


 ⸻


 金色の瞳が遺跡へ向けられる。


 ⸻


「蒼空の継承者を」


 ⸻


 遺跡の奥で待つもの。


 ⸻


 それがアークたちの運命を大きく変えることになる。

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