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並行異世界ストレイド  作者: 機刈二暮
[第四章]恐ろしいもの、作り上げたのは
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崩れ




『思ったよりすばしっこい!』


 カルメがそう言って、《バイター》をライフルで牽制する。


 《バイター》はその巨体を、建物に身を隠してうまいこと70ミリの砲弾をやり過ごす。


 そして飛び出す……と見せかけて再度隠れた。


 もし飛び出していれば当たっただろう砲弾は、何も無い空間を通り過ぎていく。


『たかが機械風情の癖に! 遮蔽やフェイントをするなんて!』


『ラファール03、落ち着いて』


 ヒュリアが彼女を宥めつつ、ライフルを掃射。


「よく出来たAIね。―――まるで人を相手にしてるような気分」


 両手のライフルのマガジンを交換し終えて、チハヤは《プライング》を二人の前に出して銃撃を加える。


 二機の《マーチャーE2改》は建物の影でライフルの弾倉を換え始める。


 僅かな交代の隙を逃さず、《バイター》は建物の影から出て、頭部のカバーを開き、プラズマキャノンを展開する。


『照準警報』


 すぐさま《プライング》は建物に脚をかけてブースターも併用して急上昇。


 《プライング》の真下をプラズマスフィアが着弾して、小規模な爆発を起こした。


『EMPを確認。動体レーダー、精度低下。通信機器、エラー発生。品質低下』


 着弾の余波の被害を《ヒビキ》が報告していく。


『ラファ……0!? 無……!?』


 カルメからの通信が入るが、ノイズがかなり酷い。かろうじて聞けるが、とても聞けたものじゃないわとチハヤは思った。


「大丈夫です。通信機器を少しやられたようですが」


『……何……? よ……えな……』


 通信の品質は最悪以外の何者でもなかった。それどころかこちらからの通信は全く通じてないのかも知れない。


「《ヒビキ》。通信の品質の改善は出来る?」


 そう言いつつ、《バイター》からの攻撃を凌ぐ。


『了解。並走処理でノイズを除去します』


「こちらラファール00。聞こえていますか?」


『聞こえます。ノ……ズが強いですが』


 カルメから返事が帰ってきた。先程よりも聞きやすくなったあたり、《プライング》のOS《那由多》はなかなかに優秀ねと安堵する。


「少し下がりましょう。全力機動で後退」


『了解っ!』


『了解!』


 二人の返事を聞いて、機体を下げる。

 交戦せずに下がれば距離は稼げるが、向こうも黙ってはいない。


 案の定、《バイター》も速度を上げて距離を詰めてくる。


『こちらラファール02。ラファール03、06、00。そのまま下がりなさい。交代よ』


 エリザさんからの通信。あえて建物の上で構えて、《バイター》の様子でも見ているようだ。


 確かに、まだ数分とはいえ激しい機動ばかりである。もうインターバルを挟んだ方がいいかもしれないとチハヤは思い、通信を繋ぐ。 


「了解。気をつけて」


『…………ふん』


 返事もそこそこに、エリザさんは他の二機と組んで《バイター》を迎え撃つ。


「二人とも大丈夫?」


『……なんとか』


『こちらも』


「息、整えておきなさい。次も対応出来るように」


 息を荒くした二人にチハヤはそう言って、両手のライフルの弾倉を交換する。


「増援は?」


『まだポイントには着いてないようです』


「少しでも遅れたら弾がもたなくなりそうね」


 残弾を確認しつつ、全体の状況を確認していく。


 三機で一編成とし、《バイター》の気を引きつつ撤退し、待ち伏せている増援と挟撃する手はずだが、苦戦のただ中でしかない。


 基本的に一撃でも食らえば致命的な威力のプラズマキャノンに範囲型の36門のパルスキャノン。はてには100ミリ機関砲と接近戦用のクローアームと、脅威的な物で固められている。


 その威力を知ってしまった以上、その存在を意識してしまい、こちらの動きは積極さに欠けて、押されている。


 少しでも気を抜けば。



『ラファール05!』



 無線でエリザの鋭い声が響いた。


 それと同時に、《マーチャーE2改》一機の胴体に、プラズマスフィアが綺麗に穴を開けた。


 そこを中心として裂けるように爆散する機体。


 貫通したプラズマスフィアは彼方へと飛んでいき、周囲の建物を余波で吹き飛ばしていく。

 


「―――ラファール03! ラファール06! カバー!」


 距離的に、自分たちしかいない。


 そう判断して、《プライング》を突撃させる。


 あれだけの出力を、頭部カバーを展開してから短時間でチャージ?


 高速で景色が後ろへ流れていくのを見ながら、チハヤは思考を続ける。


 今までの交戦では頭部を展開して、短時間でエネルギーチャージしてから発射していた。

 それも、最初見たときよりも速くない速度で、だ。


 でも、今回のは明らかに威力、速度がおかしい。


 短時間で最大クラスのチャージが出来るなら、今までの砲撃があのクラスの砲撃のはずである。


「―――まさか」


 一つの可能性が頭を過る。


 頭部カバーを閉めたまま、プラズマキャノンにエネルギーチャージをしていた?

 

 可能なら或いは。



 建物の影から飛び出し、《バイター》へライフルを撃つ。


『照準警報』


 《ヒビキ》のその言葉を聞くのと、《バイター》がこちらへ頭部を向けるのが同時だった。


 《プライング》は左へクイックブーストして、100ミリの砲弾を避ける。


「二人はラファール02、07を援護して! 《バイター》は私が引き付けます!」


 返事を待たずに、再度突貫する。


 《バイター》の両翼のカバーが展開され、36門のパルスキャノンのレンズがむき出しになった。


 モニターに、オレンジ色の警告エリアが表示される。


『予測砲撃範囲を視覚化。参考にすることを推奨します』


 今までの交戦で得られたデータからか、OSの勝手な分析と対応を《ヒビキ》が教えてくれた。


 射線まで表示されており、何処が安全かまであれば。


「《ヒビキ》! ブースター全開!」


『了解』


 《プライング》のブースターが最大出力で吼え、一瞬で《バイター》の左翼部の下へ潜り込んだ。


 僅かに遅れて、先程までいた場所がパルスレーザーによって焼かれる。


 《バイター》の右クローアームが展開され、《プライング》を掴みにかかる。


 とっさにクイックブーストで回避。


 220ミリ滑空砲を展開し、クローアームへ発砲。


 至近距離で放たれたHEET弾頭は間接部を捕らえ、モンロー/ノイマン効果をもって破壊する。


 両手のライフルを左翼部へ向けて、


『脚撃警告』


「脚⁉️」


 発砲しながら、またクイックブーストで回避。

 さっきまでいた所に、《バイター》の脚が落ちてきた。


 AP弾とHE弾はパルスキャノンの下部装甲を穿ったが、フレームが剥き出しになっただけ。


 今度は左のクローが襲う。


 後ろへ抜けるようにクイックブーストで抜けて、建物の影に。


 その背後をプラズマスフィアが通りすぎで、衝撃波が付近を破壊していく。


『ラファール03よりラファール00へ。なんとか離れたわ』


「了解。合流す―――」


 返事を返しつつ見た光景に、チハヤは度肝を抜かれた。


 ブースト全開で、エリザ機やカルメ機へ向かう《バイター》の姿を捉えたのだ。

 翼部のブースターを後ろに向けて、推力を一方向にまとめての飛翔。かなりの速度だ。


「全力で下がりなさい! 《バイター》がそっちに向かってる!」


『……了解!』


『チハヤ! もう少し押さえれないの?』


 アルペジオからの通信が入る。レーダーではなんとかエリザ達と合流出来たようで、一緒に下がり始めている。


「只の無人機ならやれると思うわ! でもソイツは何か違う! 考える頭が違う!」


 そうチハヤは答える。


 《バイター》の判断の仕方が、やけに多様なのだ。


 接近戦でのクロー使用や脚による踏みつけ。

 距離に応じた武装使うようで、しかし敢えて違う武器使ったり。

 優先する攻撃対象の判断。


 まるで、人間みたいだ。



 《プライング》は追撃に向かうが、速度が同じなのか距離が縮まない。


 《バイター》の頭部カバーが開いて、プラズマキャノンが発射される。


 これは誰にも当たらなかったが、衝撃波が《マーチャー》各機を襲った。


 何機かはなんとか耐えたが、二機ほど姿勢を崩され建物に激突する。


『くっ……!』


 カルメが呻きながらも建物から離れた所を、《バイター》が100ミリ機関砲を放った。


 その砲弾はカルメ機の左大腿部へ直撃し、そこから先を分断した。


 リンクスはその性質上、機体が受けたダメージはある程度パイロットにも反映されてしまう。


 つまりは。


『――――がっ! がああああ!』


 想像しがたい痛みがカルメを襲った。

 システム的に機体のダメージ反映はカットされるとはいえ、痛みは残る。


 動けなくなったカルメ機へ《バイター》はプラズマキャノンを展開する。 


『カルメ!』


 ヒュリアの《マーチャー》がカルメ機を蹴り飛ばし、自身はシールドを構える。


 乱暴だが基本的には正しい手段である。


 ただ、相手が悪すぎた。相手が例外だった。


「―――避けなさい!」


 チハヤが叫んだ先で、プラズマキャノンが発射された。


 放たれたプラズマスフィアはシールドを貫通し、腰部を貫いて、衝撃波が機体をバラバラにした。


『えっ……? ヒュ、リア?』


 カルメは振り返ってその残骸を見た。

 その視線の先にはバラバラになったヒュリアの《マーチャーE2改》だったものと、頭部カバーを閉じた《バイター》のみ。


『ヒュリア?! ヒュリアぁぁぁぁああ!』


 悲痛な叫びが、無線に乗って各機のコクピットに鳴り響いた。



 

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