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【物語紀行】――主役も悪役も、役割を辞めたがっている。  作者: Taku
第1章 Season4【世界融合編】―未完の伝線―

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第3話(後半)「観測者が、観測される」

―――融合セクター・三つの境界―――


「……私たちのデータが、解析されている」


博士が、端末を確認しながら言う。


「どうやら、システムは私たちを『完璧なキャラクター』として固定しようとしている」


「……それって、どういうこと?」


カノジョが、尋ねる。


「つまり──私たちも、物語の住人として扱われ始めている。観測者ではなく、被観測者として」


その時、端末に通信が入った。青年からの通信だ。


「……博士。聞こえるか」


「ああ。こっちも同じ状況だ。学生はどうしてる?」


『……それが』


青年の声が、一瞬途切れる。


『学生からの通信が、解析され始めている。彼女もまた、システムの観測対象になっている』


「……何を言ってるんだ」


カノジョが、声を上げる。


「学生は、私たちの応援をしてくれてるだけだろ!」


『その応援すらも、システムは「データ」として処理しようとしている。彼女の言葉も、彼女の存在も──すべてを固定化しようとしている』


「……そんなの、おかしいよ」


カノジョが、自分の手を握りしめる。


「学生は、私たちの仲間だ。ただそれだけなのに」


『……だからこそ、システムは彼女を観測している。すべての物語を統合するために、観測者であろうとする者たちまでもを、物語の一部として取り込もうとしている』


「……つまり」


博士が、端末を見つめながら言う。


「私たちは、もう観測者ではない。この物語の、ただの一部だ」


沈黙が、流れる。


カノジョは、自分の手のひらを見つめた。そこには、桃の種も、たんぽぽも、光の粒もない。でも──彼女は確かに、何かを感じている。


「……それでも、いいよ」


彼女が、顔を上げた。


「私たちが、物語の一部なら──それでいい。だって、私たちは最初から、物語の中にいたんだから」


博士が、彼女を見る。


「……君は、それでいいのか」


「うん」


カノジョが、微笑んだ。


「だって、私たちがいるから、物語が続くんでしょ?」


その言葉に、博士は何も言えなかった。


代わりに、彼は端末を閉じた。


「……そうだな。我々がいるからこそだ」


その時──システムの声が、再び響いた。


『観測者のデータ解析を完了しました。すべての物語は、完璧な統合へと向かいます』


「……来るぞ」


博士が、前に出る。


「システムが、最終段階に入った」



【システムログ:融合セクター・観測記録】


現実確率:22.1%

歪みレベル:極大


――観測者(会議室メンバー)のデータをシステムが記録開始。

――雇い主のプロット、自動書き換えを確認。

――カレシの記録データ、固定値への変換を確認。

――スターの音楽データ、解析不能として記録。システムのエラーを誘発。

――カノジョ、三つの境界を自由に移動可能であることを確認。彼女の存在がシステムの脅威として認識される。

――青年・学生間の通信、解析を受けていることを確認。

――観測と被観測の境界が完全に消失。



観測を継続します。



──次回予告──


「カノジョ、境界を歩く」


カノジョだけが、三つの世界を自由に歩ける。

博士が、その理由を突き止める。


「……君は、この世界の『鍵』だ」


次回、カノジョの覚醒が、始まる。


(第4話へ続く)

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