第七章 名前を付けよう〜理由なくして存在なし〜
世界観というのは物語から決まるものだというのは今までの流れで理解してもらえたと思う。ではその世界観を形にするのが設定なのだが注意しなければならないのは設定だけにこだわってはいけないということだ。
設定に凝ることと拘ることは大きく違う。設定というものは「必要に応じて作るもの」だからだ。
各項目では順に説明していくが、ここから先は順番が関係ないと思ってもらっていい。世界観にさえ従っていれば、大丈夫だ。
▶設定とは理由が先にある
必要というのは設定を作る理由である。
例えば、国の名前など、街だけを舞台とするならそれほど強く必要ではない。それよりは街の名前や名前の持つ意味、歴史や文化の方が先となる。
大体の人がここで詰まる。
歴史の重みがどこから来るのかが分かっていないからだ。歴史とは「積み重ね」である。地層を思い浮かべてもらいたい。色んな要素が積み重なって地層という縞模様を描いている。
つまり、音だけの感覚で決めてしまうと、この積み重ねが失せてしまい、作品は奥行きを失う。そういう作品なんだからいいんだ!という声もあるかも知れない。しかし、表に出さなくても、作者の中に積み重ねて置くことで、「文章に深みが出る」としたらどうだろう?
作品の奥行きとは、何も読者に開示する情報だけのことじゃない。書くためには様々な「深堀り」が必要となる。
特に名称というのは、読者に憶えてもらえないと意味がない。では何故覚えてもらえないのか?
人の記憶というものが「意味と結びつくことで印象深くなる」からだ。
つまり、大切なのは形に名前を付けるというよりも、中身に相応しい名前を見つけることだ。
例えば、セーヌという川がある。パリの近くを流れる大きく蛇行するこの川は、ローマ名のセクアナから来ていて、元々この地に住んでいたケルト人のセカナという川の女神のローマ読みだ。
さらに調べると、古ケルト語で「ゆったりと流れる水」とか「曲りくねる水」という意味がある。この地に住んでいたのがセクアヌ族というケルトの部族である。
セカナ⇒セクアナ⇒セーヌ
日本でも、大坂であれば「大きい坂があったんだろう」と想像する。地名と言うのはこうした語幹があって、語尾や音が変化することで積み重なる。
▶名前には意味を持たせよう
例えば、大オルガ帝国の首都はアストラヴェル。これは「星の降る丘」という意味の名前である。これは「星の降る郊外」が原義で、ラテン語由来の名前だったりする。
だから、一見、世界観にそぐわない。しかし、一捻りするとマッチさせることが出来る。それは「ローマ出身の将軍カエルス・アストラヴェルが鎮守府とした場所」という設定を生やせばいい。
これで、ラテン語風であっても上手く溶け込ませることが出来た。
こうした名前に意味があるという文化は、世界共通であり、逆に響きだけの名前は印象に残りにくい。
ラベリングとは、ネーミングとは無闇矢鱈と付ければいいと言うものでもない。「言葉にはすべて意味がある」と考えることは前提条件で、名実ともに相応しいことが求められるのだ。
だから、音から決めてもいいが、その意味を様々な言語から語源まで遡って考えておいた方が、設定を物語に置いたときに輝き始めるのだ。
▶形に名前を付けよう
いきなり地名の話をしたが、これはわかりやすさのため。
一番最初にすべきなのは主人公の名前だ。
ここまで放置してきたのには意味がある。何故なら大抵の人は主人公の名前を先に決めているからだ。
オルガもそうだった。でも、今の名前とは違う「オルガ・イツカ・ヴィクトリア」だった。大粗のシナリオが出来、世界観が出来たとき「なんか違うよなー」となることがある。
これは言葉が持つ響きや言葉の意味と、シナリオや世界観にズレが生じているからだ。だから、ここで直す。
初期稿と決定稿が違うなんて普通のこと。
そしてオルガ・イツカ・ヴィクトリアはオルガレア・カポテア・ヴィクトリアに生まれ変わった。
ちなみに「カポテア」は古ギリシャ語の「カターパシウス」が変化したもので「平和」とか「休息」の意味。
このミドルネームから、王族や旧王族にはミドルネームを付けるという「文化」が派生したことも付け加えておく。




