第六章 大プロットとは――プロットは一つじゃない
▶大プロットとは――プロットは一つじゃない
プロットというといきなりイベントを箇条書きし始める人が居るが、それは「小プロット」と呼ばれる実際に書くときの道路案内板だ。そうではなく、プロットにもいくつかの段階があり、一番最初に行うのがメイキングターゲットを含む「大プロット」である。
これは、大きく分けると以下のようになる。
・メイキングターゲット
・ターゲットトピック
・テーマ
・あらすじ
・終着点
・世界観
・設定
これを先ずは決めていくことが大事であるが、やっている人は少ない。
あれ?と思われた人も居るだろう。そう、既に大プロットの一部は前もってはじめていたのだ。
こうしたものは「プロになったときに編集さんと打ち合わせをするのに役立つ」ものだ。だが、作家にとっても読み返すことで、脱線しそうになっていたときに軌道修正するための標識にもなる。あまりにも外れている場合は外伝としてまとめればよい。
ここを「プロじゃないんだから」とおざなりにしている人は多い。でも考えてみて欲しい。読者にはプロとかアマとか関係あるだろうか。
読者には作者がプロかアマかは関係ないのだ。面白いか面白くないか、エタらないかエタるか——その違いしかない。
プロとは勝負していないから——そんなのは逃げ口上でしかない。それが現実なのだ。
▶世界観という名のコンセプト
さて、大プロットの構成要素の中に「世界観」という新しい項目がある。
だが、多くの創作論で語られる世界観は、国家や地図、宗教や文化といった設定の話が多い。
それらは本当に世界観だろうか?
私はそれらを設定だと思っている。世界観とは、世界設定を生み出す根幹にある考え方――コンセプトだと考えるからだ。
例えば『オルガ―狂奔の女帝―』であれば、
最初に考えたのは
「女帝が成立する条件とはなにか」
だった。そして紆余曲折あって、
「ゲルマン民族の大移動が起こらない世界」
を想定し、その為には何が必要かを考え、
「アレキサンダー大王がインド東征を行わず、そのまま世界帝国を築いていたら?」
という発想に辿り着いた。
その結果、ケルト人はヨーロッパ各地に残り、ヘレニズム文化の影響を受けながらも部族社会を色濃く残した世界となった。
ヘレニズムなら言語はギリシャ語を基盤としてスタートし、時代が経つにつれてこなれて西方語となるだろう。多神教は他宗教と融合しながら発展していき、一神教が一大宗派となる機会は訪れないということになる。
そして、その上にマケドニア貴族や皇帝、ゲルマン人傭兵団が君臨する中世ヨーロッパ的な世界が形成された。
これが世界観だ。
エーリウ王国も、ブルトン連合王国も、西方帝国も、オルガ帝国も、西方十二聖教も、実はこの世界観から生まれた世界設定である。
つまり、世界観とは設定の集合ではない。設定を生み出す源泉なのだ。
世界観なくしては、どんなに国家を百個考えようが、民族を百個考えようが、設定の一体感は生まれない。
逆に世界観が明確ならば、新しい国家や人物を追加しても自然と同じ方向性を持つようになる。これは年表ではないが、大まかな歴史の流れとは言えるかも知れない。
創作を始めたばかりの人が陥りやすい失敗の一つに、世界設定ばかりを増やしてしまうというものがある。
地図を作る。
国家を作る。
宗教を作る。
年表を作る。
だが、それらを何故作ったのかが分からない。
その結果、設定だけは大量にあるのに物語が動かないという状態になる。
だから私は、世界設定を作る前に世界観を考える。
どんな世界なのか。
どんな文化なのか。
どんな価値観なのか。
そして、その世界で何を描きたいのか。
それらを一文、あるいは数行で説明できる状態を目指してほしい。
世界観とは世界の説明ではない。世界を作るためのコンセプトなのである。そして、ここから世界は形を持ち始める。
次は世界設定に踏み込んでいこう。




