第三章 テーマの迷子〜あなたは何を伝えたいのか〜
▶あなたは小説で何を訴えたいのか
小説が書きたい――では、その小説であなたはターゲットに何を伝えたいのか
ワクワクする冒険活劇が書きたい――それは作者の気持ちであって、それだけでは、ターゲットにその作品を通して何を伝えたいのかは明確になっていない。
この伝えたいことがテーマだ。
と言っても、それほど大上段に構えることはない。ワクワクする冒険活劇を書きたいなら、それは「冒険活劇を通してワクワクするような気持ちを伝える」ということだったりする。
言い換えただけじゃん!という声が聞こえて来そうだが、よく文言を読み込んでほしい。文字が人に与える印象が微妙に違うのだ。
この微妙な差がテーマとして重要になる。
・ワクワクする冒険活劇が書きたい
・冒険活劇を通してワクワクするような気持ちを伝える
何が違うのかといえば、自分がワクワクするのか、ターゲットをワクワクさせるのかの違いである。しかし、この差は大きい。物語を書く上で、自分がワクワクするのは当然として(書いていて面白くなければ駄目だから)、ターゲットがワクワクするか?が鍵になってくる。たったこれだけの言い換えで意味が変わったのが分かるだろうか。
やりたいこと・書きたいことを、伝えたいこと・訴えたいことに置き換える。これがテーマを定めるときに最も大事な作業だ。
一度、この作業をしてしまえば、あとは小説を書くとき前に毎回読み返せばいい。すると自然に文章がターゲットにとってワクワクするか?という思考に切り替わるようになる。
テーマとは、愉しむ自分から、自らも愉しんで読む人も愉しませる自分へと変わるスイッチを作る作業ともいえる。
▶テーマを深める
テーマと言われると大上段に構えてしまう人がいる。そんな堅苦しいことは、この創作論では言わない。
このテーマは何なのか?は、「人を愉しませたい」ということの手段に何を選んでいるのか?というだけに過ぎない。
例えば、戦士が闘うのに、長剣を選んだのか、大剣を選んだのかの違い。
エンタメではないなら、「文章の美しさを伝えたい」でもいい。論文だって主題があってのこと。それがあなたの伝えたいことだから。
伝えたいことを言葉にして書き出すとその思いは強くなる。強くなれば、より文章の完成度を高めてくれる……と私は思っている。
ちなみに『オルガ―狂奔の女帝―』のテーマは「平和だけでは人は幸せになれないのか」と「人は自由と安全のどちらを選ぶのか」だ。後者を序章で突き付けておいて、本編で前者を追い掛けるという二重構造になっている。
これは是非、読んで感じてもらいたい。
▶テーマは誰が為に
ではテーマがあると何がいいのか。誰のためのものなのか。
長く書いていると筆に迷いが生じて違う方向に走ってしまったり、テイストの違う作品を観たり読んだりして影響されてしまうことがある。
しかし、このテーマを決めてあると、しっかり読み直してから書けば迷いがなくなるし、もし書いてしまった後でも、迷った文章も直しようもある。
つまり、テーマとは筆者のための方位磁針のだ。執筆という迷いの森であなたを出口に導ける灯火になってくれるかと。




