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実践!創作設定論  作者: 月桑庵曲斎
執筆編〜いきなり本文は危険です!〜
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第十四章 粗筋ならぬ粗書き〜文章は二度書く〜

 さて、前章まででプロットが終わったことだろう。私は大体ここまでの工程に二週間ほど掛かった。


 え? かかり過ぎ? 何を言うか、まだだ、まだ終わらんよ!


 なんてね(笑) ここからは執筆モード。でも、まだ、本文にはいきなり行かない。もう一段階、間を挟む。それが「下書き」だ。


▶下書きは完成原稿ではない


 当たり前のことではあるが、下書きは完成原稿ではない。では何が違うかといえば、基本的には台詞とキャラクターの行動及び感情をダイレクトに書く——という点が違う。


【下書き】

 オルガは悲しくなって叫んだ。

「お母様を二度殺さないで!」


【本文】

 オルガはそれが母をもう一度死なせることになると気づき、涙を浮かべて声を荒げる。

「お母様を二度も死なせないで」


 これでお気づきだろうか。これが下書きと本文の違いだ。ある意味で下書きは、まだプロットなのだ。


 あくまで下書きは本文を書くための青写真に過ぎない。設計図ができたら青写真。設計図があるからといって、いきなり家を建てる大工はいない。デザインだって、ラフを描いて、ガイドラインを沢山引いてからデザインを始める。これはそういうことなのだ。


 小説だけ違うなんて有り得ない。


▶台詞と動きから書いていく


 既に前項で例文を挙げているが、下書きというのは、余計な文学的表現は一切要らない。「悲しくなって叫んだ」が「涙を浮かべて声を荒げる」に変わるために「それが母をもう一度死なせることになると気づき」という装飾を必要とする。しかし、書かれた指示は「悲しくなって叫んだ」である。


 ここが、下書きを文学へと昇華するポイントだ。え? 文学作品を書いてない? だったら、「悲しくなって叫んだ」でいいのか?という疑問を此処で呈してみよう。


 実はそれでもいい。


 うん。別に駄目じゃないんだ。


 それは「低年齢向け」ならね。所謂(いわゆる)、児童文学とかライトノベルと呼ばれるジャンルでは、こうした直接表現が好まれる。でも、大人が読む作品にそれで情緒が伝わるか?というと無理。子供は感受性が豊かな反面、複雑な表現を好まないが、大人は感受性がスレてるから、複雑な表現をされることで、自分の感情が呼応するという現象が起こる。


 つまり、ターゲットの年齢によるということ。子供は直接的な表現の中から自分に合った感情を選び取る能力が高いから。


 大人は逆に複雑な言葉の表現の中から、取り出すことが得意なんだ。


 だから、ここはターゲットによる。でも、児童文学だからといってあまりにも直接すぎるのはどうかと私は思う。子供の成長を促すためには、装飾は必要でしょ!


 いつまでも「にんじん要らないよ!」は駄目ってこと。


▶止まるなら飛ばしていい


 この下書きは正直時間を掛けないでサクサク進めてほしい。悩むなら先を急ごうホトトギス。思いつかないシーンは飛ばして先へ進むのがいい。


 それと、注意するのは、下書きで本文を書かないことだ。本文を書きすぎると、執筆のときに膨らませられなくなる。


 下書きなら「ここで二人が和解する」「戦闘」でいい。空白を残して前進する勇気を持つことが大事だ。


 執筆のときに、文章を膨らませていくと、自然に筆が乗ってきて、前後の文脈が表現を連れて来てくれるなんてこともある。


 ただ、戦闘シーンは武術をやったことがない人には難しいこともあるので、こういうときはフィギュアや木偶を二体並べて武器を持たせて写真を撮りながら動かしていくというのもあり。


 シールドバッシュ(盾を押し付けて力を掛ける攻撃)やパリィ(武器で相手の武器をいなすことでバランスを崩す攻撃)といった手段やディサーム(武器を落とさせる攻撃)なども織り交ぜると、戦いのバリエーションも広がると思う。


 下書きは、完成度を上げる工程ではない。


 本文を書く余地を残しながら、最後まで到達する工程と覚えておこう。


 これは書く直前にしてもいいし、先にやっておいてもいい。そこは好みであるが、プロットは既にあるので、急ぐ必要はない。それに、ここまでくれば、もう執筆できるから。

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