096
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私の名前はツバキ・マンティスアロー。
リョーマ湾ではいまだに、魔族アルミラリア率いる海賊船ウミボウズとの戦いが継続している。
ポドカルパス先生はキャプテン・ターメリックを消滅させた後、背中から血を滴らせて飛行するアルミラリアとの戦闘を続けていた。
両者は空中を飛び回って戦っているために戦況の把握は難しいが、実力は拮抗しているように思う。
ゼルコバ君の話によると魔族アルミラリアの実力はゼルコバ君を上回っている可能性があるということだが、ポドカルパス先生が互角に戦っていることを考えると、それほど圧倒的な実力差があるようには思えない。
一方、リョーマ湾に浮かぶ海賊船ウミボウズは、キャプテン・ターメリックを失ったためか先ほどから沈黙を続けている。
このままドラゴンアローを撃ち続けていれば、接岸する前に撃破することが可能だろう。
「ツバキ、朗報じゃ。キエノ達がこちらに応援に来られるそうじゃ」
「それは非常にありがたいことです!」
「よし、ならば【精霊魔法】キエノ達を召喚じゃ」
ツキ様が【精霊魔法】召喚を発動すると、眩い光に包まれたキエノさんに良く似た大人の女性、スリーズ様、ヨシノ様が現れた。
ヨシノ様は可愛らしいミニ豚を抱えているが、カルミア=パキラさんの姿は見当たらない。
「ツバキさん、魔族アルミラリアの襲撃を押し留めていただきありがとうございました」
「その声はキエノさん?そのお姿は一体……」
「訳あって大人の姿となり、そのまま元に戻れなくなってしまったのです」
「そ、そうだったのですね。ところでキエノさん達も、強力な魔族が王都に現れたと聞きました。カルミア=パキラさんの姿が見られませんが、負傷などされたのでしょうか?」
「カルミア=パキラさんはここに」
「これは?」
「私の魔導書カッカラです。魔族デサルミラリアとの戦いは熾烈を極め、カルミア=パキラさんの魂を用いて魔導書を作成することで、なんとか撃退することが出来ました」
「辛いご決断をされたのですね……」
「はい、しかし私は仲間を犠牲にする覚悟を持ち、それでも進んでいくことを決断しましたので」
キエノさんが手に持つ錫杖は以前から使用していたものだろうが、改めて見ると不思議な魔法が宿っているように感じる。
おそらく、カルミア=パキラさんの魂と錫杖が融合して魔導書となった影響だろう。
「それで、これからどうするのじゃ?アルミラリアとは直接戦闘しないようにゼルコバから言われているが、いつまでもポドカルパス先生に相手をさせておくわけにも行かないじゃろう」
「それではこうしましょう。【精霊魔法】魔導書カッカラ開巻、天浄結界発動、裏固有魔法【裏聖天】天裂、魔族アルミラリアよ、天の裂け目に追放されなさい」
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「出来損ないの人造人間のくせに、よくぞこれほどまでの実力を身につけたな」
「我が宿敵アルミラリアめ、なぜ手加減をしているのだ!」
「手加減?一体何のことかな?」
「ふっ、まあいい、その余裕の笑みを引き剥がしてくれるぞ、とう!」
「我に本気を出させようというのなら相応の実力を示してくれないとな」
「やはり本気ではないということか……ん?天に謎の亀裂?」
「んなっ!ぐおおお!とてつもない引力で引き摺り込まれる!なんだこれはぁぁぁ!!」
「アルミラリアが天の裂け目に引き摺り込まれてしまった。一体誰がこんな魔法を……む、あれは!」
ーーー
大人バージョンのキエノさんが特殊な魔法を使うと、ポドカルパス先生と戦っていたアルミラリアが天の裂け目に飲み込まれて行ってしまった。
もしこのままアルミラリアが帰ってくることができなければ、もはや勝利したと言っても過言では無い。
「なっ!?なんですかその魔法は!?」
「魔法一つでアルミラリアを撃破してしまうとは、素晴らしい魔法なのじゃ」
「キエノ嬢の魔導書開巻は何でもありですね」
「キエノは先の戦いで魔法士として飛躍を遂げたのですよ」
キエノさんが使った魔法によりアルミラリアが天の裂け目に追放されたのを見ていたポドカルパス先生は、ゼルコバ君の仲間たちが集結しているのを確認して地上に舞い降りた。
「先ほどの素晴らしい魔法を使われたのはそちらのレディーかな?」
「ポドカルパス先生、ご無事で何よりです」
「いや、正直言ってギリギリの戦いだったぞ!でも素晴らしい魔法のおかげで大いに助かったぞ!ありがとう!」
「いえ、お礼にはおよびませんわ、ポドカルパス先生」
「むむむ、その声はゼルコバ君の妹君のキエノ姫では!?」
「ふふふ、気のせいですわ」
キエノさんは何故か余裕の笑みを浮かべて、ポドカルパス先生をあしらっている。
身体の成長に合わせて精神的にも大人になってしまったというのだろうか。
「しかしこれでアルミラリアの脅威が消え去ったとなれば、勝利したも同然ですね」
「ツバキよ、油断するのはまだ早いのじゃ。アルミラリアがこの程度で無力化できるとは到底思えないのじゃ」
「これは早計でした」
「それならいつでも大精霊様を召喚できるように準備をしておいた方がいいかも知れないな、とう!」
「ポドカルパス先生、私たちは未だ【精霊魔法・奥伝】までしか到達しておりません。ですので、例え大精霊様を召喚することが出来たとしても戦いに参加するように指示を出すことはできませんわ」
大精霊様を召喚しても戦力として数えることは出来ないということを、キエノさんが残念そうにポドカルパス先生に打ち明けた。
私は未だ【精霊魔法】について知識を持たないが、どうやら【精霊魔法・奥伝】を上回る領域に到達すると、大精霊様を援軍として召喚することが出来るらしい。
大精霊様といえば圧倒的に強力な存在であろうから、アルミラリアへの備えとしてはこれ以上は無い。
「そんな時は私に任せるのだ、とう!」
「えっ!?もしかしてポドカルパス先生は【精霊魔法・皆伝】に到達していらっしゃるのですか!?」
「まさかそんなわけは無いぞ!それどころか、私は第六位階に到達してはいるが、第六位階魔法【固有魔法】を授かっていないのだからな!」
「そ、それでは一体どのようにするおつもりでしょうか?」
「実は私は宿敵アルミラリアの邪悪なる実験によって生み出された半霊半人の人造人間なのだ!私の魂は、半分はとある強力な怨霊のものであり、半分は人間のものとなっている。そのため第六位階魔法【固有魔法】を授かることが出来ないのだ!しかし私はかつて第六位階に到達してフォレスティナ様に祈りを捧げた時、【固有魔法】の代わりとしてとある神器を授かったのだ!」
「「「「「神器!?」」」」」
「そう、とくと見よ!これが主神フォレスティナ様より授かりし【神器・大精霊ガチャ】なのだ、とう!」
ポドカルパス先生が右手のひらを空中に突き上げると、目が眩むような輝きと共に謎の円盤が出現した。
その円盤は中心に回転軸が見られ、空中に静止している。
「もしかしてこの神器によって大精霊様を召喚出来るとかでしょうか!?」
「察しがいいなツバキ姫!その通り、この【神器・大精霊ガチャ】を使えば、大精霊様を召喚出来るかも知れないのだ!とう!」
「えっと、ポドカルパス先生、大精霊様を召喚出来るかも知れない、というのは一体……」
「これを見たまえ」
「これは……?」
ポドカルパス先生が懐から取り出したのは、小切手のような紙片であった。
その紙片には大精霊ガチャ券と書かれており、合計10枚ある。
「【神器・大精霊ガチャ】には特殊な条件があるのだ!まず大精霊ガチャ券を1枚使用することによって、1%の確率でランダムにいずれかの大精霊様を召喚して使役できるというものだ!大精霊ガチャ券は世界各地に散りばめられており、この10枚を集めるために、私は30年の月日を費やしている、超貴重品だ!」
「こ、この券を10枚を集めるために30年もかかったのですか!?」
「ああ、そうだ。もちろん毎日大精霊ガチャ券だけを探し回っているわけではないがね!大精霊ガチャ券は洞窟の奥底に落ちていたり、普通のお店で売られていたこともある。どこで手に入るのか全く予想がつかないが、発見したら必ず入手するべき超レアアイテムなのだ!」
「し、しかしそんな超レアアイテムを使用しても、成功確率が1%ではあまりにも低すぎるではないでしょうか?」
「その通りだツバキ姫。そこでこの低確率を覆す方法が、ここに用意した10枚の大精霊ガチャ券を一気に消費することなのだ。そうすると、なんと10連ガチャにおまけで1連追加され、確定で1枚大当たりが出ることになっているのだ!とう!」
「え!?10枚の大精霊ガチャ券を一気に消費することで、確定で大当たりが引けるのですか!?」
「そういうことだ!魔族アルミラリアを倒す絶好の機会、このまま奴が帰ってこなければ今回消費する大精霊ガチャ券は無駄になってしまうかも知れないが、それは致し方なし。行くぞ!【神器・大精霊ガチャ】起動!」
ポドカルパス先生が【神器・大精霊ガチャ】を起動させると、【神器・大精霊ガチャ】は勝手に浮かび上がり、燐光を纏い始めた。
すると、どこからともなく可愛らしい少女の声が聞こえてくる。
『【神器・大精霊ガチャ】へようこそ、私はナビゲーターの天使ティナです』
「「「「「天使ティナ様!?」」」」」
「天使ティナ様!貴女様がカルミア=パキラさんを救ってくれたという天使ティナ様なのですか!?」
『おや、私のことを知っている人がいるようですね。しかし天使ティナはただいま【神器・大精霊ガチャ】のナビゲーターですので、関係のないご質問は受けることができません』
「こ、これは失礼いたしました」
「天使ティナ様、ポドカルパスでございます!」
『【神器・大精霊ガチャ】の所有者ポドカルパスを確認しました。大精霊ガチャを回しますか?』
「その前に期間限定フェアについて確認させていただきたい!」
「「「「「期間限定フェア!?」」」」」
「はい、ただいまの期間限定フェアは、【酷暑の夏をぶっ飛ばせ!〜期間限定サマーフェア〜オソレ山の大精霊イザナミ、期間限定衣装ver排出確率超超UPイベント開催中!】となっております」
「ありがとうございます。それでは【酷暑の夏をぶっ飛ばせ!〜期間限定サマーフェア〜オソレ山の大精霊イザナミ、期間限定衣装ver排出確率超超UPイベント開催中!】に大精霊ガチャ券10枚を使用させていただきたい!」
「かしこまりました。大精霊ガチャ券10枚確かに受け取りました。それでは【神器・大精霊ガチャ】11連、回転します!」
【神器・大精霊ガチャ】が激しく回転し始めた。
そして回転する円盤からは11個の不思議な色の卵のようなものが次々に飛び出してくる。
『【神器・大精霊ガチャ】から、Cが7個、UCが2個、Rが1個、そしてSSR1個が排出されました』
「うぉぉ!きったぁぁぁぁ!!」
『入手したガチャを開封しますか?』
「お願いするぞ、とう!」
『開封しました。内訳は次のとおりです。C高級たわし×2、C厳つい兜×3、Cりんご×1、C真珠×1、UC若返りの薬×1、UC神聖ミスリル剣×1、R神龍弓ヨルムンガンド×1、SSR魔導書【オソレ山の大精霊イザナミ期間限定衣装ver召喚3時間コース】』
「うわぁぁ!素晴らしいアイテムの数々だぞ!天使ティナ様、それではこの魔導書【オソレ山の大精霊イザナミ期間限定衣装ver召喚3時間コース】を開巻することによって、オソレ山の大精霊イザナミ様を召喚することができるというわけですね!?」
「そうなります。ただしこの魔導書【オソレ山の大精霊イザナミ期間限定衣装ver召喚3時間コース】は一度使用すると消滅しますのでお気をつけください。また、この魔導書は24時間後に自動的に消滅します。その他のガチャアイテムは使用期限はありません」
「ありがとうございます!」
【神器・大精霊ガチャ】からは、本命の大精霊様を召喚出来るという魔導書の他にも、様々な有用そうなアイテムが排出された。
若返りの薬にはキエノさんがピクリと動き、神聖ミスリル剣にはスリーズ様が驚愕し、神龍弓ヨルムンガンドを目にしてから私は動悸がおさまらない。
弓使いにとして、神龍の名を冠する弓など夢のまた夢である。
しかし、私の実力ではまだ過ぎたる名弓であろうことが残念でならない。
「ありがとうございます!これでアルミラリアが再び現れたとしても万全の備えをすることが出来たぞ、とう!」
「【神器・大精霊ガチャ】のおかげですね。しかしポドカルパス先生の30年分の労力を消費してしまいましたが……」
「なんの、この日のための準備だったのだから、当たり前のことだぞ、とう!」
「これでゼルコバ君が到達すればさらに盤石の備えとなることだろうと思います」
「ゼルお兄様から【精霊魔法】念話にて連絡がありました。あと30分でこちらに合流出来るとのことですわ」
「ふむ、30分か……アルミラリアの動きがなければリョーマ湾海底の大精霊マンティスの精霊殿に援軍を送りたいところではあるのじゃが」
「いかがでしょうか、キエノさん?」
「ツバキさん、この戦場のリーダーは貴女なのですから、どうぞご指示をいただきたいと思います」
「そんな、私なんて皆様に比べたら実力も経験も及びませんので、指示なんておこがましいことです」
「ツバキよ、ゼルコバがおぬしをリーダーに指名したのじゃから、実力の有無など関係ないと思うのじゃ」
「私もツキ様のお考えに賛同いたしますわ」
「私もツバキ嬢の指示に従います」
「ツバキが決めるのが適任だと思います」
「そ、それでは大精霊マンティス様救出の援軍としてキエノさん、スリーズ様、ヨシノ様に向かっていただければと思います。海賊船ウミボウズは我々でなんとか対処できると思いますので」
「はい」
「了解だ!」
「わかりました」
「お話中すみません、何者かが大石管より出現しました。おそらく魔族のようです」
「魔族!?」
大精霊マンティスの救出部隊の編成について打ち合わせしていたところ、エマ爺が私に新たなる魔族の出現について報告をしてきた。
その魔族は2人組で、1人は遠目で見ても豊かな肉体と美貌を備えた白髪の女性で、もう1人は男性の魔族のようだ。
さらに、白髪の女性は怨霊を1体従えているようだ。
「全員、戦闘に備えてください!」
「「「「「はい!」」」」」




