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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第三章 大精霊の試練 〜マンティスアロー男爵領 大魔王復活事件〜
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ーーー


私の名はキエノ・リョーマイケル。

リョーマイケル伯爵家の長女にしてゼルお兄様の妹だ。

カルミア=パキラさんから事情を聞いた私は、ゼルお兄様に飛空艇ユグドラシルでフジ山の精霊殿に連れて行ってもらった。

その後、フジ山の精霊殿でカグヤ様から精霊眼の使い方を教えてもらい、私はさっそく自分の魂を視た。


すると私の魂に絡みつく禍々しい呪いがかけられており、私は頭が真っ白になった。

しかし幸いにもカルミア=パキラさんの固有魔法【魂浄】によって、魂にかけられた呪いは解くことができた。

私達はその後、ヤエ公爵と国王陛下に事態を説明し、カルミア=パキラさんの【魂浄】と私の【聖天】を合体させた魔法の雨を降らせることで、王都中の人々の魂は浄化済みだ。

セドゥルス枢機卿はなぜか魂の浄化を拒否したようだが。


「聖女キエノ、オ前もスファエロテカ様に祈りヲ捧げ、真ナル信仰を取り戻すノダ!」

「そんなことをしたら魔族に変身してしまいますのでお断りですわ」

「魔族ニ変身?何ヲ言っていル?」

「セドゥルス枢機卿、あなたはすでに魔族に変身しているのですよ」

「馬鹿ナ!」

「嘘だと思うなら真実の鏡とやらでご自身の姿を映してはいかがかしら?」

「いいだろウ、真実の鏡ヨ私ノ姿を映し出セ!おお、これは!」

「ほら、ご覧なさい」

「いつも通リの神聖ナル私の姿ダ」

「えええ!?」


セドゥルス枢機卿の額からは角が生え、全身の皮膚は浅黒く変色しているが、真実の鏡に映った姿はいつも通りだと言う。

つまり真実の鏡に映し出される光景は、操作されているに違いない。


「セドゥルス枢機卿、聖女キエノの姿を真実の鏡に映してごらんなさい」

「はっ、アルミラリア様」

「アルミラリア!?貴女は魂を斬るという魔族だったのですわね!」

「ふふふ、一体なんのことでしょうか」


アルミラリアは修道女の格好をしており、不適な笑みを浮かべている。

アルミラリアは魂を操作することができるため、おそらく別人の肉体を乗っ取っているのだろう。

だとすると、教皇の魂も全く別のモノと入れ替えられている可能性が高い。


なんと私は聖都カンパニュラで教皇から祝福を受けた時、魔族から祝福されたことになる。

おそらくその時に私の魂には呪いをかけられてしまったのだろう。


「真実の鏡ヨ、聖女キエノの真の姿を映し出セ!」

「私は正しく生きておりますので、全く問題ありませんわ」

「む、コレは!!」

「なんですの?」

「見ヨ、聖女キエノ!お前ハ本当ハこんな破廉恥ナ格好をシテいるではナイか!全くけしからン」

「えええ!?」


セドゥルス枢機卿が私に真実の鏡を向けると、非常に際どい格好の巫女装束の私が映し出されていた。

鏡の中の私は肩が丸見えになっており、袴には深いスリットが入っていて太ももが露わになっている。

上衣は丈が短いシャツのようになっており、なんとおへそが丸見えだ。


貞淑なる貴族令嬢として、断じてそのような格好をしたことはないし、これからもするつもりはない。


「うぉぉぉ!けしからン、実にけしからンンン!」

「セドゥルス枢機卿、その鏡をすぐにしまってください。これは最終通告です」

「しまう必要がアルのはオ前のおへそダロウが!こんナ破廉恥な格好ヲしおっテからに」

「【精霊魔法】太陽の精霊アポロン召喚、太陽球」

「ギャアアア!目が、目ガァ!!」

「自業自得ですわ」


真実の鏡に映し出されたふしだらな格好の私を凝視するセドゥルス枢機卿に向けて、私は魔法を放った。

太陽球で目が焼けてしまったようだが、自業自得だろう。


「グゥぅ、指導係タル私の目を焼くトハ、ソノ野蛮な素行を正さねばならなイ。キエノよ、懲罰房に行クのだ」

「拒否しますわ!」

「なんト反抗的な!ええい、言うことヲ聞ケ!」

「ひっ!」

「おっと、キエノ嬢には指一本触れさせんぞ」

「スリーズさん!」


セドゥルス枢機卿が私の方に近寄って来たところ、スリーズさんが阻止してくれた。

大人の男性に迫られることに恐怖を覚えた私だったが、スリーズさんが勇ましく立ち塞がってくれたおかげで、私は冷静さを取り戻した。

魔法学院の女学生達は密かにスリーズさんのファンクラブを作っているらしいが、格好よくて凛々しいスリーズさんに憧れる気持ちはよくわかる。


「セドゥルス枢機卿、あなたの正義を成すためにはスファエロテカ様に授かったかもしれない新たなる魔法を使いこなす必要がありますわよ」

「アルミラリア様、新たなル魔法?とは一体ナンのことでしょうカ?」

「ふふふ、魔法の使い方がわからないのですね。それでは我が教えて差し上げましょう、【死霊魔法】リモートコントロール」

「ヌァぉ!か、身体が勝手ニ……!」


アルミラリアは固有魔法【死霊魔法】によって、セドゥルス枢機卿の魂と自らの魔法で接続したようだ。

アルミラリアが操る【死霊魔法】と魂が接続している間は、セドゥルス枢機卿の意思を無視して身体を操作できるらしい。


「あぁん!セドゥルス枢機卿!あなたって、あなたって本当に……使えないクズね」

「なっ!!」


魔族アルミラリアは吐き捨てるように言い、セドゥルス枢機卿に冷たい視線を向けた。


「ちっ、第七位階に到達していれば【冥霊魔法】の一つでも使えるかと思ったのに、あなたってば第六位階にすら到達していないじゃない!全く役立たずの無能、滑稽を通り越して怒りを覚えたわ」

「お、お許しくださイ、アルミラリア様!どうか怒りをお鎮めクダさい!」

「いいえ、鎮まらないわ!無能なお前には鞭をくれてやる!ほらっ!ほらぁ!」

「あっ!アアあ!背徳的イィ!」


どうやらセドゥルス枢機卿はアルミラリアが期待していた位階に到達していなかったらしく、怒ったアルミラリアは魔法で作り出した鞭でセドゥルス枢機卿を責め始めた。

痛い痛いとのたうち回るセドゥルス枢機卿だったが、頬が薄っすら紅潮しており、セドゥルス枢機卿はなぜか喜んでいるようだ。


「魔族アルミラリア、その人は連れて行っていいですから、退いてもらえませんか。私達はあなた方の行いをこれ以上追及しませんので」


私達は別に魔族と戦いたいわけではなく、被害を受けたから反撃しているだけだ。

セドゥルス枢機卿はもう救うことは出来ないとしても、強力な魔族であるアルミラリアが退却してくれると言うのならば大歓迎だ。


「あら、見逃してくれると言うのかしら、聖女キエノさん?」

「はい、このまま立ち去っていただけると言うのなら」

「……なんでそんな冷たいこと言うの?」

「は?」

「我は世の中を滑稽なことで満たしたいだけだと言うのに、なぜ帰れなどと言うのかと聞いているのだぁ!!」


アルミラリアの怒りに呼応して、邪悪な魔力がまろび出ている。

どす黒い瘴気を思わせる魔力はたなびき、教会内には悪霊の叫び声が響く。


「元はと言えば貴様が悪いのだ、我が渾身の悪霊怨霊テーマパークをエリゲロンに作っていたと言うのに、あっという間に全て成仏させてしまった。あれは悲しかった、悲しかったぞぉ!」



アルミラリアの話によると、私が固有魔法【聖天】で解放した悪霊都市エリゲロンは、アルミラリアが長年かけて悪霊怨霊を集めていた場所だったようだ。

そんな悍ましいテーマパークなど誰も喜ばないと思うのだが。


「キエノ嬢、危ない」

「きゃ!」


アルミラリアの操る魔力の鞭が私に向かって放たれ、スリーズさんが私を抱えて退避させてくれた。

接近戦は相変わらず苦手なのでアルミラリアから距離を取り、スリーズさんに守ってもらった方がいいだろう。


「キエノ、私もいますよ、後ろに隠れて。もし攻撃が届くようならカルミア=パキラもキエノを守って上げてください」

「ヨシノさん、ありがとうございます!」

「「わかりました!」」

「カルミア=パキラさん、ありがとうございます!」


スリーズさん、ヨシノ様、カルミア=パキラさんが私を守ってくれる。

とても力強く、安心できる仲間達だ。

アルミラリアは魔力鞭による一撃を放った後、ぶつぶつと独り言を呟いている。


「もっと面白いこと、そうだ、アレがあった。アレを披露すれば聖女キエノは大笑いするはずだ。【冥霊魔法】魔導書モルティス召喚!」

「あ、アレは!」

「魂を斬るという剣ですか!?」

『カカカカカカ!』


アルミラリアが召喚したのは、【冥霊魔法】魔導書モルティスであった。

魔導書モルティスは反りの強い片刄の刃物で、とても書物のようには見えないが、魔導書としての機能を備えているのだろうと思われる。


「出でよ、ブタ教皇召喚!さぁ、大笑いするがいい!」

「ブヒッ!?」

「「「「ええっ!?」」」」


アルミラリアが魔導書モルティスから召喚したのは、ミニ豚であった。

ミニ豚は突然召喚されたことに驚き、戸惑っているようだ。


「さぁ笑え、これなるは教皇になるはずだった老人の魂を宿した哀れなブタである!さらにこちらの一見すると教皇に見える老人、実はオークロードのブマタンゴという魔物の魂を宿した怪物だったのだ!」

「ブヒッ?アルミラリア様、もう種明かしをされるのですか、ブヒ?」

「おうブマタンゴよ、床に這いつくばってブタ教皇と共にブヒブヒと鳴け!きっと滑稽だぞ」

「わかりましたブヒ。ブヒブヒ」

「ブヒ!?」

「なっ!教皇猊下が豚の魔物だっタ!?ソレならば私は一体ドウすれば……」

「なんていたましい……」

「魔族の笑いのセンスは全く理解できない」

「あれは、一体……?」

「私たちってあんなどうしようもないヤツに殺されたんだね、パキラちゃん」

「ちょっと、ううん、かなりショックだね、カルミアちゃん」


教皇の魂を宿したミニ豚と、豚の魂を宿した教皇がブヒブヒと地面を這いつくばる様を見て、アルミラリアは自信満々の様子だが、これで笑えと言われてもただただ困惑するばかりだ。

セドゥルス枢機卿も今更になって事態を理解しているのか、絶句して青ざめている。


魔導書モルティスで攻撃されたらすぐにゼルお兄様に来ていただかないといけないと思っていたが、こんな状況に陥るとは夢にも思っていなかった。

しかし笑いを取ることにこだわりを持っているアルミラリアを諦めさせるには、この状況をうまく利用するのも手かも知れない。


「あっはっは!面白い、実に面白いですわ!」

「ええ?キエノ嬢、突然どうしたのですか?」

「あっ、なるほど。魔族アルミラリア、あなたの笑いのセンスは一流ですね、あははは!」

「……そういう作戦?面白い!面白すぎてお腹が捩れちゃうよぉ!あははは!」

「???」

「やはり、やはりそうか!我の企みは滑稽だろう!」


スリーズさんだけ意味がわからずに右往左往しているが、私達はとりあえずアルミラリアの機嫌を取るために大笑いすることにした。

正直言って全く面白くないが、これで争いが避けられるのであれば容易いことだ。


「ええ!とってもとっても面白いですわ!」

「そうか、そうだろう、聖女キエノは滑稽さについて造詣が深いと見える。ならばもっと面白いモノを見せてやろう」

「い、いえ!結構です!もう十分笑わせていただきましたので、どうぞお帰りくださいませ!」

「そう言うな。どうせ魔王様から召集がかかっているので、もうこっちの世界にいられる時間もわずかしかないのだ」

「ま、魔王!?」


魔王とは勇者と対を為す存在であり、魔族の王として君臨しているという。

まだ私達は魔王の存在を確認していないが、大きな被害をもたらした瘴気爆弾などは魔王が作った兵器なのだそうだ。


「これは悪霊テーマパークのボスとして配置しようと思って取っておいたのだが、魔王様からのご指示もあることだし、ここで披露するとしよう。出でよ、大魔王様の冥玉、さぁ、おいでませ、【死霊魔法】大魔王トオルシファー様の悪霊召喚!」

『オンギャァァァ!!』

「「「「大魔王の悪霊!?」」」」


なんとアルミラリアは魔導書モルティスから大魔王の冥玉を取り出すと、大魔王の悪霊を召喚してしまった。

ゼルお兄様は大魔王の復活について危惧されていたが、こんなにも呆気なく大魔王が悪霊として復活するとは思わなかった。


『オンギャァァァ……許サヌ、許サヌゾォォ』


悪霊として復活した大魔王トオルシファーはしばらく黒い霧として蠢いていたが、しばらくすると魔族の形をした瘴気の塊のような人型に変形した。


「大魔王トオルシファー様、お久しゅうございます。この短時間で悪霊から怨霊になられたのですね、さすがでございます!」

『アルミラリアぁ……貴様、相変わらず奇行を繰り返しているようだナァ』

「私めのは奇行ではなく滑稽とお呼び下さいませ!」

『そうか。ところで我は為すべきことがあるので行くぞ』

「はっ!どちらへ向かわれるので?」

『それはもちろん我が死地、大精霊マンティスの精霊殿である。今こそあの犬畜生めを抹殺し、我が魂を完全に解放するのだ!お前も来い、アルミラリア』

「はっ!お供いたします!おい、そこのブタ共とゴミクズ、この場に残り聖女キエノを倒すのだ。逃走は許さんぞ」

「ブヒッ!」

「ブヒ?」

「わ、私ハァ、アルミラリア様にはモウ従いたくナイ!」

「さては反抗期だな?【死霊魔法】リモートコントロール、我が命令には絶対服従だ」

「ウギゃぁぁぁ!」


アルミラリアが魔法を使うと、セドゥルス枢機卿はのたうちまわり、苦しんだ。

そして次に立ち上がった時には、涙を流しながら鬼のような形相でこちらを睨んでいる。


「聖女キエノォ、ォ前を殺ス!」


ゼルお兄様、申し訳ありません。

私の失策で大魔王の怨霊を復活させてしまいました。

私達はこれから魔族となったセドゥルス枢機卿達と戦わなければなりません。

どうかご武運を。




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