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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第三章 大精霊の試練 〜マンティスアロー男爵領 大魔王復活事件〜
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「よし!これで依頼達成だ!それではイタコ組合に帰還するとしよう」

「おーい、ツバキ、帰るよー」

「……死にたい」


僕らが悪霊を成仏させた後、しばらくするとツバキの興奮がおさまって羽と角は引っ込んだ。

するとツバキは落ち着きを取り戻し、先ほどまでの自らの振る舞いに赤面して蹲ってしまった。

どうやらツバキは魂を解放して魔族モードになると、欲望に従って行動してしまうようになるらしい。


「あ、そうだ。土砂崩れに巻き込まれて亡くなってしまった冒険者の遺体って、回収しなくても良いのでしょうか?」

「ゼルコバ少年よ、良い質問だな!遺体の回収はもちろん可能ならしてあげるのが良い。その場合はギルドから謝金が支払われ、遺族の元に遺骨や遺品が返還されることになっているぞ!」

「そうだったのですね、ならば遺体の回収をやってみても良いでしょうか?」

「もちろんだ!」

「【樹木魔法】根っこ探索!および【樹木魔法】根っこ操作!」


僕は地面に手をつくと、【樹木魔法】と【鑑定】を同時発動させ、地下に張り巡らされた樹木の根を伝って遺体の捜索を開始した。

すると、トリカブトが咲いていた場所の真下の土中に白骨化した遺体を発見したため、樹木の根っこを操作して遺骨をサルベージする。

しばらく捜索すると、僕の【鑑定】で感じ取ることができた遺骨の全ては回収できたように思う。


「ありました。白骨化しているので、数年間は弔われずに放置されていたのでしょうね」

「丁重に持ち帰り、供養してあげることにしよう!」

「ゼルコバ君、そのご遺骨、見せてもらえませんか?」

「ん?いいけど」


先ほどまで恥ずかしがって蹲っていたツバキが回復して、遺骨を見せて欲しいと言って来た。

遺骨を見たいと言う貴族令嬢なんてツバキくらいのものだろう。

何も面白いことはないと思うのだが。


「この遺骨、少し変じゃないですか?」

「ほう、ツバキ姫、なぜこの遺骨が変だと思ったのかな?」

「ポドカルパス先生は先ほど、不幸にも崖崩れに巻き込まれて命を落とした元冒険者とおっしゃいましたが、この方の死因は崖崩れによるものではないようです」

「ほう」

「えっ!!??ツバキ、どう言うこと?」

「崖崩れや土砂崩れに巻き込まれて死んでしまう場合、死因は落石による頭蓋骨陥没か、または窒息死となる場合が多いですが、この遺骨は強力な斬撃を受けたことが直接の死因のように思います」


ツバキが言うように、僕が発掘した遺骨は右肩から左腰にかけて鋭い刃物で切断されており、凄まじい斬撃を受けたように見える。

遺骨の被害状況から、殺害者は優れた戦闘技術を持つ魔法士だろう。


「ちょっと失礼、これはなんだろう?」


僕が遺骨の胸元を探ると、小型のフォレスティナ木像のネックレスが現れた。

フォレスティナ木像のネックレスは信仰深い信徒や司祭や修道女が身につけており、遺骨の身元特定につながる可能性がある。

材質は不明だが、木製のため【樹木魔法】で何か情報を得ることが出来ないだろうか。

僕は少し思いついたことがあったため、好奇心に従ってここで試してみようと思った。


「僕の【樹木魔法】と【鑑定】を応用すれぼ、何か手がかりが見つかるかもしれない」

「ゼルコバ少年の魔法は様々なことに応用が効くようだな!」

「それでは、【樹木魔法】【鑑定】!むむむ、犯人がわかったかも知れないぞ!」

「えっ!?」

「えっ!?」


僕が【樹木魔法】と【鑑定】の複合魔法を発動させると、所有者の死の直前の記憶が映像となり、不鮮明ながらも犯人の顔を確認することが出来た。

やはりツバキの予想通り殺人犯は所有者を斬撃により殺害し、その後証拠隠滅のために魔法で崖崩れを引き起こしたようである。

犯人は、その身のこなしからも熟練の魔法士であることが窺える。


僕は殺人犯の顔をしっかりと記憶したが、その者が今どこにいるかはわからない。

しかし顔を見れば間違いなく判別可能だ。


「犯人の顔はわかりましたので、顔を見れば殺人犯を特定することができるでしょう。ちなみにこんな顔です」


僕が【樹木魔法】を発動すると、魔木の根が地中から迫り出してきて、犯人の顔を再現した。


「えーっと、とても素晴らしい作品ですね」

「ゼルコバ少年は芸術的センスは無いようだな!」


僕は樹木を操作して、脳裏に焼き付けた殺人犯の顔を樹木で再現したのだが、僕の芸術的センスが壊滅的だったため、犯人を特定するための手がかりにはなりそうもない。

ともあれ、ギルドに戻ってアセビに報告するとしよう。


ーーー


「アセビさんこんにちは、数年前に亡くなった冒険者の遺骨を発見したので、ご確認いただけないでしょうか」

「っ!?ゼ、ゼルコバ様!それは本当ですか!!??」

「え、ええ、ちょっとここではお見せ出来ないと思いますけど、どうしましょうか」

「ギルドの裏口からイタコ組合に抜けられますので、どうぞこちらをお通りください」


そういうとアセビは僕らをギルドの裏口に案内し、イタコ組合の建物の前まですぐに到着した。

というか、ギルドの裏口からイタコ組合に行けたのなら教えてくれてもよかったのに。


そういえば僕の方からお願いして優遇措置はなるべく取らないようにしてもらっているため、以前イタコ組合のことを訪ねた時には、教えてくれなかったのかもしれない。


「あらぁ〜ん、早かったのねぇん?あら、アセビじゃなぁ〜い、こっちに来るなんて珍しいわねぇん?」

「ジャカランダ、少し場所をかしてください」

「あらぁ、いつも冷静なアセビが珍しく急いでいるようだわぁん?」

「妹の遺骨が見つかったかも知れないのです」

「あらぁん?それならイタコ組合の裏に幕を張ってあげるから、そこで確認するといいわねぇん?」

「アセビさん、妹さんの名前は、カルミアさんと言うのですか?」

「そっ、そうです!!!大切な大切な、たった1人の妹、だったのに……」


なんと言うことだろう。

僕らが除霊してしまった悪霊は、アセビの妹だったのだ。

カルミアの悪霊はすでに天に召されており、今さら呼び戻すことなど不可能だ。


「ゼルコバ少年、キミが責任を感じる必要はない。彼女はすでに成仏し、あるべきところに還っただけなのだから」

「……はい」


その後、イタコ組合の裏手にはジャカランダによって幕が張られ、外から見られないようにした上で、僕はアセビの妹カルミアの遺骨を出した。

遺骨は魔導書コクーンに収納した状態で持って来ていたため、僕が第七位階魔法を使えることを知る人間は徐々に増えつつある。


「アセビさん、辛いかも知れないんだけど教えて欲しい、カルミアさんを殺害した犯人はもう捕まったのかな?」

「!?カルミアは崖崩れに巻き込まれて亡くなったのではないのですか!?」

「カルミアさんの遺骨の状態から、明らかに事故死ではありません」

「そ、そんな……だとすると妹を殺した犯人は今もどこかに……」

「そうなります」

「あ、あぁ……」


アセビはカルミアの死が崖崩れによる事故死ではないことを知ると、その場に座り込んでしまった。

あまりのことにショックを受けてしまったのだ。


「ジャカランダさん、アセビさんについていてあげてくれないだろうか」

「いいわよぉん?ゼルコバちゃんはどうするつもりなのぉ?」

「犯人を探し出し、必ず罪を償ってもらいます!」

「わかったわぁん?さすが勇者様ね、ちゅ!」

「(おっと、脳魔法発動!)」


ジャカランダが背筋も凍るような投げキッスを飛ばしてきたが、脳魔法で体感時間を引き延ばし華麗に身をかわした僕は、さっそく犯人探しを開始することにした。

まずは王都チェリートピアの全ての人間を確認し、それが終わり次第王国全土に捜査範囲を広げるつもりだ。

カルミアを殺害し、今ものうのうと逃げ延びている凶悪な殺人犯め、僕が必ず探し出してやるぞ。


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