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神気切れの状態から回復した僕は、ツバキと共にイタコ組合に入会させてもらうことにした。
「それじゃあこの紙に名前と住所と年齢と位階を書いてねぇん?」
「はい、どうぞ」
「はい、私もどうぞ」
「それじゃあ2人ともCランク霊媒師で登録完了っと」
「霊媒師の最低ランクはCランクなんですか?」
「そうよぉん?依頼を頑張ったらランクを上げるから、どんどんお仕事してちょうだいねぇん?」
霊媒師はCランクが最低なのだそうだ。
冒険者がFランクからなのを考えると、Aランクまでの道のりは比較的近いように感じる。
「あら、ゼルコバちゃんは第七位階なのねぇん?さすが勇者様だわ〜ん。憧れちゃう」
「素晴らしいな、ゼルコバ少年よ!私もいつか第七位階に到達したいものだ」
どうやらポドカルパスとジャカランダは第七位階には到達していないようだ。
しかし2人とも裏魔法の使い手なので、第六位階であっても強力な魔法士には違いない。
「神気の扱いには不慣れですし、裏魔法も奥が深そうなので、今後ともご指導よろしくお願いします」
「ゼルコバ少年の向上心は素晴らしいな!それではこの後、私と一緒に霊媒師の依頼を受けてみないかい?」
「霊媒師の依頼ですか!?ぜひともよろしくお願いします」
「私もご一緒させてください」
「もちろんツバキ姫も大歓迎だが、まず服装を整える必要がありそうだね」
「背中が破けちゃったものねぇん。それならワタシが最高の衣装を使ってあげるわぁん?」
「ジャカランダさんは衣装作りが得意なのですか?」
「そうよぉん。ぶっちゃけると、ワタシの固有魔法は【縫製】と言って、材料さえ揃っていればイメージした通りの衣装を魔法で作り出せるのよぉん?でも戦闘向きではないから、それが理由でイタコ組合の受付嬢と衣装作りを仕事にしているのよぉん?」
「そうだったんですね、素晴らしいお仕事だと思います」
「そう言ってもらえると嬉しいわぁん?」
ジャカランダの固有魔法【縫製】は、イメージした通りの衣装を魔法で作り出せるという。
確かに戦闘向きではないが、素晴らしい魔法だと思う。
「露出は控えめでお願いしますね」
「わかってるわよぉん。こう見えてもプロなんだから、着る人が1番望んでいる衣装に仕上げてあげるわぁん?」
「ありがとうございます!」
「それじゃあちょっとツバキちゃんはこっちでオネェさんと一緒に衣装作りをしましょう。ポドちゃんとゼルコバちゃんは少し待っててねぇん?」
待つこと数分、早速衣装が仕上がったとのことで、ツバキはイタコ組合の奥から完成した衣装を纏って登場した。
今まではシンプルな軽装だったのが、フリフリ多めの女の子らしい衣装にアレンジされている。
背中には羽が生えても破れないように、肩甲骨のあたりにスリットが入れてあるらしいが、肩から腰にかけて装飾で隠されているため、肌が見えているということはない。
さらに角の部分に穴の空いた仮面も用意されており、角が生えた時には仮面の装飾のように見えるよう細工されている。
裏魔法使用時にも魔族の混血であることがバレないように工夫されているのだ。
「ど、どうでしょうか?」
「とっても似合っているよ、ツバキさんの可憐さを引き立てる素晴らしい衣装だね!」
「あ、ありがとうございます」
ツバキはもじもじしながら返事をしたが、仮面に隠されているためにその表情はわからない。
しかし頬は少し赤みを帯びており、照れているようだ。
「よし、衣装も完成したことだし、いざ依頼に向かおうではないか!」
「あ、あの、衣装のお代はおいくらでしょうか?」
「サービスでいいわよぉん?次からはお金をいただくことにしようかしらぁん?」
「す、すみません、働きでお返しさせていただきます」
「いいってことよぉん?それじゃあいってらっしゃ〜い」
「「はい!」」
ジャカランダは見た目と言動こそクセが強いが、面倒見の良い人であった。
僕はすっかり元気を取り戻したツバキとポドカルパスと共に、初の霊媒師依頼に向けて出発したのであった。
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「さて、ここが我々に与えられた依頼先だ」
「えーっと、ここは、森、ですよね?」
「そうだ、君たちは冒険者でもあるので、薬草採取だったり狩りなどで訪れたことがあるだろう」
ポドカルパスに連れられて向かった先は、王都の外にある森だった。
しかも偶然にもそこは先日、僕らが薬草採取で訪れた場所であった。
「ゼルコバ少年よ、我々イタコ組合の霊媒師たちがどんな存在と戦っているのか、知識はあるかな?」
「はい、ポドカルパス先生が悪霊怨霊とおっしゃっているのを聞きましたので、そのような存在かと」
「その通りだ!それではツバキ姫よ、悪霊怨霊とはどのようにして発生するものか、知っているかな?」
「えっと、強い恨みや後悔などがある人間が亡くなった場合に、悪霊怨霊となるのでしょうか?」
「ほぅ、惜しいが少し違う。正解は、魔法を使える存在の肉体が死を迎えた時、恨みや後悔のあるなしに関係なく必ず悪霊怨霊となるのだ!」
「ええ!?恨みや後悔などがなくても悪霊怨霊になってしまうのですか!?」
「そうだ!生前に徳の高かった者でも、しかるべき方はで弔われなければ必ずしも悪霊となる。だからこそ亡くなった人間は必ず丁重に葬儀をあげ、しかるべき方法で弔われなければならないのだっ!」
なんとポドカルパスが言うところによると、魔法を使える存在の肉体が死を迎えた時、必ず怨霊悪霊となってしまうそうだ。
ということは、将来身近な人や自分自身さえも怨霊悪霊となってしまう可能性があり、そうなると非常にいたましい。
「ポドカルパス先生、葬儀は教会の司祭様によって執り行われるのですよね?彼らも霊媒師なのですか?」
「いや、司祭は基本的には霊媒師ではない。しかし死者の魂を弔うために特殊な魔法を使う必要があり、その魔法が記された魔導書、つまり聖書を通して魔法を発動しているのだ」
なんとまたしても新事実だ。
司祭たちが持っている本は、死者を弔うための特殊な魔法が記された魔導書なのだという。
僕は以前から司祭が持っている本が魔導書なのではないかと考えていたが、あの魔導書には死者を弔うための魔法が込められていたのだ。
「もちろん司祭の中にも凄腕の魔法士はおり、裏魔法や聖属性魔法を使って現場で鎮魂できるものもいる。しかし現場作業は常に危険を伴うため、通常は司祭が直接野外で悪霊怨霊を祓うのは稀だ。そこで我々霊媒師の存在が必要不可欠となるのだ!」
「そうだったのですね。霊媒師はとても尊いお仕事というわけですね」
「その通りだ!ゼルコバ少年の理解が早くて助かるぞ!」
「それでは、この付近にはきちんと弔われなかった不安な人が悪霊怨霊となって彷徨っているということですか?」
「そうなるなツバキ姫。特定の恨みを持っていない場合には、悪霊と呼ばれるので、今回は悪霊となるだろう。うっかり冒険者が悪霊怨霊と遭遇すると、裏魔法によって弱体化させられ、最悪の場合には死にいたる。そのようにさらなる被害者を産んでしまう可能性があるため、悪霊怨霊の発見報告がギルドに届いたら、我々霊媒師は速やかに現場に向かい、除霊に取りかかるべきとされているのだ!とうっ!」
掛け声と共に飛び上がったポドカルパスは、紫色の美しい野草の近くに着地し、おもむろにその植物を引き抜いた。
トリカブトは崩落した斜面の中腹に生えている。
それは僕が先日樹木を通した【鑑定】により発見したトリカブトという植物で、アルカノイドという強力な毒性を含んだものだ。
「悪霊怨霊がさらに厄介な存在となるのが、このように毒のある宿根草や樹木に取り憑いた場合だ。その場合、悪霊怨霊は毒を含んだ魔法を使ってくるので、要注意だぞ!」
『オンギャァァァ!』
ポドカルパスがトリカブトを引き抜いた瞬間、悍ましい叫び声が森に響き渡り、僕ら霊媒師が除霊すべき存在が姿を現した。
その悪霊は半透明でトリカブトの根に取り憑いており、人型をしている。
植物の根が人型に変形し、泣き叫んでいる様子だ。
先日トリカブトを発見したとき、好奇心で引き抜いてしまわなかったことは幸運であった。
「さぁ、ゼルコバ少年、ツバキ姫、まずは自らの技量でこの悪霊を祓ってみるといい!この悪霊は不幸にも崖崩れに巻き込まれて命を落とした元冒険者で、第五位階魔法まだ使ってくるぞ!ちなみに第五位階の悪霊はBランク相当だ!除霊すると、そこそこ良い金額の謝金とギルド及びイタコ組合のポイントがゲットできる!頑張りたまえ、とうっ!」
ポドカルパスはそう言うと、掛け声と共に風ジャンプで跳躍し、僕らの後ろに着地した。
ポドカルパスの教育スタイルは、教えるのではなく自ら学ぶことを推奨するものだ。
除霊の具体的な方法は一切教えてくれないが、危なくなったら助けてくれるつもりなのだろう。
ここは期待されていると考えて、試行錯誤で悪霊の除霊に挑戦するしかない。
「ツバキさん、やってみよう!」
「はい、あなた!」
いつのまにか僕の呼び方が「あなた」になっており、僕は照れ臭さと嬉しさを感じつつも悪霊と相対したのであった。




