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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第三章 大精霊の試練 〜マンティスアロー男爵領 大魔王復活事件〜
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ーーー


週末、僕とツバキはギルドに来ていた。

今週の平日の放課後は商会設立のための準備で大忙しだったが、無事に国王陛下に魔法のタブレットについて奏上する機会を得ることができそうだ。

しかしブラックパイン侯爵とレッドパイン侯爵もわざわざ遠方からお越しくださるとのことで、謁見は3週間後となった。

ちなみに謁見の翌日は例の野外演習なるキャンプがあり、内容については未だ明らかではない。


「アセビさん、おはようございます」

「ゼルコバ様、ツバキさんおはようございます。本日は依頼を受けて行かれますか?」

「はい、また薬草集めをしようと思いますが、お聞きしたいことがありまして」

「はい、なんでも聞いてください」

「実は僕、霊媒師になりたいと考えていまして、イタコ組合がどこにあるのか教えていただきたいんです」


オソレ山の大精霊イザナミの試練は、イタコ組合に加入しAランク霊媒師になること。

まずはイタコ組合の場所を、知っていそうな人に聞くのが一番早い。


「イタコ組合ですね。それなら当ギルドの真裏の建物となっております。あまりオススメはしませんが」

「え?そんなに近くにあったんですね?誰に聞いても知らないと言われてしまって、困っていたんです」


実は僕はイタコ組合についてサイプレスにも質問していたのだが、サイプレスも知らないというから驚きだ。

イタコ組合なんて知らないし、知りたくもないし、想像するだけで鳥肌が立つという。

サイプレスは本当は何か知っているんじゃないだろうか。


「イタコ組合に用事がある人でなければまず見つけられないでしょうね。入り口がわかりにくいですから」

「ありがとうございます、ちょっと行ってきます!薬草を集めたら持ってきますね!」

「いってらっしゃいませ」


僕たちはギルドを出ると左方向に進み、一番近い路地をさらに左に曲がった。

これは左手の法則と呼ばれる迷路攻略方法で、必ず左手を壁に触れながら移動すれば、いずれ出口に辿り着くというものだ。

それから僕は左手を壁につけたまま移動し続けてイタコ組合らしき建物を探すことにした。

そのまま建物伝いに移動して、ぐるりと一周するとまたしてもギルドの入り口だ。


「……無いね」

「……無いですね」

「見落としがあったのかな?」

「もう一回探してみましょうか」


左手の法則ではイタコ組合を見つけることが出来なかったため、今度は右手の法則発動だ。

僕らは念の為もう一度見落としがないかどうか確認しつつ、建物伝いにぐるりと一周した。

しかし先ほど同様、イタコ組合がどこにあるのかわからない。

位置的にギルドの真裏に当たる場所は民家や店などに囲まれており、入ることが出来ないようになっているようだ。

たぶん入り口が隠蔽されているのだろう。

意識してイタコ組合に辿り着こうとしない限り、普通に歩いていても見つけることは出来ないようだ。


「えっと、どうしますか?」

「イタコ組合はギルドの真裏にあるはずだが、その位置は建物により囲まれているため、公道と接していない。つまり、どこかの建物の中を通過して裏口を通り、中心部分に行く必要があるんだ!」

「なるほど!」


そこで僕らは近くにあったお店に入店し、イタコ組合について確認することにした。


「ごめんください」


しーん


「誰もいませんね?」

「ここは薬草を取り扱っているお店のようだね」


この店では乾燥させた薬草やら怪しい材料などが所狭しと並んでいる。

きっと何かの薬品を作るための材料だろうけど、何とどれを混ぜたら有用な薬品になるのか、僕は全く知らない。


「あ、キズナオリ草があるよ、100gで1000リンだって」


キズナオリ草の買い取り単価は1kgあたり1000リンだ。

それと比べると購入する場合には10倍もの値段で取り引きされているようだ。

乾燥させる手間とか経費とかが乗っているだろうから、ぼったくり価格というわけでもないのだろう、たぶん。


「わぁ、レッドドラゴンの鱗だってよ、ゼルコバ君」

「き、金貨10枚!?本物かな?」


レッドドラゴンと言えば真っ先に思いつくのが、フジ山のレッドドラゴンだ。

レッドドラゴンの鱗を何枚か剥ぎ取っておけば、あっという間に大金持ちになれるようだ。

しかし鱗を無理やり剥ぐと可哀想なので、やめておこう。

必要ないし。


「おい坊や達、商品に触るんじゃないよ。ひやかしなら帰っておくれ」

「あっ、すみません。お店の方ですか?」

「そうだよ、ここの店主さ」

「あの、僕たちイタコ組合を探していて、お店の中を通って裏口から抜けさせてもらえないでしょうか?」

「誰の紹介だい?」

「いえ、紹介というのは無いのですが」

「それなら帰りな、イタコ組合は子供の遊び場じゃないんだよ」


どうやらこの老婆はイタコ組合について情報を知っているようだ。

誰の紹介なのか聞いてきたということは、紹介があれば通してもらえる可能性があるということだ。

店の中を通過して裏口に抜けるというのは、どうやら正解だったらしい。


「僕はどうしても霊媒師にならないといけないんです。どうか一つよろしくお願いします」

「ふーん、じゃあそこのレッドドラゴンの鱗を購入しなよ。そうすれば店の中を通してあげようかねぇ、ヒッヒッヒ」

「なっ!?」


金貨10枚、買えない金額ではない。

僕はこの2年で色々とお金を稼ぎ、総資産は金貨1000枚を超えている。

父アスペラから借りた金貨30枚も利息と共にきっちり返済しており、資金は十分にあると言える。


しかし金貨10枚だ。

1000万リンもの大金だぞ。

それをこんなもののために支払うのか?

いや、こんなものと言ってはレッドドラゴンに失礼だ。

きっと世の中には金貨10枚を支払ってレッドドラゴンの鱗を買い求める人もいるのかもしれない。

しかし僕はいつでもフジ山に行くことが出来、レッドドラゴンの鱗ならタダで手に入れることが出来る。

そんなものに金貨10枚も払っていいのか。


考え方を変えるんだ。

鱗のことは忘れて、通行料が金貨10枚だと考えたらどうか。

それならまだその方が納得できる。

イタコ組合に辿り着くための通行料が金貨10枚なんだ。

大精霊の試練達成のための必要経費なんだ。

よし買おう、このガラクタを!


「おおお、おや、ゼルコバ君とツバキさんではないですか」

「「ポドカルパス先生!?」」

「いいい、一体どうしたのですか、こんなところで」

「ポドカルパス、この坊や達はあんたの知り合いなのかい?」

「ははは、はい。実は教え子でして」

「その子達はイタコ組合に入会して霊媒師になりたいと言ってるが、お前さんが紹介するというならここを通してやってもいい」

「ゼゼゼ、ゼルコバ君は霊媒師になりたいのですか?」

「はい!どうしても霊媒師になりたいです」

「ツツツ、ツバキさんはいかがですか?」

「はい、私もゼルコバ君のパーティメンバーとして、霊媒師になりたいと思います」

「そそそ、そうですか。あんまりおすすめはしませんが、どうしてもというなら私が紹介しましょう。ここでダメだと言ってもゼルコバ君は諦めないでしょうしね」

「やった!ポドカルパス先生ありがとうございます!」

「じゃあ通っていいよ。たまには何か買っていくんだね」


老婆の怪しげな店で僕が欲しいと思ったものは、今のところ一つもなかった。

お菓子とかパンとか置いてくれないだろうか。

食べ物系なら付き合いで購入するのも悪くない。


「わぁ、ここがイタコ組合なんですね……」

「わぁ、なんというか、個性的な場所ですね……」

「こここ、この程度で驚いていてはやっていけませんよ。さぁこちらです」


ポドカルパスに案内されて老婆の店の裏口から外に出ると、僕の予想どおり四方を壁に囲まれた空間が存在した。

その広場は一辺が80m程度の正方形で、北側にイタコ組合と書かれた個性的な建物が建っている。


イタコ組合の入り口には得体の知れない動物の頭蓋骨が飾られており、ニンニクのようなものが吊るされており、お札が所狭しと貼られていて、近づくだけでも呪われそうだ。

広場には不気味な格好をした人や、リオのサンバカーニバルを思わせる衣装を纏った女性などがおり、個性的な雰囲気を加速させている。


「オソレ山の」

「イイイ、イザナミ様」

「超可愛くて」

「めめめ、めちゃ美人」


ポドカルパスと僕たちがイタコ組合の入り口に近づくと、ドクロのお面をつけた男性が門番のように立ち塞がり、先のようなやり取りを交わしたのちに入場が許可された。

暗号なのかもしれない。

今後、イタコ組合に加入したら、先ほどのやり取りを毎回しなければならないのだろうか。


「こここ、こんにちは」

「あら、ポドちゃんじゃないの〜、んもう、ご無沙汰なんだから〜」

「すすす、すみません、新学期が始まったばかりでなかなか時間が取れませんで」

「ポドちゃんにお願いしたいお仕事が色々あるんだからぁ〜。あら、そちらの可愛い子ちゃん達は誰かしらぁん?」


ギルドなら受付嬢が座っているはずのその場所には、リオのサンバカーニバルのような派手な衣装を身につけたオネェが座っていた。

全身を包み込む鍛え抜かれた筋肉。

ビキニアーマーから溢れんばかりの大胸筋。

派手な装飾ともっこりしたブーメランパンツ。

控えめに言ってもトラウマ間違いなしだ。


「こちらは私の教え子のゼルコバ君とツバキさんです。イタコ組合に入会して霊媒師になりたいのだそうで、面倒を見ていただけないでしょうか、ジャカランダさん」

「んもぅ、ポドちゃんの頼みなら仕方がないわねぇん。オネェさんが面倒みて、あ、げ、る、ちゅ!」

「……よ、よろしくお願いします」

「……」


絶句。

サイプレスやアセビが微妙な顔をしていた理由が、今ならわかる。


こうして僕とツバキはイタコ組合に入会し、受付嬢のジャカランダに遭遇してしまったのであった。


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