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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第三章 大精霊の試練 〜マンティスアロー男爵領 大魔王復活事件〜
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翌日、僕が魔法学院に登校すると、多くの学生に取り囲まれた。


「キング!握手して!」

「キング君〜、こっち向いて〜!キャー!」

「キ、キング!これ手作りクッキーです!」

「「「「「キング!キング!キング!キング!」」」」」


「(ぎゃー、なんだこれ!鬱陶し過ぎるぞ!)」


「おーす、ゼルコバ!いや、キング!」

「ニシキ先輩!」

「おいおい、そこはクイーンと呼びたまえよ」


僕が無数の生徒に取り囲まれていると、人垣をかき分けてニシキが現れた。

元はと言えばこの人が原因でコブス襲撃事件が発生したのだ。

許すまじ。


「おーっとぉ!キングとクイーンのツーショットチャンス!これは記事にさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「お、ラティフォリアじゃねぇか。もちろんいいぜ。かっこよく頼む!」

「え?記事ってなんですか?」

「初めまして!私、新聞係のラティフォリアと申します!私の固有魔法【現像】により、見たものやイメージしたものを魔紙に写し出すことができます!」


なんとラティフォリアという女子生徒は、固有魔法【現像】という第六位階魔法を使うことができ、見たものやイメージしたものを魔紙に【現像】できるという。

新聞係なる役職があったとは、知らなかった。


「ちなみに新聞部は勝手に名乗っています!将来はこの魔法を活かした仕事をしようと思っています!ご用命お待ちしていますね」


新聞係は自主的な活動だったようだ。

しかしこの【現像】という魔法、かなり有用なのではないだろうか。


「ラティフォリアさん、そういうことなら一枚どうぞ」

「いきますよ、はい、チーズ!」


異世界でも、写真を撮る時の掛け声はチーズなんだなと僕は思った。


「完成した新聞は2年Fクラス前の掲示板に掲載予定です!」


こうして新キングとクイーンのツーショット写真はラティフォリアにより新聞となり、魔法学院の掲示板に掲載されることになったのであった。


ーーー


やっとの思いで僕がFクラスにたどり着くと、ツバキ以外のFクラスのクラスメイト達が整列して、僕のことを待ち受けていた。

皆緊張している。


「えっと、これは一体どういうことだろう?」

「皆さん、ゼルコバ君に謝罪したいみたいですよ」

「謝罪?なんの?」


ツバキが教えてくれたところによると、どうやらクラスメイト達は僕に謝罪をしたいらしい。

コブスの件であれば、僕は別に彼らを責めるつもりは一切無いのであるが。


「ゼルコバ様、この度はご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした!」

「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」


モモチを筆頭に、クラスメイト達は一斉に僕に謝罪の言葉を述べる。


「みんな、頭を上げてよ。僕は君たちを責めるつもりは最初から無いんだから」

「すみません、この度の事はモモチが全て悪いのです。実は……」


モモチによると、どうやら僕の入学を察知した彼女はクラスメイト達にアジュガローマ防衛戦での僕の活躍を語り聞かせていたらしい。

彼らはいずれも大商会の御曹司や令嬢達で、魔法学院の入学前からお互いに面識があったようだ。


モモチの話を聞いて感動したクラスメイト達は、いずれ僕が魔法学院最強の魔法士になると確信し、僕のことをキングと呼ぶようになったらしい。

しかしキングとは恐ろしい存在というイメージがあり、僕の人となりを知るまではみんな萎縮していたという。

入学初日にクラスの雰囲気が重苦しい感じがしたのは、僕がどんな人間が予想がつかなかったから、といった側面もあったようである。

今ではすっかり誤解は解けて、クラスの雰囲気はかなり明るくなった。


「そうだったんだね。それではみんなの謝罪を受け入れて、許すことにしよう」

「寛大なお心遣いに感謝いたします!」


みんな明らかにほっとした表情を浮かべていた。

納得してくれたようなら何よりである。


「あ、そうだ!みんなは大商会の子供達なんだよね?だったら協力して欲しいことが実はあるんだ」

「なんなりとお申し付けください!」


モモチを筆頭に、皆真剣な表情で僕が何を言い出すのかを待っている。


「実は僕は商会を立ち上げ、チェリーリア王国屈指の大商会とすることを目標としている。もしよければ大商会の一族であるみんなに協力して欲しいんだ」

「ゼルコバ様は商会を立ち上げられるんですか!?」

「チェリーリア王国屈指の大商会、ゴクリ……」

「す、すごい、とてつもないスケールの話だ」

「えっと、どうかな?」

「はいはいはい!モモチは大賛成です!ぜひぜひ協力させてください」


モモチがいつもの元気を取り戻したぞ。

よしよし。


「僕も、できることならなんでも協力させてくだ!」

「ゼルコバ商会長!私のこともぜひ使ってください!」

「僕も!」

「私も!」


わいわいとクラスメイト達が集まってきた。

いいぞ、この流れ。

Fクラスの生徒達は皆平民ではあるが、魔法学院に入学しているという事はかなりハイクラスな人脈だ。

この得難い人材を活用することで、サカイ湾の大精霊エビスの試練達成の足掛かりとしたい。


「みんな、ありがとう!とても嬉しいよ!」


こうした僕たちFクラスの結束は一層高まり、僕は商会長としての大きな一歩を踏み出したのであった。


ーーー


昼休み。

僕はツバキと共に2年生のFクラスに向かった。

【現像】の固有魔法を持つラティフォリアを、僕が新しく作る商会のメンバーとして勧誘するためだ。

僕が考えるビジネスには、彼女の協力がぜひとも必要となる。

ちなみに2年生のクラスは2階にあり、3年生は3階だ。

そのため、1年生である僕たちは普段上級生と顔を合わせる事は稀である。


「ごめんください、ラティフォリア先輩はいらっしゃるでしょうか」

「キング君だ!ラティー、キング君がラティに、とっても大切な用事があるんだって〜」

「キャー!愛の告白かしら!?」


僕が教室の入り口から近くにいた上級生に声をかけると、途端にあらぬ誤解を生むような会話が飛び交う。

隣にいるツバキが僕を白い目で見ているのを感じる。


「あ、なになに?キングじゃないですか!さっそく記事が出来ましたよ!」


ラティフォリアはクラスメイト達に冷やかされながらも、ぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。

心なしか顔が赤いようだ。


「あ、もう出来たんですね!」

「すごい、まるで本物みたいな絵ですね」

「へっへーん、私の魔法の素晴らしさをお分かりいただけたようですね。ま、戦闘には全く役に立たないですけどね」


ラティフォリアが持ってきた新聞を見ると、そこには【現像】により写し出された僕とニシキの挿し絵と共に、キング交代劇が簡潔にまとめられていた。

すこし誇張されている部分もあるが、読みやすくて良い記事である。


「素晴らしい記事ですね。この短時間でこれだけの記事が仕上がるとは思いませんでした」

「ありがとね〜。修正が必要な箇所があったら教えてね。ちょうど、内容を確認してもらおうと思っていたところなんだ」

「ざっと確認しましたが、内容には問題ありません」

「よかった!じゃあさっそく貼り出しちゃおう」


そういうと、ラティフォリアは画鋲を取り出して掲示板に貼り付けた。

その掲示板はラティフォリアの作った記事で埋め尽くされており、比較的古そうな記事を取り外して、空いたスペースに最新の記事を貼り付けた。


「取り外した古い記事はどうされるんですか?」

「いちおうファイリングして保管してあるよ。いつか就職活動する時に見せることもあるかと思ってね。もう100枚くらいはあるかな?」


ラティフォリアの熱意は素晴らしいものだ。

2年生にしてすでに100枚以上の記事を発表しているという。


「しかし魔紙に記事を書いてしまうと、万が一内容に不正確な記載が会った時に大変なことになるのではないでしょうか?」

「うん、それはねー、ちょっと秘密なんだけど、実は魔紙に直接インクが染み込まない限りは、魔紙のペナルティは発生しないんだ。私の【現像】はインクで書いてるわけじゃなくて、魔紙の表面に魔法を貼り付けているだけだから、記事の内容が間違っていたとしてもペナルティは発生しないんだ」


魔紙に文字を書くと、記載内容について魔法的な効果が発揮されてしまう。

そのため、魔紙に記載する内容は精査を重ね、決して誤りがあってはならない。

これは魔紙が魔力を含む魔木から作成されるためであり、そのペナルティは軽いものでは無いという。

しかしラティフォリアの【現像】により書かれた記事は、魔紙の表面に魔法を貼り付けているだけなので、ペナルティの恐怖に追われる事はないそうだ。

これはとても良いことを聞いたぞ。


「ラティフォリア先輩、実は僕から貴女に仕事の依頼をしたいと思っています。もしご興味があればお話だけでも聞いてもらえないでしょうか?」

「え?仕事の?やるやる〜」


ラティフォリアは仕事と聞いてすぐに食いついてきた。

どんな内容かも聞かずに承諾するとは、よほど創作意欲が抑えきれないらしい。


「ありがとうございます。それでは放課後、1年生のFクラスに来てもらえないでしょうか。そこで仕事の内容についてご説明させていただきたいと思います」

「おけなり〜。楽しみにしてるよ、キング!」


こうして仕事依頼についてラティフォリアから快諾を得た僕は、手応えを感じつつ1年生のクラス代表室に向かうことにした。

ショウゲツとシルベストリスとクロマも仲間に引き込んでおかないといけない。


楽しくなってきたぞ!

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