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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第三章 大精霊の試練 〜マンティスアロー男爵領 大魔王復活事件〜
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「ポドカルパス先生、先日の課題を僕なりに考えてきたので見てください」


休み明けの1限は魔法実習だ。

Fクラスの生徒たちは【性質変化】を使った風ジャンプの練習をしている。

風ジャンプとは足の裏に【性質変化】で生み出した風を纏うことで、高くジャンプできるようになる魔法だ。

風を生み出すタイミングにコツがあり、筋力で飛ぼうとしてもうまくいかないことが多い。

初心者は直立したまま、魔法の力のみで50cmほど浮くのを繰り返すことで、風ジャンプに慣れるのがおすすめだ。


「ゼゼゼ、ゼルコバ君、見せてください」

「はい!ファイアーボール」


僕は先日ツバキさんに協力してもらって編み出した真・ファイアーボールを手のひらの上に出現させ、ポドカルパスに見せた。

真・ファイアーボールは普通のファイアーボールに比べて内部が透けて見えるのが特徴で、魔力の粒を緻密に操る必要がある、高度な魔法だ。


「ほほほ、ほう、これは素晴らしい。実に美しい魔法です。ゼルコバ君は素晴らしい才能をお持ちですね。私の用意していた答えとは違いますが、実に興味深い」

「あれ、違ったんですか〜!?」


なんと僕は不正解だった。

真・ファイアーボール、キミのことは決して忘れないぞ!


「先生、もう一度課題を見せてもらえませんか?」

「わわわ、わかりました。では、ファイアーボール」


するとポドカルパスは両手の平にまたしても、一見同じように見える火球を作り出した。

ポドカルパスの火球は真・ファイアーボールのように透けてはいない。

謎だ。


「あ!わかったかも」

「え!?ツバキさんわかったの!?」


一緒にポドカルパスの課題に挑戦していたツバキが、どうやら答えに辿り着いたらしい。

ちなみにツバキは風ジャンプ習得済みなので、僕と一緒にポドカルパスの課題にチャレンジしている。


「はい。この2つのファイアーボールは、温度に差があるようです。一つは高温で触ると火傷しますが、もう一方は手で触れても温かい程度の温度なのではないでしょうか?」

「ツツツ、ツバキさんおめでとう。正解です」

「なんとー!」


どうやらポドカルパスの意図は、温度が違うファイアーボールを作り出すことにあったようだ。


「試しに触ってみてもいいですか?」

「どどど、どうぞ」


僕は恐る恐るポドカルパスが差し出した方のファイアーボールに手を近づけると、確かにほんのり温かい程度の温度しかない。


「ほほほ、炎は熱いもの、という先入観にとらわれず、魔法の可能性を信じてください。さらに温度を下げるとこのようにすることもできますよ、【性質変化】鬼火」


【性質変化】鬼火は、なんと冷たい炎であった。

その色は青みがかっており、熱を発するどころか周囲の熱を奪っているようだ。


「こここ、これは裏魔法といって、本来は研究院で扱う高度な魔法です。霊媒師が除霊などするときに使ったりもしますね」


裏魔法!

魔法には表と裏があったというのか!?

しかしここで霊媒師というキーワードが出てきたのを、僕はしっかりと聞いていた。

オソレ山の大精霊イザナミに課された試練は、イタコ組合に加入し、Aランク霊媒師になることだ。

ポドカルパスは霊媒師について何か情報を持っているようだ。

これはわくわくしてきたぞ!


「先生、鬼火の使い方を教えてくれませんか!?僕は霊媒師になりたいと考えています」

「れれれ、霊媒師になるのはおすすめしませんが、魔法を教えるのは構いませんよ。しかしゼルコバ君は放っておくと突飛な発想で、さらに魔法を飛躍させる素質があります。自分なりに鬼火を再現し、形になったらまた指導してあげましょう」

「そんなー!!」


ポドカルパスから次の課題を与えられてしまった僕は、どのようにしたら鬼火を再現できるのか、そればかり考えていたのであった。


ーーー


そして放課後。

僕とツバキは、特に用事がなくてもクラス代表室に足を運ぶようになっていた。

ショウゲツ、シルベストリス、クロマと放課後の自主訓練などすることも多く、一緒に過ごす時間が増えつつある。


「粗茶でございます」

「あ、ありがとう、クロマ」

「玉露でございます」

「あ、ありがとう、シルベストリス」

「自分の出したお茶を玉露だなんて言う人はいませんわよ」

「玉露の方が美味しそうでしょ!」


またやってるよこの人たち。

無理やりお茶を何杯も飲まされるショウゲツ君の身にもなってあげてほしい。


「お茶をどうぞ」

「ありがとう、ツバキさん」


僕が定位置に着席すると、ツバキが気を利かせて湯呑みにお茶を汲んでくれた。

茶柱が立っており、美味しそうな緑茶だ。


チェリーリア王国では緑茶も紅茶も飲む。

しかし僕は前から、緑茶をティーカップで飲む習慣について若干の違和感を感じていた。

ツバキはマンティスアロー男爵家から持ってきたと思われる湯呑みにお茶を注ぎ、僕に出してくれた。

この癒しのひととき、至福である。


「あらー?ツバキさんはゼルコバ君のために茶器を用意して差し上げたのですわね?」

「え、ええ。マンティスアロー男爵領では緑茶を飲む時は湯呑みを使っているので、その方がいいかなと思いまして」

「ふーん、ツバキさんとお揃いの湯呑みをわざわざ取り寄せてねぇ」

「……」

「なら私も家から最高級の茶器を持ってきてショウゲツ様にお茶を淹れて差し上げますわ!」


ツバキはなぜか急に手のひらでパタパタと顔に風を送り始めた。

僕には計り知れない高度なやり取りが、クロマとツバキの間で交わされたようだ。

そしてシルベストリスは全く見当違いのことを言っている。


とその時、クラス代表室のドアがノックする音が聞こえた。


「はい、今出ます」


ツバキは逃げるようにしてドアに向かい、突然の来訪者を部屋に迎え入れた。


「ごめんくださいぃ、ゼルコバ様はいらっしゃいましゅか」


クラス代表室を訪れたのはイレックス商会の箱入り娘、モモチであった。

しかしモモチはいつもの溌剌とした感じではなく、どこか萎縮しているようだ。


「モモチ、どうしたの?どうぞ入って」

「お、お邪魔しますぅ……」


モモチはクラス代表室に入ると、緊張した様子で部屋の隅の方に視線を向けたまま、もじもじしている。

平民であるモモチがクラス代表室に訪ねてくるなど、緊急事態に違いない。


「あ、あの……ゼルコバ様にお客様がいらっしゃっておりまして、Fクラスにお越しいただけないでしょうか?」

「わかった、すぐに行くよ。ショウゲツ君、申し訳ないけど先に校庭に向かっていてくれないかな?ツバキさんは一緒に来てくれる?」

「わかったよ、ゼルコバ君」

「わかりました、ゼルコバ君」


僕はモモチと共にクラス代表室を出ると、Fクラスに向かって歩き始めた。


「モモチ大丈夫?なんだか様子がおかしいけど」

「は、はいぃ、ワタシは大丈夫ですぅ」


明らかにモモチの様子がおかしい。

何かに怯えているようだ。


僕らがFクラスに向かうと、その原因はすぐにわかった。


「遅いぞ、ゼルコバはまだ来ないのか!?」

「も、申し訳ございません!」


僕とモモチとツバキがFクラスに到着すると、大柄な上級生が教卓の上にあぐらを書いており、クラスメイト達が土下座させられていた。

一体全体、何がどうしたらこのように横暴な振る舞いができるのか理解できない。

第一印象からして、僕はこの上級生のことが好きになれそうになかった。


「あのー、僕がゼルコバです。あなた様はどなたですか?」

「てめぇがゼルコバか。俺はコブス・リリオデンドロン。魔法学院のキングだ!」

「は、はぁ」


横暴な上級生コブスは、自らをキングと名乗った。

確かニシキが教えてくれた話によると、魔法学院で1番強い男がキングを名乗るのだという。


「惚けてんじゃねぇぞ。てめぇがこのゴミどもに自分のことをキングと呼ばせているのはわかってんだぞ!」

「ゼルコバ様すみません、モモチが悪いんでしゅぅぅ……」


僕が陰でキングと呼ばれているのは黒歴史なので、傷口を抉るような真似はやめてもらってもいいですか?

モモチはなぜかさらに萎縮して、僕に謝罪し始めた。

僕は別にモモチを責めるつもりは最初から無い。


「僕がクラスメイト達に自らをキングと呼ばせていることなど決してありません」

「さらに、だ!ニシキが俺のところにわざわざやってきて、俺を元キングと呼びやがった。許せねぇ、ぶちのめしてやる、校庭に出ろ!」

「わかりました……」


どうやら、ニシキ先輩が煽ったおかげでキングが激怒して、Fクラスに襲撃してきたらしい。

ニシキ先輩、このご恩、いつか必ずお返ししますからね!


こうして僕は魔法学院キング決定戦?の舞台に引きずり出されてしまったのであった。




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