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せっかくお湯が沸いたのでコクーンに在庫として収納してあった野菜と塩漬け肉でスープを作り、買ってきたバゲットサンドを食べた僕たちは、冒険者活動を再開することにした。
ツバキはお肉が食べたいらしく、食べられそうな獲物がいたら弓を放って捕獲するつもりとのこと。
「ツバキさんは矢を持ってないけど、どうやって獲物を捕まえるの?」
「魔法の矢を作って射ることができますので、普段は矢を持ち歩かないんです。高いし」
矢は消耗品だが、買うと結構いい値段がする。
経済的にも安く済むし、魔法で作った矢の方が使い勝手がいいのだろう。
「あ、そうだ。私の固有魔法について紹介しておきますね」
「え?いいの?」
「パーティーメンバーなんだから当然です。いざという時に固有魔法について情報共有していないと、うまく連携が取れないと思いますので」
ツバキの言うことももっともなので、僕らは固有魔法についての情報を共有することにした。
「私の第六位階魔法は固有魔法【龍星】です。魔法の矢に【龍星】を発動して射ることで矢は龍となり、星を穿つほどではないですが、高威力の魔法矢を放つことができます。それでは、【龍星】!」
第六位階魔法【龍星】を発動したツバキは、近くにあった適当な大きさの岩に向かって魔法の矢を放った。
矢はまるで生きた龍のように複雑な軌道を描き、一度岩をかすめてから宙返りして岩に激突し、砕いた。
魔法矢とツバキの技術によって、【龍星】は素晴らしい精度と破壊力となっている。
「おおー!これならレッドドラゴンも撃ち落とせそうだね」
「えへへ、ゼルコバ君はお世辞がうまいですね」
なんなら今度案内しようか?
「それじゃあ僕の固有魔法を見せるね。第六位階魔法【樹木魔法】!さらに第七位階魔法【精霊魔法】ドライアド分霊召喚」
すると僕の手のひらから一粒のケヤキの種がこぼれ落ち、着地するなり急激に成長を始めた。
僕はこれを魔木装甲の形に整えると、【精霊魔法】でドライアドの分霊と合体させた。
分霊とは、本体である樹木の精霊ドライアドから分離した子精霊のことで、親となるドライアド本体から独立して行動することができる。
さらに僕とドライアドの指示に従って簡単な命令を実行することができ、例えば「魔物に襲われた人間を見つけたら助けてあげること」と指示を出してあげれば、僕の目が届かないところでも人命救助の役に立つ。
しかも魔木としての特性を備えているため、魔力がなくなりそうになったら地面に根を生やして自動回復可能だ。
魔力容量は約1000で、オークジェネラル程度なら単騎でも勝てる。
このようにして作り出した魔木騎士は、「魔物に襲われた人間を見つけたら助けてあげること」という命令を実行するため、森の奥に向かって行った。
「じゅ、樹木魔法?もしかしてゼルコバ君は勇者様なんですか!?」
「えっと、そう呼ばれることがこの頃増えてきたかもしれない」
「勇者様!すごい!父に無理を言って魔法学院に入学して本当に良かったです!」
「えっと、ツバキさんは勇者について何か知ってるの?」
「はい。かつてマンティスアロー男爵家の初代様は、勇者リョーマ様と一緒に魔王と戦いました。勇者リョーマ様と魔王の戦いは熾烈を極め、遂に現マンティスアロー男爵領にて魔王を討ち滅ぼしました。その時に使用された大魔法の破壊により、大地が陥没して出来たのがマンティスアロー男爵領のリョーマ湾とされています。初代マンティスアロー男爵はマンティスという巨大な獅子にまたがって矢を放つ姿から、家名をマンティスアローとしました。その後、魔王討伐の地であるリョーマ湾を取り囲むように領地を拝領し、約1000人の領民は今も魔王復活を警戒し続けているのです。ついでに、リョーマ湾を囲む斜面が温暖でお茶の栽培に適していたため、マンティスアロー男爵領ではお茶の生産が盛んです。ミカンも美味しいですよ!」
なんとマンティスアロー男爵家は、勇者に協力して魔王を討ち滅ぼした初代様が起源だという。
しかもマンティスアロー男爵家は魔王討伐から何千年も経った今でも、魔王復活を警戒し続けていると言うから驚きだ。
領民1000人を全て戦闘員として換算すると、その軍事力はリョーマイケル伯爵家が動かせる騎士の数に匹敵する。
マンティスという大獅子にまたがって矢を放つ初代マンティスアロー男爵を思うと、ツバキが貴族令嬢なのにCランク冒険者で狩人であるのも納得できる。
僕の中で、戦闘民族マンティスアロー男爵家のイメージが固まりつつあった。
「それじゃあツバキさん、ベル、森に入って、薬草があったら採取し、獲物がいたら捕獲しよう」
「わん!」
「あはは!ベルちゃん、大きな獲物を仕留めましょうね」
大自然に放たれたツバキとベルは大喜びで、今夜のお肉を求めて森に駆けて行った。
ツバキは学校にいる時よりも生き生きとしており、根が野生児なんだなと僕は感心していた。
元気に活動しているツバキはとても可愛らしく、僕は彼女と過ごす時間をとても心地よく感じていたのたった。




