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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第二章 第七位階魔法【精霊魔法】〜王都チェリーリア襲撃事件〜
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その後は歓談もそこそこに出てくる料理をひとしきり食べ進めた。

メイン料理は魔牛のステーキで、僕は異世界に転生して初めて牛肉を食べた。

なんでも、牛などの動物も歳を経るごとに魔力を帯びるようになるため、牛の飼育はかなり難しいらしい。

実家のリョーマイケル伯爵家では、肉といえば鴨肉が主であったのには、そんな理由があったのだ。


高齢で魔力を良く蓄えた魔牛ほど高級であるとされるが、高齢の魔牛は肉が固くなっていくので、特殊な調理技術によって肉を柔らかくする必要があるという。

出された魔牛のステーキはとても柔らかく肉汁たっぷりで、王族の晩餐会に相応しいもてなしだった。


デザートまで食べ終えると、自由時間だ。

大人たちはそれぞれ好きな酒を飲み始め、子供の僕はオレンジジュースを飲んでいる。

当然のようにオレンジも魔木から取れるため高級品で、魔力が回復したり体力が回復したり、滋養強壮に効果がある万能薬だ。


「お祖母様、私と勝負していただけないでしょうか」

「おや、可愛い孫娘や。婆からお手玉を奪い取るのがそんなに楽しいのかい?」

「真剣なんです。よろしくお願いします!」

「なら向こうでやろうかね」

「頑張れ、スリーズ」


スリーズとヤエ公爵はお手玉取りゲームを開始するようである。

二人の対決を酒のツマミにしようということか、陛下とクラマはスリーズの応援に向かうため、テーブルを離れた。

終始存在感を消している父アスペラも、それに続く。


「ちょっといいかな」


ヤエ公爵がいなくなったために空いた席に、ショウゲツが移動して来た。

彼はクラマの息子で、料理を食べながら聞いたところ僕と同い年だという。


「ショウゲツ様、ご挨拶が遅くなりました。どうぞ何なりとおっしゃってください」

「よしてくれ、同い年なんだから。普通に喋ってよ」

「わかったよ。よろしくね、ショウゲツ君」

「よ、よろしく、ゼルコバ君」


ショウゲツは君づけで呼ばれたのが嬉しかったのか、少しテンションが上がったようだった。


「それで、話って何?」

「うん、ゼルコバ君はどっちの学院に入学するつもりなのかなって。貴族学院と、魔法学院があるだろう?入学は2年後だから、参考までに聞いておこうと思って」


王都には、国立の高等学校が2つある。

一つは貴族学院で、政治や経済、国家運営や領地経営に関わることを教育する。

もう一つは魔法学院で、魔法に関わる全般を教えている。

どちらも、入学は12歳からと決められているが、多少入学が遅くなっても良いらしい。


ちなみに貴族学院にも魔法の授業はあるし、魔法学院でも一般教養としての政治や経済、歴史などは学ぶ必要がある。

上級生になるにつれて、貴族学院は政治関係授業が中心になり、魔法学院では魔法関係授業が中心になる。

さらに、高等学校の単位を3〜5年で履修すると、その上には日本でいう大学のような役割を担う、研究院に行くこともできる。

研究院で実績を積んで魔法博士と呼ばれるようになるのも、人生の目標としては悪くない。


僕は本来は貴族学院に行く予定だったのだが、魔法の才能があることが判明したため、魔法学院に行く許しが出ている。

ちなみに女子、例えばキエノなどの貴族令嬢の場合は高等学校に行かずに、そのまま結婚することもある。

初等教育は領内に招聘した家庭教師がつけるので、生涯にわたって学校というものに通ったことが無い人間もそう珍しくない。

ちなみに庶民の場合には、私塾に通うか教会で読み書きを教えてもらうのが主な学びの場だ。

お金持ちの商人の子供であれば王立学園に入学することも可能だが、稀であるという。


「僕は魔法学院に通うつもりだよ。ご存知の通り、魔法が好きだからね」

「そうなんだ。じゃあ俺も魔法学院にしよう」


ショウゲツは僕と一緒の学校が良いようで、魔法学院に入学することに今決めたようであった。


「俺も魔法に興味があったんだけど、父上がなかなか認めてくれなかったんだ。ゼルコバ君と同じ学院に通いたいと言えば、ダメとは言えないと思う」


ショウゲツは元々魔法に興味があったらしいが、親の許可を得るのに苦労していたようだ。

僕に合わせて進路を決めたのではないようなので、それなら大歓迎だ。


「そうなんだ。じゃあ2年後には一緒の学院に通う同級生だね」

「よろしく頼むよ。すでに実力があるゼルコバ君が一緒なら俺も心強い」


僕はすでに第七位階に到達しており、サイプレスやカグヤといった魔法を教えてくれる先生にも恵まれているから、魔法学院に入学する必要は無いかもしれない。

しかし僕は魔法学院には是非とも通いたかった。

将来大人になった時に履歴書の学歴を書く欄が空白なのはあまりにも寂しいし、学院で学ぶ魔法の中には知らない魔法もあるかもしれない。

なんとなくこれから忙しくなりそうなので、出席日数が足りるかどうかだが、卒業するまでに3〜5年かけて良いということなので、なんとかなるだろう。


「ゼルコバ様、私もご挨拶させてください。ロマツ・チェリーブロッサムと申します。どうぞよしなに」

「これは王妃様、若輩者ではございますがどうぞよろしくお願いします」

「あら、ゼルコバ様はショウくんと同い年だというのに、ずいぶんとしっかりなさって。うちの子にも見習って欲しいものです」

「お、お祖母様!友達の前でショウくんと呼ばないでください」

「あら、ショウくんも反抗期なのね。ばーば困っちゃうわ」


ショウゲツは祖母ロマツからショウくんと呼ばれているらしい。

特別な時のイジリ要素として、僕はその名を胸に刻み込んだ。


「ところで、ゼルコバ様のお母様のカマツさんとは、実は遠縁の親戚にあたるのです。いつかご挨拶させていただきたいですわ」

「そうだったのですね!母もきっとロマツ様に覚えていただいていると聞けば、喜ぶでしょう」

「うふふ、私の実家のブラックパイン侯爵家とカマツさんの実家のレッドパイン侯爵家は、チェリーリア王国の東と西の辺境を守る大貴族ですからね。お互い争ったり、婚姻で繋がっていたりと、実は複雑なんですよ」

「そうだったのですね。これはより一層、今後ともよろしくお願いします」


西のレッドパイン侯爵家、東のブラックパイン侯爵家、どちらもチェリーリア王国の辺境を治める大貴族だ。

広大な領土からは様々な特産品が得られ、リョーマイケル伯爵家などはこの二つと比べると小貴族にすぎない。

大貴族には大貴族なりの苦労があるのだろう。

それを考えると、我がリョーマイケル伯爵家は絶妙に自由裁量で動けるので、居心地が良いと言えるかもしれない。


「おお〜、今のは惜しかったぞ、スリーズ!」

「ぐぎぎぎ、全然敵わないです」

「惜しい演出、ね」


向こうのテーブルが盛り上がっている。

スリーズがヤエ公爵におちょくられて悔しがっているようだ。


「ゼルコバ君、ちょっと面白そうだから見に行ってみないかい?」

「ああ、いいよ、ショウゲツ君」


僕らはロマツ王妃にお暇をつげ、苦戦するスリーズを応援しに行くことにした。

スリーズはヤエ公爵と向かい合って座っており、テーブルの上に乗った木製のお皿の上には、お手玉が置かれている。

スリーズはお手玉を取ろうと必死に手を伸ばすが、寸前でヤエが素早く手を伸ばしてお手玉はあっという間に取られてしまう。

僕は気絶する前に【鑑定】で確認した脳内をイメージし、再び神経を流れる魔力を探ってみることにした。


「(【鑑定】)」


すると僕は、先ほどヤエ公爵とお手玉の取り合いをした時には身につけている装備を全て外さなければいけなかったのが、今度は装備有りでも神経の存在を確認できるようになっていた。

さらに、第二位階魔法【形状変化】で再現した神経の模倣コピーも脳内に残っていたので、【鑑定】による脳内の把握はさらに容易くなっている。


「ゼルコバ様にお手本を見せていただいたらどうでしょうか」

「それはいい!姉上から一本取った実力を是非見せて欲しい」


ヨシノと陛下にそう言われては、一肌脱ぐしか無いだろう。


「わかりました。ヤエ公爵と変わらないと思うんですけど」

「私は今回は手を出さないから、気絶するまで疾く動かなくてもいいよ」

「わかりました、それじゃあ行きますよー」


僕は【形状変化】で作り出した神経回路の模倣コピーに魔力を流し、【強化】を使ってスローモーションの世界に突入した。

ゆっくりとした時間が流れる世界で動いているのは、自分ただ一人。

ヤエ公爵も、今回は動かない。

僕はお手玉を難なく手に取り、元の姿勢に戻る。

そして1番肝心なのは、スローモーションの世界を解除するタイミングだ。

これを見誤ると、気絶するまで魔力を消費し続けてしまう。


「ふぅ、解除、と。2回目だからなのか、余裕を持って素早い動きが出来るようになりました」

「もう完全に習得したようだね。【鑑定】で神経を流れる魔力を感知する修行は続けた方がいいよ」

「はい、これから毎晩、瞑想を日課にしようと思います」


「「「「す、すごい……!」」」」


僕の動きを見た観戦者は、皆驚きのあまり絶句していた。

ヤエ公爵の教えてくれた秘訣の通りにやっただけなんだけど、神経を流れる魔力を【鑑定】で把握するのがこの魔法のハードルとなっているようだ。


「さすがは剣聖ゼルコバ殿、目にも止まらぬ早業とはまさにこのことですな」

「我が王国にこのような優秀な魔法士が誕生したこと、余はとても嬉しく思う。アスペラ伯爵、さすがは勇者の血筋ですな」

「もったいなきお言葉にございます」

「……う、う、うわーん!」


なんとスリーズは、大泣きして外へ飛び出して行ってしまった。

ヤエ公爵と僕が使っている素早く動く魔法を習得できないことが、相当悔しかったのだろうか。


「ゼルコバ様、もしあの娘のことを憎からず思っているなら、追いかけて慰めてやっておくれ。あの娘もわかっているのさ、このまま勇者様について行ってもお荷物になるだけだってね」

「そ、それは……」

「こういう時は男ってのはバシッと言ってやるもんだ。しっかり婆を仕留めてから俺に会いに来い、ってね」


ヤエ公爵を仕留める必要は全く無いが、スリーズへのフォローは必要だろう。

僕は皆に見送られ、スリーズを追いかけることにしたのであった。



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