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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第二章 第七位階魔法【精霊魔法】〜王都チェリーリア襲撃事件〜
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めちゃめちゃになってしまった国王陛下との謁見の翌日、僕は父と今後のことについて話し合っていた。


「……というわけで、キエノとサイプレスさんは現在フジ山で修行しており、僕も修行に戻ろうと考えているのです」

「もはや何も言うまい、ゼルコバの思う通りにするが良い。しかし、折をみて修行がひと段落したら、カマツに顔を見せに帰って来なさい。私から2人の無事は伝えてあるが、寂しい思いをしているだろう」


そう言えば母カマツにはしばらく会っていない。

僕はアジュガローマに向けてデーツ団長達と旅立って以来だし、キエノに至ってはツキの強制召喚に巻き込まれてモンテ・アジュガに飛ばされて以来、母カマツには会っていない。


できれば早急に母に会いに行った方がいいな。


僕は頭の中のやることリストの上位に、母に会いに行くこと、と記入した。


「と言うわけですので、王都での用事も済んだことだし、フジ山に帰ろうと思います。褒賞については、父上にお任せいたしますので、受け取っておいていただけないでしょうか」

「よかろう。ところでフジ山にはどのようにして帰るのだ?馬車が必要なら手配することも出来るが……」

「心配には及びません、私はツキと結魂していますので、ツキと念話でやり取りをして、彼女に召喚で呼び出してもらえばすぐに帰れます」

「何を言っているのかさっぱりわからないが、特殊な魔法か何かで移動する手段があると言うことだな」


本当はカグヤのように転移が使えれば自由に自分の好きなところに移動できるのだが、僕はまだ習得していない。


「と言うことで、そろそろ戻ろうかなと思っています。しかし修行の区切りがつき次第母上に顔を見せに帰りますので、ご心配されないようにお伝えください」

「よろしい、それでは新しい複写式魔法契約書を渡すので、日程が決まり次第連絡するように」

「ありがとうございます!」


こういう時、複写式魔法契約書は本当に便利だ。

安いものでないことは知っているが、これに変わる物は今のところ他にない。

結魂は第七位階魔法が使える者同士でしか出来ないから、複写式魔法契約書がなければ直接相手の所まで行くか、もしくは手紙を書いて送るしかない。


「旦那様、失礼いたします。ゼルコバ様宛にお手紙が届きました」


王都リョーマイケル伯爵邸に駐在する執事が、ノックをしてからそのように伝えてきた。

どことなく、ラムズホーンに外見が似ている。


「誰からだろう、見せてくれる?」

「それが、どうしてもゼルコバ様本人に直接手紙を渡したいと言うことで、応接室でお待ちになっております」

「応接室でお待ちになっている?すぐに向かおう」


執事がそう言うからには、応接室でお待ちになっている人物は身分の高い人物である可能性が高い。

僕と父はさっそく一階にある応接室に移動した。


応接室は王都リョーマイケル伯爵邸で最も豪華な部屋だ。

部屋にはケヤキで作られた本革の椅子が置かれ、中央にあるテーブルはケヤキ製の最高級品だ。

これは、リョーマイケル伯爵領が建築用材としてケヤキを生産していることに由来している。

そういえば、ツキの本体である世界樹もケヤキだ。


応接室はガラス張りで庭の様子がよく見えるようになっており、冷気を発生させる魔道具により夏は涼しく、冬は暖炉で薪を燃やして暖をとる。

薪も高級品なので、贅を尽くしたもてなしと言える。


「お待たせいたしました。ゼルコバ・リョーマイケルです」


僕らが応接室に入ると、2人の女性が椅子に腰掛けてお茶を飲んでいる所だった。

2人の足元には大きめの旅行鞄が置いてあり、これからどこかに向かうついでに立ち寄ったのだろうか。


「ゼルコバ様!」

「ゼルコバ殿!」

「なんだ、ヨシノさんとスリーズさんじゃないか。僕に手紙が届いたって聞いたから、誰が来たんだろうって不思議に思っていたんだ」

「ゼルコバ殿、昨日は従伯叔父おじのアーコレードが大変失礼な物言いでせっかくの受勲式が台無しになってしまい、申し訳ありませんでした。チェリーブロッサム王家に連なる者として深くお詫び申し上げます」

「スリーズさんが謝ることじゃないよ。僕は全然気にしていないです。ところで、国王陛下に桜花勲章をいただいたお礼を申し上げるのを忘れてしまっていて、それが気がかりだったんだ」


僕がそう言うと、スリーズが申し訳無さそうにおずおずと手紙を取り出した。

薄い桜色の封筒に入った物で、桜をモチーフとした蝋封がされている。


「そう言うことであればぜひこの招待状をお受け取りください。実は今夜、私の実家で内々の晩餐会を開催しようと考えており、陛下もお忍びで出席される予定なのです」


なんと僕への手紙は晩餐会への招待状だったのだ。

しかも国王陛下が出席されるってことは、かなり格式の高い晩餐会なのではないだろうか。

そういえばスリーズさんて、もしかしてとてつもなく良いお家のお嬢様なのでは?


「えっと、すみません、僕の不勉強で申し訳ないのですが、スリーズさんと国王陛下やアーコレードさんのご関係がわからないので教えていただけないでしょうか?」

「はい。アーコレードは国王陛下であらせられるプルヌス・チェリーブロッサム3世の次男で、長男はクラマと言います」

「クラマさんはアーコレードさんを嗜めていた人ですよね」

「その通りです。さらに、国王陛下の姉である、ヤエ・チェリーブロッサムが当主を務めているのが私の実家のチェリーブロッサム公爵家となり、私はヤエの孫にあたります。しかし世代交代によってゆくゆくは公爵家ではなくなりますので、私はそのうち、単なる騎士爵を持った騎士、となるのです」


なかなか複雑な家庭環境らしいが、とりあえずスリーズがチェリーリア王国でトップクラスの超お嬢様であることがわかった。


「わかりました、僕もその晩餐会に出席させていただきます。本当は今日にでもフジ山に戻ろうかと思っていたのですが、それが明日になったとしても、カグヤ様は許してくださるでしょう」

「よかったぁ。主賓が欠席ではせっかくの晩餐会が寂しいものになる所でしたわ。では私とスリーズも出席、と言うことで、使いの者に伝えておきますね」

「えっと、僕が晩餐会にでないって言ってたら、2人とも出席しないつもりだったの?」

「もちろんです。私の今後の命は全てゼルコバ様に捧げようと決意しましたから」

「私も、どうか荷物持ちで良いので連れて行っていただけないでしょうか」


何か冷や汗が垂れるような感覚が背筋を伝い、僕は2人の足元に置かれた大きめの旅行鞄に視線を落とす。


「ところで、その旅行鞄はどうしたのかな?どこかに旅行にでも行くつもり?」

「はい、私はもう王城に戻るつもりはありませんので、必要な物をまとめて出てきました」

「私も、このままゼルコバ殿が旅に出るのだとしてもついていけるように、荷物をまとめてきました!」


2人は僕についてきてくれるという。

これは願ってもいない幸運だ。

ヨシノは【雷魔法】の使い手で、さらに真の【精霊魔法】も使えるので、現時点でツキに匹敵する戦力だ。

スリーズについての情報はあまりないが、騎士であれば剣術などに精通しているはずなので、もし可能であれば僕に稽古をつけてほしいと思う。

僕の弱点は、僕自身が弱いことだ。

強いのはユリネであり、もりんちゅ1号であり、ドライアドであり、エフェメラルだ。

僕自身の鍛錬と強化は今後、必須であろう。

2人とも性格的にも問題ないし、断る理由は特にない。


「そういうことであれば、ぜひ僕と一緒に来て欲しいと思う。これからよろしくね!」

「受け入れてくださりありがとうございます!」

「やった、やった、やったぞぉぉぉ!!」


ヨシノとスリーズはめちゃくちゃ嬉しそうだった。

そうと決まればフジ山のツキに連絡だ。


『もしもし、ツキ?明日フジ山に帰ろうと思うんだけど、世界樹の化身のヨシノさんと騎士のスリーズさんを連れて行きたいので、カグヤ様に伝えておいてもらえないかな』

『おー、ゼルコバよ。みんなお主のことを気にしておったのじゃ。ヨシノはかつてフジ山の精霊殿で修行していた時にカグヤ様とも面識があるので大丈夫じゃろう。騎士とやら誰なのじゃ?』

『チェリーブロッサム公爵家ご令嬢のスリーズさんだよ。良い人だから、フジ山で一緒に修行したいと思って』

『お主がそういうなら問題なかろう。では明日、念話で連絡をくれたらお主を召喚するから、2人と接触していれば一緒に来られるはずじゃ』

『ありがとう!それじゃあ明日、よろしくね』

『わかったのじゃ。それではまた明日なのじゃ』


ツキに念話で連絡をとり、2人を連れて帰ることをカグヤ様に伝えてもらうことにした。

ツキとヨシノとカグヤは面識があるようだし、スリーズも身元がはっきりしているので問題ないはずだ。


「2人とも、今フジ山にいるツキと念話で連絡を取ったので、一緒に明日フジ山に来てくれないかな。僕とツキは結魂しているから、召喚でフジ山に一瞬で移動することができるんだ」

「まぁ、ツキとお知り合いだったのですね。私も、フジ山の精霊殿で修行中に、お世話になったことがあります」

「フジ山に一瞬で移動できるとは、やはりゼルコバ殿の魔法は学ぶ所が多い……」


ヨシノはツキと面識があったようだ。

さすが、世界樹の化身同士なだけある。


「ところでゼルコバ様、ツキと結魂されているのでしたら、私とも結魂していただけないでしょうか?」

「えっ!」

「ダメ、ですか?」


ヨシノが上目遣いで迫ってくる。

こんなの断れるわけない。

というか、特に断る理由もない。


「結魂すると魂の一部が繋がってしまうらしいけど、もしそれでもよければ、全然大丈夫だよ」

「えっ?それは私と結魂してくださるということですか?」

「うん、というか、僕と結魂して欲しい。ヨシノさん、よろしくお願いします」


ヨシノは桜の花が満開に咲き誇ったような笑顔で、元気よく僕に返事をした。


「それでは、私の世界樹がある、王都の教会に参りましょう。そこで結魂式を挙げたいと思います!」

「わ、わかった。よろしくね」


断っておくが、結魂と結婚は全くの別物である。

僕がヨシノのことを女性としてどうこうという私情は、全く関与していないことをここに誓う。





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