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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第二章 第七位階魔法【精霊魔法】〜王都チェリーリア襲撃事件〜
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ーーー


突如として走り出したユリネを追いかけると、そこには蝙蝠のような羽が生えた男と、2人の女性がいた。

ユリネは異形の男から攻撃を受け、鱗茎を盾状に変化させて防御したようであった。


「あのー、すみませーん。攻撃して来たってことは、あなたは敵ということでよろしいですか?」


念の為、相手が敵かどうか確認する必要がある。

ユリネを不審に思った善意の人が、うっかりして反射的に攻撃してきた可能性があったからだ。


「勇者ゼルコバよ、あの者は悪意ある魔族のようです。敵ですよ」


カグヤが僕にそう教えてくれた。

しかし相手が敵であっても、出来れば僕は戦いたくないのだ。


「そうでしたか。では敵のあなた、僕はあなたと戦いたくないので、この場から立ち去っていただければ幸いです」


僕とカグヤは王都にある分霊殿に転移した後、市街の様子を見て絶句していた。

王都は今まさに魔物による攻撃に晒されており、絶望的な状況に陥っていたのである。

僕とカグヤが戸惑っていると、僕の右腕にしがみついて寝ていたはずのユリネがむくりと目を覚まし、トコトコと走り出したので後を追いかけたのだ。

すると、路地裏で異形の男と2人の女性を発見したのだった。

女性のうち1人は、フジ山でレッドドラゴンに襲われているところを助けてあげた女騎士の人のようであった。


「勇者?ボクちゃんが勇者だというのですかぁ?」


異形の男は猫撫で声で僕に問いかけてきた。


「勇者かどうかはわかりませんが、とりあえずこの場から立ち去ってください。これは最後通告です」

「ははぁ、勇者と聞いて退くわけには行きませんよぉ。死ねぇ」


男は周囲に浮遊させた水晶を操ると、こちらに向けて攻撃を仕掛けて来た。


ガツン!


水晶は僕の魔法障壁に阻まれるが、なおも殺意を滾らせているようである。


「なっ、ワタクシの魔水晶が魔法障壁ごときに阻まれた!?」


僕の魔法障壁は世界樹であるツキをイメージした強固なバリアだ。

攻撃を受けた感触からして、敵の攻撃は僕の魔法障壁を打ち破るほどの威力は無い。


「もういいです。こちらも攻撃しますからね」


僕は異形の男が退く意思がないことを確認すると、懐からケヤキの着果短枝を取り出して地面に放り投げた。


「【樹木魔法】成長促進」


この着果短枝はツキの本体であるケヤキの世界樹に登攀した際に採取したもので、僕の魔力を注いであげれば瞬く間に樹齢100年の魔木へと成長する。

樹木の種子を速やかに成長させる【樹木魔法】を、僕は成長促進と名付けたのだった。


『主、樹木の精霊である私のチカラもお使いください』


僕に宿る樹木の精霊ドライアドが、念話で語りかけてきた。

ありがたい申し出だったので、迷わずドライアドのチカラを借りることにする。


「【精霊魔法】ドライアドお願い!」


メキメキメキ


ケヤキの種子は着地するなり驚異的な速度で成長し、複数の種子から成長した魔木が絡み合って人型を成した。

これは僕も予想外のことであったが、人型は女性の姿となり、ファイティングポーズをとった。


『私は主が生み出したケヤキの魔木に宿りました。それでは参ります』


なんとドライアドは僕が使用した【樹木魔法】を利用して、自身のチカラを魔木に宿したのだ。

これが第七位階魔法【精霊魔法】の効果なのだ。

第七位階魔法の素晴らしい効果に、僕は感動を覚えた。


ドライアドの化身は凄まじい速度で異形の男に迫り、グーで殴りつけた。


「ぎゃあ!」


異形の男の顔面にドライアドの拳が突き刺さり、歯が何本か折れたようだ。

異形の男はたまらず吹き飛び、路地裏の建物にめり込んだ。

建物の所有者の人、ごめんなさい!


『私は奴を迫撃しますので、ゼルコバ様は女性の救護をお願いいたします』

「わかった!」


もうドライアドに全てお任せだ。

彼女の忠言に従って、僕は要救助者の保護を優先することした。


「大丈夫ですか!?」

「私は大丈夫ですが、ヨシノ様は負傷しております」

「ヨシノさん、大丈夫ですか?」

「勇者様にこうして現世でお会いできた今日が、私の人生で最良の吉日です。もう死んでもいい」


死んではいけない!


ヨシノという女性はぐったりとしていて、顔面蒼白であった。

なぜか燐光を纏っているようだったが、それが死ぬ間際の輝きのように見える。

外傷はそれほど酷いようには見えないけれど、内臓に損傷を受けていたら大問題だ。

何か彼女を回復させる手段はないだろうか。


「キュウ」


その時、物欲しそうな顔をしているユリネと目があった。

そういえば花の精霊エフェメラルがユリネに宿っているはずだ。

何か良い手立てはないものか、僕は精霊に聞いてみることにした。


『エフェメラル、どうにかならないだろうか?』

『お任せくださいでち。魔力をいただければ、この街を覆い尽くすほどの癒しの祝福を解放するでち』


癒しの祝福、いいね、採用。

僕はユリネに魔力を流しつつ、再び第七位階魔法を使用することにした。

現在は陽も高く、僕は絶好調であった。


「【精霊魔法】エフェメラルお願い!」


僕は再び、精霊にお願いした。

すると、ユリネは石造の路面を引っ剥がして自らの身体を地面に潜り込ませ、高さ30mにもなる巨大な植物に成長し、大輪の百合の花を咲かせたのであった。


「キュウ!」

『癒しの祝福でち!ケガや瘴気汚染、持病の腰痛まで、みんな元気になーれでち!』


百合の花びらは即座に舞い散り、傷ついている人々に触れた瞬間に癒しの祝福を与え、漂う瘴気を掻き消していった。


人は常に誰かに助けられている。

カグヤに助けられ、ドライアドに助けられ、エフェメラルにも助けられる。

全ての愛情が僕の魔法となって、今まさにこの世界に顕現したのだ。


「うぅ〜、相性が悪いぃ。相性が悪いですねぇ。決してワタクシが弱いわけではないぃ。ふぎゃ!」


僕が女性達を救護している間も、ドライアドの化身は異形の男をタコ殴りにしていた。

たまに水晶のような球体がドライアドに接近するが、裏拳一発で水晶は粉々に砕け散る。

異形の男は観念したのか、ボロボロになった羽をばさりと広げて、上空に浮遊した。


「覚えていなさい、勇者めぇ。次に会った時がお前の命日となるでしょうねぇ」


どうやら異形の男は逃走するつもりのようだが、ドライアドの化身は空を飛ぶことは出来ないため、このままでは敵を逃してしまうことだろう。


「くそっ、逃げるな卑怯者!」

「こんな時に持病の腰痛が無ければヤツを仕留めることが出来たのに。腰痛さえ無ければ……あら?腰が痛くない」


僕としては敵が退いてくれるのであればそれでもいいかなと思っていたところであったが、殺意を滾らせていた人物はこちらにもいたようだ。

女騎士が異形の男を罵り、ヨシノという女性も男を睨んでいる。

ヨシノは敵を睨みつつも、ユリネとエフェメラルの魔法によって回復した自身の体調を確認し、驚いていた。


「持病の腰痛が治った!?これならいける!」


成長したユリネの花びらによる癒しの祝福を受けたヨシノはすくっと立ち上がり、異形の男を睨みつけて魔力を練り始めた。

異形の男の周囲に浮遊する水晶は、もはや一つ残らずドライアドの化身により破壊されていた。


「第七位階魔法【精霊魔法】雷の精霊ボルト召喚!さらに【精霊魔法】纒桜迅雷てんおうじんらい!」


すると、ヨシノの体から黄色い光を放つ精霊が現れ、再び彼女の身体に吸い込まれていった。

ヨシノは身体に雷光を纏い、黄色と桜色のスパークが迸っている。

それはカグヤが仮初に与えた【精霊魔法・体験版】によるものではなく、明らかに真の第七位階魔法であった。

ヨシノが真の第七位階魔法を使用したことに、僕は驚愕していた。


彼女は一体何者なのだろうか。


ヨシノは召喚した雷の精霊と一体化すると雷光を纏いながら、天を穿つような速度で異形の男に突進した。

音速を超えた突進により、空気が引き裂かれるような轟音が王都チェリートピアの上空に響く。


「バカなぁ!貴女の腰は使い物にならなかったはずではぁ」

「この善き日に完治しました。モニリニア、貴殿に次はありません」


ヨシノは異形の男の腹を貫き、雷光が閃いて爆発が起こった。

あんな強烈な一撃を食らっては、おそらく異形の男はひとたまりもないだろう。


王都チェリートピアはその日、突如として現れた巨大な百合の花による癒しの祝福で、多くの騎士たちや市民が一命を取り留めることが出来た。

また、悪臭を放つ黒い霧も、舞い散る花びらによって徐々に浄化されている。

未だ戦闘は続いているものの、状況は確実に好転している。


「勇者様、申し遅れました、世界樹の化身ヨシノと申します。危ないところを助けていただき誠にありがとうございました」


雷のような一撃を放ったヨシノが軽やかに着地すると、優雅なカーテシーで僕に自己紹介をしてくれた。

ヨシノはツキと同じ、世界樹の化身だったのである。

道理で、真の第七位階魔法【精霊魔法】を使用していた訳だ。


「僕の名前はゼルコバ・リョーマイケルです。勇者かどうかはわかりませんけど、ははは」


僕は照れ臭くて頭の裏をぽりぽりとかいた。


「ゼ、ゼルコバ様!私はスリーズ・チェリーブロッサムと申します!二度も助けていただき、感謝の言葉もありません。ぜひ、弟子にしてください!!!」


女騎士の人、スリーズが鼻息荒く僕に弟子入りを申し出た。

僕は修行中なので、弟子を取るつもりはない。


「えっと、スリーズさん、弟子を取るつもりはないんだけど……」

「弟子でなければ下僕で構いません!どうぞ貴方様のお側においでくださいぃ!」

「えええ……」


スリーズはかなり猪突猛進タイプのようだ。

困った僕は、とりあえずスリーズの事は保留にして、残った魔物退治を優先することにした。

早く父に会いに行かなければならないが、人命救助を優先しても致し方ないだろう。

こうしてヨシノとスリーズと合流した僕たちは、そのまま日が暮れるまで人命救助と魔物退治を続けた。

城壁の中にいる魔物は見つけた限り全て討伐したが、そのほとんどがドライアドの活躍によるものだった。


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