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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第二章 第七位階魔法【精霊魔法】〜王都チェリートピア襲撃事件〜
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ーーー


私の名前はスリーズ・チェリーブロッサム。

王家の末席に連なる、第六位階魔法士だ。

自分で言うのもなんだが、わずか18歳にして第七位階まで到達間近という圧倒的な才能を持ち、固有魔法【聖炎】は邪悪な敵をことごとく灰にしてきた。

そのため、傍流ではあるものの王家の一員として扱われており、私が魔法士として活躍している限りは、誰も私を侮ることなどできないだろう。


その日、私は10名の王家直属の近衛騎士団と共にフジ山を訪れていた。

目的は、異常行動をとるようになってしまったレッドドラゴンの調査、もしくは討伐だ。

レッドドラゴンの全身は黒く変色しており、尋常ではない黒い煙を纏っているという。

さっそく私たちは現地に向かうことにしたが、樹齢500年を超える魔木の樹海は思ったよりも険しく、油断すると魔木の巨木の根に串刺しにされる危険もあるため、行軍は慎重を極めた。

太い根がところどころに露出しており、馬での移動は困難であるため、徒歩での行軍である。

固い靴底で魔木の根を痛める可能性があるため、足の踏み場には十分に注意する必要がある。

さらに、魔木を怒らせないために焚き火も厳禁で、作戦中は温かい飲み物や食べ物を口にすることなどできない。

無論、風呂に入ることなど夢のまた夢だ。


5日もかけてようやく森林限界を突破すると、そこにあったのは石と岩の世界であった。

時折り凄まじい突風が吹きつけ、立っていられないほどだ。

フジ山の上部には黒煙が立ち上っていた。

先日、レッドドラゴンが暴走して山に向けてブレスを放ったため、噴火したのだ。

小規模な噴火は現在も継続しているようだ。


そんなとき、例のレッドドラゴンが現れた。


レッドドラゴンの左目は抉られており、大きな傷となっている。

かつて誰かと闘った時の傷跡であろうか、ドラゴンの魔法障壁を貫通してダメージを与えるとは、きっと優れた魔法士だったに違いない。

レッドドラゴンの全身は黒く変色しており、黒い煙のようなものを全身に纏っていた。

口から漏れ出る吐息も、黒い煙のように見える。

レッドドラゴンは獲物を見るような目で我々討伐隊を睥睨すると、咆哮を放つ。

耳が引き裂かれるような轟音に怯んでしまいそうになるが、自らを奮い立たせて悪しきドラゴンに立ち向かわなければならない。


レッドドラゴンは魔法を操る凶暴な魔物である。

その全身は魔法障壁によって護られており、障壁を破壊しなければドラゴンにダメージを与えることなどできない。

また攻撃も強力で、鋭い爪による引っ掻き攻撃、尻尾による薙ぎ払い、噛みつき攻撃、ブレスなどがある。

中でもブレスは強力で、決して正面から受けてはならない。

王家直属の近衛騎士団は盾を構えてレッドドラゴンの攻撃を防いでいるが、凄まじい衝撃に耐えきれず、吹き飛ばされてしまう。

彼らは血筋も良く成績優秀なエリートではあるが、レッドドラゴンのような強敵と戦うのは初めてのことであった。

そのため、第五位階魔法【強化】の使い方が拙く、踏ん張りができていないのだ。


私の他に第六位階魔法が使えるものはこの場にいない。

討伐隊唯一にして最大火力を自負している私は、高密度の火球を生み出してレッドドラゴンに向けて放った。

この火球は私の固有魔法【聖炎】により生み出された強力なもので、一般的なファイアーボールとは比べ物にならない威力を持っている。

【聖炎】による火球、聖火球が炸裂すると、レッドドラゴンは鬱陶しそうにこちらを睨みつけてきた。

残念ながら大したダメージを与えることは出来なかったが、レッドドラゴンは私の魔法を脅威であると感じたらしい。

かつてレッドドラゴンの左眼を抉るほどのダメージを与えたのは、一体どんな魔法士だったのだろうか。

きっと、凄まじい威力の固有魔法を使用したのだろうと予想される。


しかし私にも奥の手がある。


私は腰に下げているミスリル剣を抜刀し、魔力を練ってミスリル剣に込めていった。

ミスリル剣が煌々と輝きを放つ。

聖なる炎を纏った、魔法剣だ。

私は最大火力の一撃を、レッドドラゴンに向けて解き放った。


「刮目せよ、これが【聖炎】の力だ!」


私の魔力容量のほとんど全ての魔力を込めた一撃の威力は凄まじく、爆炎と共に土煙が周囲に立ち込める。

私は冷静に魔力ポーションで魔力を回復させると、レッドドラゴンがどうなったのか確認する。

土煙は徐々に薄れていき、レッドドラゴンが地に伏しているのが見えた。


「(やったか!?)」


と、そのとき、レッドドラゴンは何事もなかったようにのそりと体を起こし、血走った右眼で私を睨みつけた。

レッドドラゴンはなんと、無傷であった。


「(避けられた!?)」


【聖炎】の魔法剣が直撃する瞬間、レッドドラゴンは自ら地面に倒れ込むことで、射線から逃れていたのだ。

爆発によって魔法障壁はある程度削ぐことが出来たかもしれないが、ダメージは入っていないだろう。

レッドドラゴンは再び咆哮を放ち、怒りを露わにしている。

騎士団はどうすればいいかわからず、その場に立ち尽くしている。


すると、急にレッドドラゴンが大きな翼を広げ、黒煙を周囲に撒き散らし始めた。

黒い煙があたりに立ち込め、得体の知れない生物が腐敗したような悪臭が、私の集中力を掻き乱す。


「ゴホッ、ゴホッ、これは一体」


私は咄嗟に顔の周囲を【聖炎】で浄化すると、悪臭はたちどころに消えた。

しかし騎士団の役立たず共は、苦しそうにうずくまっている。

私は【聖炎】を使って、黒煙の浄化を試みた。

【聖炎】を薄く広げ、火力を下げて魔法消費量を節約する。

【聖炎】で払うと黒煙は浄化できるが、すぐに再び黒煙が立ち込めてしまう。

黒煙の濃度が濃すぎるのだ。


ゴゥッ!


「ぐぁぁ!」


誰かの悲鳴が聞こえた。

レッドドラゴンが放ったブレスに、巻き込まれたのだろう。

黒煙により視界が不十分で、かつ私以外の人間は呼吸もままならない。


これは、撤退するしかない。


しかし、いくら役立たずとはいえ、仲間を見捨てて自分だけ逃走するわけにはいかない。

魔法剣で一撃を与え、その隙に離脱するのだ。

私は再び魔力を練り、渾身の一撃をレッドドラゴンに向けて放つ。


ドンッ!


【聖炎】の魔法剣は、衝撃波を伴ってレッドドラゴンの体に直撃したように見えた。


「(やった!)」


いくらレッドドラゴンと言えども、私の渾身の一撃を受けては無傷ではいられないだろう。

そんな期待を込めてレッドドラゴンのダメージを確認すると、レッドドラゴンは前傾姿勢で頭部を前に突き出していた。

なんとレッドドラゴンは、頭部に生えた猛々しい角で、斬撃の軌道を逸らしたのだ。

またしても、レッドドラゴンに大したダメージを与えることは出来なかった。


万事休す。


「(こんなところで終わりなのか)」


最大火力の攻撃を2回も放ったのに、敵はほぼ無傷。

魔力も枯渇寸前で、魔力ポーションの予備は手元にない。

私はあまりの悔しさに涙が込み上げてくるのを感じたが、せめて死ぬ時は真正面からやられてやろうと思い、顔を上げる。

レッドドラゴンは目前に迫り、ニヤリと笑っているように見えた。

か弱い人間の小娘が力及ばず敗れるのを見るのは、さぞ滑稽なことだろう。

私はこれまでの自分の言動を恥じ、もし生き延びることが出来たら修行し直すことを心に誓った。


【聖炎】の威力に慢心し、戦術を練らなかったのが敗北の原因だ。

近衛騎士団がポンコツなのは間違いないが、全ての責はリーダーである自らが負うべきだ。


「(さぁ、殺せ)」


私は逃げることもせず、ミスリル剣を手に持ったまま棒立ちだった。

終わりの時はなかなか訪れない。

なぜだろう、黒い煙で視界が悪いが、レッドドラゴンが上空に向けて警戒している様子が見られる。


ドシンッ!


何か大きな物体が空から落ちてきた。

そんな物音がしたと思えば、この殺伐とした場にそぐわない、のんびりとした少年の声が聞こえたような気がした。


「すみませーん、通りすがりの者ですけれども、勝手にお助けしたいと思いまーす」


突如、突風が吹いて黒煙が霧散すると、私の目の前に現れたのは身長5mを超える緑の巨人であった。

彼は空を飛んできたのだろうか。

この時の私は混乱を極めていたが、次の瞬間さらに想像を絶する光景を目にするとは、思いもよらなかった。



ーーー


「(えっと、迷惑じゃなかったよね?)」


ゼルコバは、もりんちゅ1号に搭乗したまま、騎士たちを守るようにレッドドラゴンの前に着地した。


さて、レッドドラゴンにお仕置きといきましょう。



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