表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第二章 第七位階魔法【精霊魔法】〜王都チェリートピア襲撃事件〜
29/56

028

翌日、今日中に第七位階まで到達することを目標にした僕は、朝早くから行動を開始した。

いちおう、デーツ騎士団長が下山するということなので、世界樹治療のためしばらくモンテ・アジュガに留まる旨を伝えてもらうようにお願いしてある。

キエノも無事であることと、瘴気の浄化のために同じくモンテ・アジュガにしばらく残ってもらうことも伝えてもらうことにする。


「それじゃあ、行ってくるよ」

「ゼルお兄様、お気をつけて」

「油断するんじゃねぇぞ、坊主」

「ゼルコバよ、頑張って第七位階到達に必要な量の魔力を消費してくるのじゃ」


第七位階に到達するためには、第六位階までで使った魔力量の10倍を消費する必要がある。

僕は前回、位階を上げるために、【性質変化】で全身に風を纏って高速飛行したり、竜巻を起こして魔力を無駄遣いして、一日で第六位階まで到達した。


ただ、僕の魔力容量は【極めて少ない】(10しかない)ため、フルパワーで魔力を無駄遣いしまくっても、一日で第七位階まで到達するのは不可能だろう。

これは、僕の魔力の瞬間最大出力が10しかないためだ。

ではどうすれば良いか。

当然、【樹木魔法】を使う。

僕は待機状態にしてあったもりんちゅ1号に搭乗すると、もりんちゅ1号の全身に魔力を行き渡らせて、【性質変化】で風を纏った。

すると、身長5mの巨人がわずかに浮かび上がった。

その場で浮遊する高さを調整して、感触を確かめる。


「(うん、問題なくいける!)」


もりんちゅ1号は、【樹木魔法】でエノキの苗木から育てた僕専用の生きた鎧だ。

僕はこれを、魔木装甲と名付けた。

どうやら僕の【樹木魔法】では、100の魔力消費で樹齢100年程度の魔木を育てることが限界らしく、それ以上魔力を込めても、魔木は大きくならない。

魔力を込める際は、ケヤキの指輪などに溜めた魔力でもって一気に成長させることもできるし、もりんちゅ1号を育てた時のように、徐々に魔力を加えてもよい。


そして、育った魔木は大地に根を下ろしている限り魔力が自動的に回復し、その魔力容量は1000だ。

なので、夜間であっても僕はもりんちゅ1号に搭乗しつつ防御を固めていれば、無敵状態であると言える。

ただし、もりんちゅ1号を移動させようとすると根を引き抜く必要があるので、魔力の自動回復ができなくなってしまうのが注意点だ。

あと、太陽の光を浴び続けているかぎり僕の魔力は無限に回復するため、反則とも言える量の魔力を短時間で消費することができる。


僕はもりんちゅ1号を一旦着地させると、もりんちゅ1号の背中に背負った丸太を構えた。

これは、ツキの許可をもらって世界樹から切除した枯枝の特に堅い材で、じんと呼ばれる白骨化した枝である。

いずれはこの神を加工して大太刀のようにしてもらうつもりであるが、今日は試し撃ちのため、切り出してきた枝のままである。

僕はこれにもりんちゅ1号を通して魔力を込めた。

50秒ほどするともうこれ以上魔力を蓄えることができなくなり、神の枯枝は神々しく光輝いていた。

凄まじい力を内に秘めた神は、その存在感に思わず圧倒されるほどだ。

僕はこれを空中に向けて無造作に振るった。

すると、とてつもない衝撃波を伴って、神気の込められた魔力が神の枯枝から解き放たれ、遠くに見える雲を割った。

戦略兵器級の威力ではないだろうか。


「坊主、それ、地上に向けて撃つんじゃねぇぞ」

「は、はい、とんでもない威力ですね」


僕は冷や汗をかきつつも再び宙に浮かび上がり、風にのせた【鑑定】を最大出力で展開しつつ、飛行を開始した。

とりあえず、瞬間最大出力の1000ギリギリまで魔力を使い続けて、さっさと第七位階に上げてしまおう。

僕は一気に上昇して、雲を突き破った。

かつて日本で飛行機に乗った時に見たようなどこまでも続く雲海を見下ろし、頭上には太陽がさんさんと輝いている。


絶好の魔力無駄遣い日和だ!


最高の気分の僕は、どちらにいこうか一瞬考えた。

とりあえず、太陽に向かって飛ぶのは眩しいため、太陽を背にして西に向かって飛んでみよう。

どこまでも続く美しい景色に時間を忘れて飛び続けた僕は、しばらくして雲海から飛び出している独立峰を発見した。

美しく均整のとれた稜線は、まさしく日本で見た富士山を思わせる。

これがかの有名な、フジ山であろう。


「(絶対僕以外に日本から転生してきた人が過去にいたんだろうな。じゃなきゃ、フジ山なんて名前つけるわけがないし)」


僕は過去の転生者、もしくは転移者の存在を確信しつつ、サイプレスがフジ山に行った時の武勇伝を思い出していた。


「(そういえば、サイプレスさんが前に魔木に絡んだつる植物についた果実の話をしていたな。ちょっと探してみよう)」


フジ山の上部は年中寒冷で、物凄い突風が頻繁に吹きつけている。

そのため、魔木であってもある高さ以上の標高では生育することができず、これは森林限界と呼ばれている。

サイプレスが見つけたという黄金に輝く果実は、おそらく森林限界より低い低山帯にあるのではないかとあたりをつけた僕は、浮遊しながら果実を捜索することにした。

確かにこの辺りは樹齢500年クラスの巨木が多く、その全てが強力な魔木であろうことが伺えた。

ただし、もりんちゅ1号は樹木そのものであるため、魔木の巨木に攻撃されることなく、安全に移動出来ている。

キョロキョロしながら辺りを飛び回ること数分、僕は黄金に輝く果実を発見した。

さっそく手に取って採取してみる。

さて、どんな効果があるのだろう、とりあえず【鑑定】してみよう。


「(どれどれ、ふむ、この果実は黄金アケビという名前のようだ。効果は、食べるとわずかに魔力容量が増える、だって!?)」


黄金アケビ収穫祭、開催決定だ。

僕は時が経つのも忘れて、黄金アケビを採取しては神の枯枝にくくりつけていった。

なんとわずかな時間で、スイカほどの大きさがある黄金アケビを10個以上採取することができた。


アケビを探していると、いつのまにか第七位階まで到達したのか、身体の内部から温かいものが込み上げてくる感覚があった。


ホクホク顔の僕は、嬉しくなってさらに黄金アケビがないか探していると、いつしか森林限界を突破して、石と岩の世界にたどり着いていた。


「(もうけっこう採取できたし、第七位階まで無事に到達できたし、そろそろ帰ろうかな)」


と、その時大きな爆発音と共に視界に入ったのは、全身の鱗が黒く変色した、レッドドラゴンの姿だった。

そのレッドドラゴンは左眼が失われており、大きな傷跡が見られる。

どうやら、かつてサイプレスが戦ったレッドドラゴンのようだ。

しかしまずいことに、誰かがレッドドラゴンに襲撃されているようだ。


「(人が襲われている!なんでこんなところに!?)」


僕は自分のことは棚に上げて、なんでこんな極限環境に人間がいるのだろうと疑問に思った。

よく見ると、レッドドラゴンに襲われている人たちは全員武装しており、どれも高級そうな逸品だ。

もしかしたらレッドドラゴン討伐隊かもしれない。

戦いの邪魔をしては悪いかなと思った僕はしばらく様子を見ることにしたが、レッドドラゴン討伐隊が放つ攻撃はレッドドラゴンにあまりダメージを与えられておらず、レッドドラゴンに押されているように見えた。

レッドドラゴンの体にはうっすらと黒い煙が漂っており、もしかしたら瘴気が関係しているのかもしれない。

瘴気絡みの事件だとするとまずいと思った僕は、レッドドラゴン討伐隊を助けに行くことに決めた。

何か聞かれたら、通りすがりの緑の巨人ということにしておいてもらおう。

僕は黄金アケビを神の枯枝にくくりつけたアケビを背負ったまま、現場に急行したのであった。


ーーー


一方その頃、キエノはサイプレスに頼み込んで魔法の訓練をしていた。

サイプレスは若干困惑気味だったが、魔法を教えるのは大した手間でもないため、しばらくキエノに付き合ってやることにした。


「(いつか絶対に第七位階までたどり着きますわ!)」


キエノはかつてないほどのやる気に満ち溢れていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ