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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第二章 第七位階魔法【精霊魔法】〜王都チェリートピア襲撃事件〜
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オークロードを撃破した僕たちは、そのままモンテ・アジュガに留まっていた。

流石に、アジュガローマ防衛戦からろくに休憩もせずに夜間登山とオークロード戦が続いたため、体力の限界が来たからだ。


「備蓄の食糧しかなく申し訳ありませんが、こちらを食べて体力を回復させてください」

「ありがとうございます、アルバさん」


アルバはモンテ・アジュガの修道女たちをまとめている、修道女長だ。

アルバが持ってきてくれたのは、カチカチに乾燥させた固いパンと、赤い色をした温かい飲み物だった。


「アルバさん、この赤い飲み物は一体なんですか?」

「それはブドウの葉で作ったお茶でございます。モンテ・アジュガではブドウを栽培し、ワインを作っておりますので」


ブドウは高級品である。

なぜなら、ブドウの木は年月を経ると魔木となり、枝を剪定されたり実を採取されるのを嫌がるようになるからだ。

そのため、修道女たちがブドウの木の世話をしているとすると、かなり危険なのではないかと思うのだが。


「ブドウの魔木に攻撃されることはありません。ツキ様が守ってくださいますので」

「そうだったんですね。それならば安全にブドウ栽培ができそうですね」


世界樹の化身、ツキ。

銀髪碧眼の可愛らしい容姿をしており、足が不自由なのか杖をついている。

ツキは瘴気により受けたダメージによりまだ体を動かすことができないのか、キエノに出してもらった聖水を飲みながら横になっている。

簡単な食事を済ませた僕はいくらか体力が戻ってきたため、ツキに挨拶しておくことにした。


「ツキ様、初めまして、ゼルコバ・リョーマイケルと申します。フォレスティナ様より【樹木魔法】と神気の種を授かりました。もしよければ、僕に貴女の診察と治療をさせていただけないでしょうか?」

「おお、これは勇者殿、貴兄のことはフォレスティナ様よりうかがっておる。不甲斐ない姿をお見せしてしまい申し訳ない限りなのじゃが、診察と治療を頼みたい」

「それでは、失礼いたします」


僕はツキの手を取って、第四位階魔法【鑑定】を発動した。

人間?を相手に【鑑定】するのは初めてのことだったが、僕の魔力が世界樹の化身によく馴染んでいく。

悪そうなところを探っていくと、お腹、足、頭にそれぞれ黒い部分があるのがわかった。

お腹のところにある黒い部分は、聖水を飲むことによって少しずつよくなっているようだが、それにしても全身にかかる負荷は大きいようだ。


「ところでツキ様、貴女のお身体は、本体である世界樹の状態を反映しているものと考えてよろしいでしょうか?」


ツキを【鑑定】により診察すると、糸のような魔力的な繋がりを発見した。

おそらく、世界樹本体とツキを接続するための、魔力的な繋がりではないかと思う。


「その通りじゃ、わしの体は本体である世界樹の状態を反映している。わしが回復するためには、世界樹の状態を回復させるしかないのじゃが、これまでは自然治癒しか方法がなかったのじゃ。それでは世界樹を見にいくとしよう、どれ」

「ツキ様、私の肩を掴んでください」

「ありがとう、キエノ」


ツキはよろよろと立ち上がり、キエノの肩を掴んで歩き出した。

冷や汗をかいており、しんどそうだ。


「勇者殿には申し訳ないのだが、わしはもう長くは持たないのかもしれないと思っている。足は何年も前から不自由になったし、最近は頭痛もひどい。瘴気とやらにやられてしまって、かなり体力も奪われたようだ」

「そんなこと言わないでください、ツキ様。きっとゼルお兄様の治療で元気になりますわ」

「そうですよ、僕が必ず貴女を治してみせます」


僕たちはツキを励ましながら、世界樹の近くに移動した。

すると世界樹の根元の土中に、例の瘴気爆弾が燻っているのが見える。


「キエノの聖水と僕の神気を込めた魔力で瘴気とやらはほとんど吹き飛んだはずなんだけど、まだ燻ってるのか、しぶといね」

「わしの第六位階魔法【土魔法】で箱を作って、その中に密封してはどうじゃろうか。おそらく、この爆弾はどこかで調査する必要がありそうじゃし」

「それは良いお考えですわ」


ツキが【土魔法】で箱を作ってくれたので、僕は【念動】を駆使して瘴気爆弾の残滓を地面から回収して土の箱に入れた。

爆弾を回収したあとの地面は黒く変色しており、土壌汚染が心配だ。


「キエノは聖なる水差しで聖水を生み出して、この穴の中に入れてもらいたいな。穴の中の土壌が浄化できるまで、かなりの量が必要かもしれない」

「お任せくださいですわ」

「さて、我々は世界樹に向かいましょう」

「うむ、よろしくお願いする」


僕は世界樹の幹に手を当てると、【鑑定】を使いつつ悪いところを探っていった。

世界樹は幹周およそ20mの巨大なケヤキの魔木であった。

樹齢は1000年を超えており、樹高も40m以上ある。

しかしところどころに枯枝が見られ、なんらかの異常をきたしているようだ。


「とりあえず、【鑑定】で樹体を確認しつつ、僕の魔力を流していきます。なにか異変があれば教えてください。それでは治療を開始します」

「うむ、なんとなくじんわりと暖かくなってきたようじゃ。とても気持ちいいマッサージを受けている気分じゃ」


すでに日は登っており、僕の魔力は無限に回復する。

そのため、遠慮なく魔力を流していくと、ツキの顔色がかなり良くなっていった。


「おお、とても心地よいのじゃ」

「それはよかった。お腹の部分の黒いものはほとんど無くなりましたね」


僕は右手で世界樹を【鑑定】し、左手でツキを【鑑定】しながら、どんどん魔力を流していった。

わずかにではあるが、僕の魔力は神気を含んでいるため、瘴気にやられた部分を浄化することができるようだ。

さらに頭の部分の黒いものについては、大枝の腐朽部分を木に登って直接確認する必要がある。


「ツキ様、頭痛がするとのこのですが、世界樹の大枝が腐朽している可能性があります。世界樹に登って、処置をしても良いでしょうか?」

「もちろんじゃ、よろしく頼む」


僕はツキに許可をとると、世界樹に登る方法を考えることにした。

風ジャンプを応用すれば、空中を移動することは可能である。

しかし樹木に取りついて体を固定するには、別の方法で木登りする必要がありそうだ。

僕は第二位階魔法【形状変化】で魔力を糸のように変化させ、それを編み込んでいくイメージで一本のロープを作り出した。

さらに第三位階魔法【念動】により、魔力ロープを動かして世界樹の枝にかけ、魔力ロープを自分の腰に接続した。


「よし、これで魔力ロープによるムービング・ロープシステム完成だ!」


前世ではツリークライミングという技術で木登りしていたこともあり、木登りは大得意だ。

ムービング・ロープシステムとは、木の股などにロープをかけて、ハーネスとロープを固定して登っていく方法だ。

作業者の動きに合わせてロープが動くのが特徴的で、ダブル・ロープシステムとも呼ばれている。

本当はシットハーネスと呼ばれるハーネスにロープを固定するのだが、今は魔力を【形状変化】でハーネスのように変化させ、魔力ロープを操ることにした。

木登りを開始しておよそ5分、軽々と世界樹の頂上に到着した僕は、さっそく枝の腐朽を確認することにした。


「ふむ、樹液が出ている部分があるな。ここが怪しい」


世界樹の枝からは樹液の滲出が見られた。

さらに、フラスと呼ばれる木屑が点々と見られる。

これは、枝の中にカミキリムシの幼虫がいて、枝の内部を食害している時に見られるものだ。

幼虫は樹液で水没しないように、常に斜め上に向かって坑道を掘り進む習性がある。

それを考えつつ、【樹木魔法】を応用してカミキリムシの幼虫を枝の中から摘出していく。

世界樹全体を確認すると、同じような箇所が100箇所以上見られるようだ。

一箇所ずつ丁寧にカミキリムシの幼虫を掘り起こしてから、【樹木魔法】で孔を塞ぐ。

魔法がなければ孔を塞ぐことはできず、せいぜい殺菌剤などを塗布するしかできないので、魔法はとても便利だ。

僕は無限に回復する魔力でもって、疲れることなくカミキリムシの幼虫をどんどん駆除しては腰袋に入れていった。

腰袋の中は幼虫だらけで、かなりグロテスクな感じになっている。

そろそろカミキリムシも退治できたようなので、一回地上に降りることにした。


「頭痛がかなり良くなったのじゃが、上の様子はどうじゃった?」

「はい、たくさん獲れましたよ!」

「お兄様、こっ、これは……」

「ひぇぇぇぇ!」


腰袋いっぱいのカミキリムシ幼虫を見たツキは、驚愕しつつドン引きして、僕から距離をとった。


「さっきまでコイツらがわしの身体を齧っていたと?」

「そう言うことですね」

「あばばばばば」

「慣れると意外と可愛いかもしれませんね?」

「それは絶対あり得ないのじゃ!」


地域によってはカミキリムシ幼虫を食べることもあるようだけど、さすがにこれを食べる勇気は僕には無かった。


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