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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第一章 勇者の旅立ち 〜アジュガローマ、モンテ・アジュガ防衛戦〜
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オークは二足歩行する豚顔の魔物で、通常は森の中で小規模な群れを作って生活している。

食性は雑食で、ドングリなどの落ちている木の実や土の中にいるミミズなどの生物、草やキノコなど、食べられるものはなんでも口に入れ、動物の死骸なども時折り口にする。


柿やリンゴなどの果実は大好物だが、魔木から盗もうとすると枝で殴られて反撃されるので、地面に落ちたものをよく食べる。

自ら狩りをして他の動物を捕まえるようなことはなく、不器用で知能も低いので、火を使ったり道具を使うこともない。

服も着ないが、全身は短い体毛で覆われているので、冬でも元気だ。


そんなオークだが、何かの偶然により人間の屍肉を食べるなどすると、凶暴になり殺意を高める。

殺意が高まったオークは次第に積極的に人間を襲うようになり、10人を殺して食べる頃にはオークジェネラルと呼ばれるようになる。


知恵がつき、人間から奪った武器や防具を装備し、言葉が話せるようになり、魔力を帯びて第五位階魔法【強化】まで使えるようになると、甚大な被害をもたらす凶悪な魔物として大暴れする。

オークジェネラルは本能の赴くままに殺戮を繰り返すために、すぐに討伐隊が派遣され、魔法士がやってきて駆除される。


しかし中には狡猾な個体もおり、理性を働かせて、逃げ潜みつつ力を高めていくことがある。

その後、何年もかけてさらに100人以上の人間を襲って喰うと、オークジェネラルはオークロードと呼ばれるようになる。

第六位階魔法まで使えるようになり、流暢に言葉を操り、オークを使役して王様のように振る舞うこともある。


アジュガローマを襲撃していたオークジェネラルは、本能のままに人間を殺戮しつつも、狡猾に生き延びてきた個体であった。

すでに50人以上を殺しており、このままいけばあと数年でオークロードに届くだろう。

殺意は高く、好物は人間の子供だ。

バリスタで攻撃されて激昂していたオークジェネラルは、馬車から飛び降りてきたのが人間の子供だったため、涎をたらして獰猛に笑った。

丸太のような巨腕から繰り出されるのは、人間から奪った鋼鉄製の剣による一撃だ。

ろくに手入れもしていないため、剣は血と錆に汚れていたが、切れ味は鋭い。

殺して、喰う。

今までもそうしてきたし、これからもそうする。


オークジェネラルは本能のままに接近して剣を振り下ろすが、子供は全く怯えることなく、むしろ立ち向かってきた。

次の瞬間、オークジェネラルの攻撃は、何か固いものに当たって弾き返されてしまった。

子供が盾を構えている。

こんな小さな人間が、自分の攻撃を弾き返したとでも言うのであろうか。

そんなバカな。


自らのプライドを傷つけられたような憤りを感じたオークジェネラルは、二度三度と攻撃を加えるが、やはり全て弾き返されてしまう。

なぜ子供が生きているのか、全く理解できない。

オークジェネラルは、生まれて初めて、焦りという感情を覚えつつあった。


ーーー


「坊主はオークジェネラルに勝てる。なぜかと言うと、すでに同等の強敵の攻撃を受けて、生き延びているからだ」

「同等の強敵って……?」

「おいおい、ライカンスロープ、狼人間に攻撃された時に、ユリネを使って攻撃を防いだだろう。ライカンスロープはオークジェネラルと同格の魔物だし、素早さはライカンスロープの方が上だぜ。腕力はオークジェネラルの方が上だがな」


つい何日か前に狼人間に殺されかけたことを思い出した。

そうか、狼人間、ライカンスロープはそんなに強力な魔物だったんだ。


「だから、間違いなく勝てる。以前に比べて坊主は魔法を使いこなしているし、位階が上がったので魔法の威力も上がっている。昼間だから魔力もすぐに回復するし、奥の手の固有魔法もある。万が一に備えて俺が後ろで見ていてやるから、安心して戦うといい」

「はいっ!それではさっそく行ってきます!」


サイプレスの言葉に勇気が出た僕は、風ジャンプで馬車から飛び出すと、オークジェネラルの前に立ち塞がった。

オークジェネラルはものすごい勢いで突進してくるが、動きは単純で、速さではライカンスロープに劣る。

錆びた剣が振り下ろされる瞬間、僕はユリネシールドを展開して、オークジェネラルの攻撃を正面から受けた。

ユリネシールドはとても堅く、【強化】によりさらに強度を増しており、両足も【強化】しているので吹き飛ばされることもない。

今の僕は【強化】を全身に使っていた。

魔力はいくらでも使えるので魔力切れの心配はないのだが、魔力容量のギリギリの出力で常に魔法を使い続けているため、他の魔法を使う余裕がなかった。

それでも、オークジェネラルの攻撃は確実に防ぐことが出来ているため、冷静にチャンスを探る。


「(魔力の操作が上手くできれば、全身に【強化】を使わなくても敵の攻撃を防ぐことが出来るだろう)」


そう思った僕は、全身に対して使い続けていた【強化】を、少しずつ節約していった。

オークジェネラルの攻撃は確かに強力だが、剣術を知らない素人が棒切れを振り回しているような太刀筋だったため、受けること自体はそれほど難しくない。


「ブヒィィィ!シネ!」


オークジェネラルは【強化】を発動して攻撃してきた。

子供である僕にことごとく攻撃を防がれて、焦っているようにも見える。

しばらくそのまま耐えていると、オークジェネラルは【強化】を使うのをやめた。

オークジェネラルも僕と同じように全身に対して【強化】を使っていたため、燃費が悪く、魔力がなくなってしまったのだ。

魔力を完全に使い切ってしまうと動けなくなるので、その前に【強化】を使うのをやめたのだろう。


「(これはチャンスだ。焦らず、少しずつ攻撃に転じていこう)」


僕はユリネシールドでオークジェネラルの攻撃を防ぎつつ、左手にはめたケヤキの指輪を通して魔法を発動した。

ファイアーボール、最も初歩的な攻撃魔法だが、第一位階魔法【性質変化】、第二位階魔法【形状変化】、第三位階魔法【念動】の複合魔法なので、けっこう扱いは難しい。

真っ直ぐに飛んでいったファイアーボールは、運良くオークジェネラルの体にぶつかって、そのまま爆ぜた。


「ブー!クソガァ!」


防いで、撃つ。防いで、撃つ。

なんの工夫もない地味な戦法だが、今はとにかくこれを繰り返す。

ファイアーボールによるダメージは徐々に蓄積していっているようだ。

オークジェネラルの足は、だんだんふらついてきている。

本当は一撃でオークジェネラルを倒すだけの高威力な魔法を華麗に放ちたいところだけど、今の僕に出来る精一杯は、防いで、撃つ、の繰り返しのみだ。

オークジェネラルが振るう剣の威力はいつしか弱まり、気がつくと僕はオークジェネラルにかなり接近していた。

3m近い巨躯を見上げるが、手が届かないので胴体を殴って攻撃することもできない。


初心に戻ってファイアーボール。

そういえば、ファイアーボールの色を変えると、火力が少し上がったような気がする。

僕は蒼いファイアーボールを出し、撃つ。

オークジェネラルはもはや避ける気力もないのか、まともに受けて、燃え上がった。

蒼いファイアーボールの火力は、通常のファイアーボールと比べて格段に強く、オークジェネラルの上半身をほとんど炭化させてしまうほどであった。

使う魔力は、通常ファイアーボールも蒼いファイアーボールも同じだが、威力は大きく違う。


「(ひえっ、すごい火力だ……)」


とうとうオークジェネラルは両膝を地面につき、そのまま倒れて動かなくなった。


「やったか!?」

「不用意に近づくな、死んだふりかもしれん。確実にトドメをさせ」


サイプレスに忠告された僕は、蒼いファイアーボールを撃ち続け、ついにはオークジェネラルは灰になってしまったのだった。


僕の初めての実戦はこうして勝利に終わったが、内容には課題が残る結果となった。



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