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落ちこぼれ魔法士は【樹木魔法】で世界を救う!?  作者: はりまぐろ
第一章 勇者の旅立ち 〜アジュガローマ、モンテ・アジュガ防衛戦〜
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018

僕たちは接近するオーク奇襲部隊に向けて、どんどん矢を放った。

一撃一殺で確実にオークを仕留めるとこができ、オーク奇襲部隊は全て頭部を失って壊滅した。


「全部倒したみたいだな。だがオークジェネラルの姿が見えない。警戒を怠るなよ、坊主」


すでに夜明けが近いため、闇夜はうっすらと明るくなりつつある。

太陽が出てしまえば僕の魔力が回復するようになるので、さらにこちらが有利になることだろう。


「騎士団と戦っているオークが撤退し始めたな。やはりどこかに指示役がいるはずだが、掴みきれん。いや、待てよ、最悪の事態を想定すると……」


サイプレスは不穏な言葉をぶつぶつと呟いていたので、僕たちはデーツ騎士団長と合流して作戦会議をすることにした。

サイプレスは眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。


「サイプレスさん、何か心当たりがあるなら教えていただけないでしょうか?」

「うーん、心当たりはあるんだけど言いたくないというかなんというか……」


「ゼルコバ様!サイプレス殿!オークの襲撃事件についてご報告させていただきたいと思います!」


デーツが引き上げてきて、僕らと合流した。

デーツからオーク達が撤退したことを聞き、僕たちはオークの奇襲部隊をバリスタで撃破したことを話した。


「いやはや奥方様の馬車には強力なバリスタが積んであると聞いていましたが、オークを一撃で仕留めるとは、素晴らしい威力ですな。オークの死体は後で回収させておきましょう」

「オークはアジュガローマ方面に撤退していったようですが、どこかに根城でもあるのでしょうか?」

「あー、それなんだが、もしかするとオーク達は誰かに指示を受けて撤退していった可能性がある。だとすると、アジュガローマが攻撃を受けている可能性があるな」


サイプレスは暗い表情でそう言った。


「なんの、たかがオークごとき、何千集まろうともアジュガローマの城壁は破れますまい」


アジュガローマは、城塞都市リョーマほどではないにしても、強固な城壁が街をぐるりと囲んでいる。

いくらオークが怪力だとしても、石積みの城壁を体当たりで破壊できるわけもない。

それに、オークは知能があまり高くないので、それほど大挙して行動することはないはずだろうとデーツは言う。

サイプレスは気が進まない様子だったが、しぶしぶと話を進めた。


「オークロードが率いている場合には状況が変わってくる。オークロードは魔法士並みに魔法を操るから、もしかすると撤退したオークに何らかの魔法で指示を出した可能性がある。オークロードは第六位階魔法が使えるから、固有魔法の効果によっては城壁を突破される可能性がある。さらに、オークジェネラルが従っていた場合、第五位階魔法【強化】を使うし、人間から奪った武器を使用することもあるから、さらにやっかいだぜ」

「オークロード!そんな化け物がなぜこんなところに現れるというのでしょうか。サイプレス殿の予想が当たっているとすれば、アジュガローマの街は非常に厳しい状況に陥っているやもしれません」

「応援を呼んでくるだけの時間的猶予があればいいんだがな……」


その時、野営地に駆け込んできた者がいた。

身につけている装備はリョーマイケル伯爵家騎士団のものだったが、全身ボロボロで泥や血で汚れている。


「ご報告します!私はリョーマイケル伯爵家騎士団アジュガローマ支部からの伝令の者です!アジュガローマの街がオークの軍勢に攻撃されております。オークの数はおよそ1000体!魔法を使うオークが存在し、アジュガローマは陥落の危機にあります!アジュガローマの城壁の一部が、オークの魔法により崩れかけております。至急、救援を!」


恐れていた事態が現実のものとなってしまった。

アジュガローマの街から命からがら野営地まで逃げて来た伝令の言葉は疑いようもなく、一刻を争う状況だ。


「坊主、どうする?逃げるか」

「ゼルコバ様、いえ、隊長。この事態は我々で対処できる範囲を大きく超えています。一度城塞都市リョーマに引き返し、騎士達を引き連れてから向かう必要があります」


サイプレスとデーツは、共に手に負えない事態だと判断したようだ。

しかし、城塞都市リョーマに引き返して1日、そしてアジュガローマまでは馬車で2日かかる。救援を呼んでから、どんなに急いでも3日の時間が必要となる。

救援に3日もかかってしまうと、最悪の場合にはアジュガローマ陥落もあり得る。


「城塞都市リョーマに引き返してから戻ってくると、救援に最短でも3日はかかってしまう。その場合、アジュガローマの陥落は避けることができない。城塞都市リョーマへの連絡は誰かに任せるとして、僕たちはアジュガローマの救援に向かおう!」


みんなが真剣な眼で僕を見つめていた。

重たい沈黙が漂う。

すると、御用商人のイレックスがやってきて、何か言いたそうな目でこちらを見てきたので、意見を聞いてみることにする。


「イレックスさん、何かこの事態を打開する妙案があれば教えてください」

「はっ!差し出がましくもご提案させてください。要塞都市リョーマにおられるご領主様への連絡につきまして、今日中にお伝え出来る手段がございます」

「本当ですか!?ぜひともその方法を教えてください!」

「はっ!それではこちらの魔紙を使います」

「これは一体?」

「これは複写式魔法契約書と呼ばれるもので、この魔紙に書いた内容は対となる魔紙に複写される仕組みとなっているのです。この魔紙と対となる魔紙は、城塞都市リョーマで待機している番頭に持たせてありますので、伝令殿の話をこの魔紙に記入するだけで、連絡が可能となります」


複写式魔法契約書、こんな便利な物があったとは知らなかった。

これならば、どんなに離れたところからでも即時の連絡が可能となる。

緊急用の連絡手段として、最高に適している。


「ふむふむ、番頭から返事が返って来ました。間違いなくご領主様に手紙の内容をお伝えする、とあります。これでわざわざ城塞都市リョーマに戻らずとも、2日後には増援の騎士団が到着することでしょう」

「ありがとうございます、イレックスさん。かかった経費については、後で僕から父に報告しておきます!」

「お気になさらずとも、一市民として当然のことをしたまででございます。またしても商売のタネを一つ教えてしまいましたな、はっはっは!」


イレックスは茶化しながらそう言った。

増援の要請の件が片付いたところで、アジュガローマが援軍の到着まで待ちこたえられるようにしなければならない。

僕は伝令の人に、詳しい状況を確認することにした。


「確認だけど、アジュガローマの城壁が崩れかけている、と言うのは一箇所なのかな?」

「はっ!オーク軍の親玉と見られるオークが城壁に接近し、何らかの魔法を発動したところ、城壁の約30mほどの範囲の石積みが、強度を失いボロボロになってしまったのです。その後、オーク軍の親玉は撤退しましたが、オーク軍による猛攻が開始されたため、仕方なく土嚢を積み上げて補強しながら戦っております。ボロボロになってしまった石積みは、オークの突進に耐えることはできず、突破されるのは時間の問題かと」

「城壁の石積みをボロボロにしたのは、おそらくオークロードの固有魔法だな。その後、魔力切れで撤退したとすると、連発できるわけではないようだ」


僕は伝令の言葉を聞いて、崩れそうになっている城壁を補修する方法を思いついた。

そして、作戦目標を城壁の修復として定めることとする。


「ここで整理したいんだけど、僕らの目標はアジュガローマの城壁を修復し、騎士団の増援がくるまでの時間を稼ぐこととしたいと思う。デーツさん、サイプレスさん、どうかな?」

「それならば私は賛成ですぞ!ただし城壁を修復する方法について、団長殿には何かお考えがありますでしょうか?」

「俺も賛成だ。だがオークロードとはまともにぶつからない方がいいな」


デーツとサイプレスも、条件付きではあるが賛成してくれた。

あとは城壁を補修する方法について、みんなに作戦を伝える。


「僕の第六位階魔法【樹木魔法】を使えば、戦闘中でも即座に城壁の補強ができるはずです。具体的な作戦内容は、まずはこれを用意して……」


僕が話す作戦内容に、最初はみんな信じられないと言った表情をしていたが、最終的にはやるしかないと腹を括ったようだ。

準備をし、大急ぎでアジュガローマに向かうことにする。

その前にモモチに声をかけ、一番重要な物を仕入れておこう。


「モモチ、ケヤキの指輪をアジュガローマ奪還作戦で使いたいんだけど、10個ほど買い取らせてくれないかな?」


そう言って僕はモモチに10万リンを渡す。


「お金はいりません。どうぞお好きなだけ持っていってください」

「そうはいかないよ。それにこのお金は、昨日指輪に魔力を込めたお礼としてもらった謝金で支払っているから、利益はしっかりと出ている。モモチに投資ってことで、受け取ってもらえないかな?」


それを聞いたモモチは、驚いた表情で固まってしまった。

なぜかモモチ顔は真っ赤になっている。


「投資だなんて、そんな、ゼルコバ様は情熱的ですのね」

「えっと、投資だから、ちゃんと後で儲けが出たら利益を分配してくれる?」


何となく誤解を生んでいるような気がするのだが、投資って情熱的な要素があっただろうか。


「そのためにも、ご無事でお戻りになられてくださいまし」

「もちろんだ、それでは行ってきます!」


僕たちはアジュガローマの救援に向けて出発した。

どうか僕らが到着するまで持ち堪えてくれ、僕はそう祈り続けた。


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