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第66話 需要と供給

私、イラリア、プラシドさん、そしてグリッロさんで作戦を練る。

ケメルさんには魔王城周辺の治安と内政を担当してもらうので、今回は外した。

ルーテリアさんに関してはここにいないのだから、もちろん入っていない。


「獣人族を攻撃するにあたって、最初に決めるべきは肉食系、草食系どちらを攻めるかです」


私がそう言うとグリッロさんが即答する。


「草食系からでしょうね」


「グリッロさんもそう思いますか」


「も、ということは師匠も同じ意見ってことですか?」


「はい。肉食系は攻めに行かなくても、あちらから攻撃してきます。しかし、草食系の獣人族は穏健派と頭脳派が多いのでここを壊滅させれば、脳筋の突撃バカしか残らないので後始末が楽です」


「肉食系獣人は弱いんですか?」


「身体能力は強いですよ? でも、数の力には勝てません。休みなく動き続けることが出来る生物は私を除けばいませんからね」


「師匠は動けるんですか?」


「私は超越してますからね」


「はあ、意味分かんないですね」


「そんなことはどうでもいいので、話を進めましょう。プラシドさんの意見はどうですか?」


「同じく賛成ですな。肉食獣の肉は食えたもんじゃない。需要と言う物を理解していただきたいものです」


「師匠、プラシドさんだけ論点がずれてませんか?」


「そうですか? 至極まっとうな意見だったと思うのですが……。何か異常がありましたかね、グリッロさん?」


「教祖様と同じく、分からないですね」


「マジですか?」


「では、草食系を攻撃するということで決定します。次に、どの種族を攻めるかですね」


「イヌ族はどうですか?」


グリッロさんがそう提案するとプラシドさんが激昂した。


「話にならん! お客様の気持ちを考えろ! そんなマイナーな肉に需要があるか? 食いたいか? なわけないだろ!」


「すみません。配慮が足りませんでした」


「グリッロさん気を付けてください。あと、プラシドさん話し合いに冷静さは必須です。感情を高ぶらせてもいいことはありませんよ」


「申し訳ありません、教祖様。以後気を付けます」


「双方反省してください」


「師匠、この場で反省すべきは師匠とプラシドさんだと思うのですが……」


プラシドさんがカバンに手をかける。


「プラシドさん、ダメです。イラリアも気を付けないと店頭への道のりが近づきますよ?」


「やめてください。私を解体しようとしないでください」


「はい。私もそれだけは避けたいです。不謹慎なブラックコメディーが不謹慎なスプラッタホラーになるのだけは回避したいですからね」


「心配する部分がおかしいと思います」


「それで、私としてはウサギ族を攻めたいですね」


「師匠、さっきから気になっていたんですけど、草食系の獣人ってどんな種類があるんですか?」


「その質問は返答に困りますね。厳密な定義はありません。しかし、一般的には肉食系の獣人以外と言ったところでしょうか?」


「さっき、イヌ族って出てましたけど、犬って草食系でしたか?」


「オオカミ族は肉食に分類されますが、イヌ族は微妙です。そう言えば。知ってますか? イヌ族はコボルトと見た目も習性も似ていて、オリジナリティが消失しているんですよ」


「その情報、今、要りますか?」


「教祖様、ウサギ族を一番初めに選ぶのはなぜなのでしょうか? ウサギ族はさほど脅威ではないかと思いますが……」


グリッロさんが話の軌道修正を行う。


「そうですね。確かに、獣人の中でも、いえ、草食系獣人の中でもそれほど重要な一族ではありませんけど」


「それ、失礼すぎませんか?」


「イラリア? 私、しゃべってますよね? 舌をタンとして売られたくなければ、黙っていた方が身のためですよ?」


プラシドさんがはさみとやっとこのようなものを持って嬉しそうに構えている。


「黙ります」


「ウサギ族はストレス耐性が皆無です。おそらく2日ほど包囲すれば、ストレスによる心筋梗塞で絶滅します」


「それはさすがに誇張じゃないですか?」


「イラリアは鳥頭ですか? 私は黙ってろと言いましたよね? で、この話は誇張でないと言われています。これはとある傭兵から聞いた話ですが、ウサギ族出身の傭兵が戦地に来ると誰かしらがシャベルを用意してきてくれます。理由は分かりますね?」


「分かりません」


「武器を握った瞬間に恐怖がこみあげ、そのまま、ぽっくりと」


「そのメンタルで何で傭兵になったんですか?」


「お金に困っていたのでは? まあ、ウサギなのでその辺の雑草でも食ってれば、最低限の生活はできると思うんですけどね。しかし、彼らが貴重な情報を持っている場合はその性質が有利に働きます」


「知ってるとは思いますけど、獣人は知的な生命体ですよ。野生のウサギと同列に扱うのは問題ですよ。それで何で有利になるんですか?」


「あまり圧をかけすぎると、情報と一緒に情報源が逝ってしまします。なので彼らを尋問する際は細心の注意が必要です」


「ある意味強いですね」


「しかも、こちらが強く出れないのを良いことに彼らは煽ってきます。もちろんのことですが、反撃するとストレスで逝ってしまいます」


「何か、いろいろと残念な感じなんですね」


「話はそれましたが、橋頭堡を築くのならば、ここほど楽な場所はないか思います」


「なるほど。ではその方向で兵を動かしてよろしいでしょうか?」


グリッロさんがメモを取る。


「プラシドさんもよろしいですね?」


「ウサギ肉は食べれないことはないですが……食肉としては……」


「この人、本当に何しに来たんですか?」


「賛成ってことですね?」


「いえ、やはりお客様の気持ちを考えれば、ウサギ肉ではなく牛肉や……」


「うるせえ、お前の肉を店頭に並べるぞ。賛成でいいですね?」


「喜んで」


「力関係がよく分かりますね」


「グリッロさん、聖戦士が何人か行方不明になるかもしれないので、寝る前にしっかりと点呼をするよう呼び掛けておいてください」


「かしこまりました」


「何でですか?」


「イラリアはおつむが足りないのですか? プラシドさんがストレス解消のために何人か……」


「本当に何しに来たんですか、この人? ただの猟奇殺人犯じゃないですか!」


「本人の前でよく言いますね。その勇気、褒めてあげます」


「謝るので、守ってくれませんか?」


「仕方ありませんね。虎の子を使ってあげます」

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