第37話 感謝の気持ちは重要です
残りの裁判はタフィに任せて、私は別の仕事に取り掛かる。
勇者たちは街を観光するようなので、地味な嫌がらせを信者に指示しつつ、別れた。
私とソフィアは経理関係者が集まる会議室に入る。
私がドアを開けると、着席していた大人たちが立ち上がり、私とイラリアが座ると全員着席した。
「この間の金はどのぐらい増やせましたか?」
「大金貨300万枚分の金を確保できました」
経理部門の方々はいい仕事をしてくれたようだ。
「迷宮の時の話ですか?」
イラリアが私に質問する。
「はい。あの後は私はスタンピード関連で時間が拘束されて報告を受けれませんでしたから。素晴らしい成果ですね。ところで、ある噂を聞いたのですが、金融業の方で若手の育成がうまくできていないようですね」
「「「申し訳ありません、教祖様」」」
全員が同時に謝る。
「聞いた話によるとお金に困った人間にしか貸してないそうじゃないですか?」
「師匠、それは普通じゃないですか?」
「イラリア、それだからあなたは三流って言われるのよ」
「言われてません」
「いいですか? これはフライパン教の聖典にもあるたとえ話ですが、あなたは傘を貸す業者をしています。雨が降りそうな時に傘を貸して、お金を儲ける。これは四流です。完全な晴天の時に言いくるめて傘を貸す。これは三流です。二流になると晴天の日に傘を貸して、雨の時に傘を取り返します。一流の金融業者は晴れの日に傘を貸し、雨の日には取り上げます。そして、バケツの水をかけたうえで高額なタオルを貸します」
「最低ですね」
「私クラスになると近づくだけでお金とその人の人権が貰えます」
「奇妙な特技ですね。人権を貰うって何ですか?」
私たちの長い一日が終了した。
一応、勇者パーティーの皆を呼んで、夕食ということにした。
「ずいぶんと大きな屋敷なんだな」
「勇者さんの残念な資金力では建てられないでしょうね」
「ちょっと、いくらルカが許しても、これ以上は私が許さないわよ!」
「どうかされましたか、聖女さん? 観光の道中、虫を吸い過ぎて頭がおかしくなりましたか?」
「やっぱりあなたの仕業だったのね! おかしいと思ったのよ。皆何ともない様に振る舞ってるのに私の顔の周りにだけ、虫がたかってるんだもん」
「ジーナ、流石にそれは酷いと思うぞ」
「星教会の犬さん、名前呼びやめてもらっていいですか?」
「子供にあんな汚い言葉を覚えさせたのか、君は!」
「あんなとはどのような言葉のことですか?」
「それは……」
「言えないってことは言われてないってことですね。嘘は良くないですよ。このペテン師」
「あんた、一体どうなってるのよ?」
私は剣聖さんと盗賊さんに着席するように促す。
イラリア、大賢者さん、勇者さんもつられて、着席した。
「聖女さん、料理が運ばれてきたので、大人しくしてください。育ちの悪さがばれますよ」
「悪くないわよ!」
聖女はぷんすか怒りながら、座った。
私たちは前菜、スープと給仕の人が出す料理を順番に食し、肉料理に到達した。
「おいしそうね」
「聖女さん、食事中は黙っててください」
全員がナイフを入れ、肉を頬張る。
私以外の顔が青ざめている。
「うっ」
「イラリア下品ですよ」
「師匠はなぜ平然とできるんですか?」
「イラリアもか?」
「ルカさんもですか?」
「ああ、こんなひどい味の肉は初めて食べた。その辺でかじった野草の方がまだマシな味をしている」
「ちょっと、お手洗いに……」
「聖女さん、呑み込んでください。口の中にあるものを出すなんて下品にもほどがありますよ?」
「ジーナ、これは何の肉なんだ?」
勇者さんが見当もつかないような顔で聞いてくる。
「え? 肉は肉ですよ?」
「師匠! 私たちは何を食べさせられたんですか?」
「どんな食材であれ、出されたものを感謝して頂く、この心を忘れてはいけませんよ。このお肉は貴重なんですよ。昔と比べて、彼らはパダラを襲ってこないので、入手困難なんです」
「私は何の肉を口の中に入れたんですか!!」
「この肉マズさもすごいが、魔力量がすごいぞ!」
大賢者が驚きのあまり目を見開いている。
「大賢者さんは気付かれたようですね」
「普通の家畜にこの魔力量はない。となると魔物か?」
「惜しいですね」
「惜しいって何ですか!」
イラリアを無視して話を進める。
「正解はですね。魔人の肉です」
私以外の全員の顔が青を通り越して白になっている。
「ちょっと、何てものを食べさせんのよ! 私、聖女よ? この扱いは酷過ぎるわ」
「師匠! それって人体に有害じゃないですか?」
「問題ありません。パダラでは長らく食べられてきているものですから」
「こんなマズいものを口にするのか? パダラの人間は変わってるな」
「勇者さん、確かにマズいのは認めますけど、その言い方は酷いと思います。だいたいですね。こんなクソマズい肉を好き好んで食べるわけないじゃないですか?」
「クソマズいって……食材への感謝はどこに行ったんですか? マズいってわかってるなら、何で食べるんですか、師匠?」
「理由は簡単ですよ。魔人の肉は魔力回復速度の上昇に魔力の親和性が上昇します。そのため、パダラの人間は対魔物戦を考えて、あと、役に立たないパーティーメンバーへの嫌がらせを兼ねて食べさせます。この肉の問題点は圧倒的なマズさと入手の難しさです。魔人がこの街まで攻めてくるというのがなかなかないので、厳しいんですよね」
「主な目的は嫌がらせってことですね。師匠はあんなマズい肉を平然として食べるってことはだいぶ食べ慣れてるってことですか?」
「私は牛サーロインなので、普通においしいですよ?」
「キレていいですか?」




