第四話
第四話です。
ではどうぞ。
こうして春が過ぎ、季節は夏になった。
なんと今日は菖蒲さんがいつも一緒に登校している人が休みだから、僕と一緒に学校に行こうと誘ってくれたのだ!
それを知ったのは昨日。
昨日の夜は興奮で眠れなかった。
「そういえば、再来月に学校の文化祭で写真の展覧会があるんですよね?」
1年のアイドルが他の男子生徒と登校したのを見られたら騒がれるということで、誰もいない早朝に登校することになった。
「うん。そうだよ。なるべく学校の近くで撮った写真を飾るんだけど、それと一緒になんでその写真にしたのかの作文も飾るんだ」
「なるほど。じゃあ私はカメラの知識を全部覚えれば、その展覧会に参加できるんですね?」
「うん」
「よし! そこまで頑張ろう!」
張り切ってる彼女も可愛かった。
菖蒲さんと学校で別れた。
こんなに楽しい登校をしたのは生まれて初めてだ。
帰りも菖蒲さんと帰る約束をした。
幸せだった。
だけど、この日の昼休みにこんな噂を耳にした。
「なあなあ。知ってるだろ? 噂で1年の美女の生徒の話」
「うん。知ってる。鳩羽菖蒲って名前のやつだろ」
「そうそう。でよ、最近の噂でその美女の菖蒲っていう生徒が変な男と絡んでるんだよ。誰かの話によれば、相手は2年らしいぜ」
「えー! ここの学年じゃん」
「だから、俺もびっくりしたんだって。めっちゃショックだよなー」
……もしかして僕のこと?
「でさ、その男がめっちゃ地味なんだって。その話が本当だとすると、美女の生徒とはつり合わねぇよなぁ」
その言葉が僕の心の奥深くにグサッと刺さった。
うっ! 今のは効いた……。
悲しいし、何より心が痛い。
……もう泣きたい。
放課後。菖蒲さんと帰る約束をしていた僕は、1年の教室に向かった。
今日は何を話そうかななど考えていたときだった。
その時、廊下である男子生徒が僕の前に立ちはだかった。
僕はその男子生徒に見覚えはなかった。
誰?
よくわからない状況に置かれている僕は、ふとその男子生徒の名札をみた。
『天竺』と書かれていて、名札のデザインからして1年のものだった。
「き、君は……?」
「俺のことより、お前のことのほうが先だ。正直に話せ。毎日菖蒲と帰っているよな? 菖蒲とどういう関係なんだ?」
唐突なことで頭の整理が出来なかったが、今の言葉は何かがおかしい。
写真部は、カメラの片付けなどが色々あって他の部活より30分近く遅く下校する。
だから写真部が帰る時他の部活はみんな帰っているはずだ。
なのに、なぜこの男子生徒は僕と菖蒲さんが一緒に帰っていることを知っているんだ?
怖くなった僕は、気づけばその場から逃げていた。
振り返ると、僕を追いかけている。
僕の足では必ず追いつかれる。
そう思った僕は、どこかに隠れる選択肢を選んだ。
どこの教室に隠れればいいかを考えていた僕は、走ってしまったことを後悔した。
「っ……!」
その場に倒れた。
なにかに転んだわけじゃない。体の限界が来た。
……心臓発作だった。
こんな時に……!
だけど痛みに耐えて僕はまた走った。
走って走って……転がり込んだ教室は、
「先輩?!」
菖蒲さんがいた。どうやら1年の教室のようだ。
だけど、僕にはもう話す力など残っていなかった。
視界が狭まり、暗くなっていく。
心臓を抑えて倒れている僕に菖蒲さんが駆け寄る。
そこに、
ガラッ!
荒々しくドアを開ける音がした。
「葵?! どうして……」
「菖蒲……」
さっきの男子生徒の声だ。
だけど僕は何もすることが出来ない状況だった。
カヒュッと呼吸が不規則になり、意識が遠のいていく。
暗い僕の視界に映ったのは、菖蒲さんが僕を庇って立っていた姿。
なにか男子生徒と話しているようだったけど……あまり聞こえない。
男子生徒が教室を出ていった。
菖蒲さんがまた僕に駆け寄ってなにか叫んでいたけど、それももう聞こえなくなって……。
僕の意識はなくなった。
第四話どうでしたか。
二人の純愛物語が続くと思いきや、少し雲行きが怪しくなってきたような……?
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