第五話
第五話です。
ではどうぞ。
夢を見ていた。
その夢は、酷く断片的でDVDのチャプターのように、区切られている内容だった。
まず最初は、病院の天井。上体を起こした僕は、病室に来た菖蒲さんと何かを話していたけど、会話は聞こえない。
その次は花火大会。
菖蒲さんに誘われ浴衣を着て、花火大会に行った。
時計塔の前で待っていると菖蒲さんが来た。
白色の生地に藍色と紫色の花が描かれた浴衣を着ていた。
とても似合っていて、思わず見とれてしまった。
次は、ある日の放課後。
僕が菖蒲さんと一緒に帰ろうとして、1年の教室に行こうとしていたところに、菖蒲さんが他の男子生徒と何かを話していた。
その次は、僕と菖蒲さんは学校の文化祭に来ていた。
菖蒲さんが僕の手を引いて、屋台などを楽しんでいた。
そしてその次は、僕と菖蒲さんはイルミネーションを見に来ていた。
キラキラした夜の中を菖蒲さんははしゃいでいた。
イルミネーションの光が菖蒲さんをいつもより一層綺麗にさせる。
そして、その帰り。
菖蒲さんは横断歩道を渡っていて、僕はなぜか少し後ろを歩いていた。
そして…。
菖蒲さんが僕の方を向いたその時だった。
菖蒲さんは突然視界に入ってきた車に弾き飛ばされて、僕がいる延長線上に転がった。
「うわっ!」
僕の目が覚めたのはおそらく……夢の続きを見たくなかったから。
そういえば僕、どうしてたんだろう?
「痛っ」
心臓を抑えて気付いた。
あぁ……そうだった。
天竺っていう男子生徒から逃げて心臓発作を起こしたんだった。
それにしてもさっきの夢は何だったんだ?
そういえば……。
天井を見上げた僕は何かに気付いた。
この天井……夢の最初で見た天井とよく似ていた。
偶然っていうのもあるし、気にしないけど……。
もしかすると、僕が見た夢は現実になる……?
最後の事故も…。
急いでその考えを振り払った。
そこに、
「先輩! 目が覚めたんですか?!」
入り口に菖蒲さんが立っていた。
そして走って僕のところに駆け寄る。
「びっくりしましたよ。急に教室に入ってくるし、倒れて気絶するしで…。私1人パニックでした。」
「……ごめん」
「いいえ。先輩が悪いわけじゃないんです。それに、葵と何があったんですか?」
「それは……」
僕は気絶する前の事と、病気のことについても話した。
菖蒲さんもその葵という男子生徒のことについても話してくれた。
天竺葵は菖蒲さんの幼馴染で、小さい頃から菖蒲さんが好きだったらしい。
小学校でも中学校でも告白されたらしいけど、菖蒲さんは告白を拒否。
だけど今も菖蒲さんのことが好きらしい。
僕が倒れたあとは、菖蒲さんが救急車を呼んでくれた.
本当に感謝しかない。
菖蒲さんは天竺葵のことを話していなかったことにずっと謝っていたけど、僕も話してなかったことがいっぱいあったし、お互いと言う事で。
本当に好きってなんだろう?
姉さんに言われたけど、やっぱりわからない。
その後、お父さんお母さん姉さんも来た。
菖蒲さんがいることに疑問を抱いていたみたいだったけど、後輩だということを説明したら、納得してくれたようだ。
姉さんはまだなにか思っているようだったけど。
お母さんが先生から話があるらしいとのことで、僕は部屋をでた。
僕は病院の外のベンチに座っていた。
先生から告げられた衝撃の事実により僕は呆然と夜空を眺めていた。
先生から告げられたのは……。
僕の寿命があと半年ということ。
中学校のとき心臓発作を1回起こしていた。
だから今回は心臓発作だとすぐにわかった。
1回目のとき先生から2回目を起こしたときは、僕の体は長くても数年しかもたないだろうと告げられていた。
夜空が綺麗だった。
突然の事に泣くことすら出来ず、僕の心の中は星1つない真っ暗な世界だった。
釈然としたまま、ただただ綺麗な夜空を眺めていた。
「先輩」
横を見ると菖蒲さんが僕のところに来て僕の横に座った。
「菖蒲さん……家には帰らなくていいの?」
「電話でお母さんに言っておきました。理由を話すと、納得してくれたので」
「そう」
僕はそういい、また夜空を眺めた。
菖蒲さんも僕と同じように空を眺めた。
「先輩のお母さんから聞きました。全部」
「……そう」
僅かな沈黙……そして、
「あ……流れ星……」
菖蒲さんが呟いた。
「いいですよね。ここは田舎だから、普通に流れ星が見れるので。そういえば先輩、知ってますか? 人が流れ星にお願いをする理由」
僕は菖蒲さんを見た。
「時々神は外界の様子を眺めるために天界を開けるんです。この時に天の光として星が流れ落ちる。だからこの時願いを叶えれば、その希望は神の耳に届き、神は願いを叶えてくれるんです」
言葉に熱意が籠もっているようだった。
「それに流れ星に願い事をして叶う確率はおよそ5人に1人だそうです」
菖蒲さんの瞳は星に負けないくらいの輝きを放っていた。
「私が言いたいのは、どんなことも人に頼っていいということ。流れ星にお願いするぐらいどうしようもないことも人に頼ればいいんです。先輩が病気のことを言えなかったのも、1人でどうにかしようとしてたからじゃないでしょうか」
僕は友達がいなかったのを理由に、どんなことも1人でやってきた。
そのつもりだった。
これまでも……これからも……。
だけど、今は菖蒲さんがいるのに、何も話すことが出来なかった。
人に頼れなかった。
「だから、これからは私に頼ってください。私には何もすることが出来ないかもしれないけれど、それでも頼ってください。必ず……先輩の力になりますから」
その言葉が僕の心の奥深くに響いた。
そして僕は……知らずに涙を流していた。
涙の勢いがどんどん強まり、大粒の涙を流していた。
それはやがて嗚咽にかわり、僕は涙を流しすべての思いを吐き出した。
先輩という立場である人間が後輩の前で泣くなんて情けない。
だけど、僕は涙を止めることが出来なかった。
泣いている僕の横で菖蒲さんは僕の好きな笑顔を浮かべていた。
たくさんの星が舞う夜の中、菖蒲さんの瞳は静かに佇んでいた。
第五話どうでしたか。
これを書いた当時、確か夜に流れ星を見て思いついた話だったと思います。
作者自身、結構気に入っております。
「面白い!」「続きが気になる!」と思った方は是非ブックマーク、評価ポイント、リアクションよろしくお願いします。




