第二話
第二話です。
ではどうぞ。
今日の撮影が終わり、その後僕は暇さえあれば彼女の笑顔の写真を眺めていた。
僕はあんな笑顔を今まで見たことがなかった。
あのときの彼女の笑顔はどこまでもどこまでも透き通っていて綺麗だった。
「おーい。琥珀くん」
「あ、はい」
先輩に話しかけられて、我に返った。
「いや琥珀くんが撮った写真を見たいんだけど。ってか、なにずっとニヤニヤしてんの?」
先輩に分かるぐらいニヤニヤしてたのか。
恥ずかしいと思いつつも、先輩に怪しまれないようカメラの画面を他の写真に切り替える。
「い、いえ、みんないいように撮れたなと」
そう言いカメラを渡す。
苦しい言い訳だけど一応筋は通っているはず。
「ふーん。ほんとにいいように撮れてるね。これだったらアルバムに採用されるかもね」
写真部が今回撮った写真は、今年の入学者がここの高校を卒業するときの卒業アルバムに使う。いいのに絞って卒業アルバムに載せるのだという。
「いいのを撮るよう頑張ったので」
まあ僕が満足した写真は、彼女の笑顔が写った写真だけなんだけど。
と心のなかで付け足して。
僕のカメラを先輩に渡した。
でも不思議だったな。名前は確か彼女の友達らしき人が「菖蒲」と言っていたような。
それに初対面の人なのにあれだけ会話したのは初めてだ。
入学者ってことはここの高校に入学してくるということ。
またどこかで会えるのだろうか。
僕はそのことが何より嬉しかった。
❀ ❀ ❀ ❀
数日後。
入学式はあったが、在校生は休みだったため彼女の姿を見ることができなかった。
もし、学校の中で彼女にあったらどういう反応をすればいいのだろう。
彼女は僕の顔をおぼえているのかな?
人との接し方がわからない僕にはどうすればいいのだろうか。
そればかり考えていた。
それから数日後。
学校で彼女と会わなかったところに部活体験がやってきた。
部活体験は1週間ぐらいあったが、彼女は写真部のところに来なかった。
もしかしたら写真部に入部してくるかも……と期待していたが、体験に来なかったということは、ここの部活に入部してこない。
そのことで数日の間僕は落ち込んでいた。
だけど……。
そのまた数日後。
昼休みに教室で本を読んでいた僕の耳に廊下からこんな話が聞こえてきた。
「なあなあ知ってるか? 1年にいる美女の生徒の話」
この学校は噂などが出れば、1日もかからず広まってしまうのだ。
なぜかは知らないけど。
「知らねー。興味ないや」
「これだけはまじですごいんだって。教えてやるよ」
僕は噂話が好きだから、本を読みながら聞き耳を立てていた。
「なんかよー、1年の奴らの中にものすげー美人のやつがいるんだってよ。なんたって、その前の中学校ではモテモテだったらしいぜ。そこの中学校のアイドルだったとか」
「ふーん」
「でな、特にその女子の笑顔がめっちゃ可愛いんだって。俺も一回見たけどすげー可愛かったぜ?」
それってもしかして……。
「なんて名前の人?」
「えっと、確か鳩羽菖蒲って名前のやつらしい」
まさか……彼女のことだったなんて……。
僕は酷く胸を締め付けられた。彼女が人気なのはなんとなく気づいていた。それなのに、僕は、楽しく彼女のことを話す奴らに怒りを覚えていた。
放課後。
今日は部活に新一年生が部活に入ってくる日。
彼女が入ってこない今は退屈でしかない。
「はあ……」
ため息ばかりついていた。
写真部は毎年2、3人しか入ってこないらしいから今年もそうだろう。
「えーみんな知っている通り、今日は新1年生が入ってくる日だ。今年はなんと1人だ。それじゃあ入ってきてください」
先生の合図で入ってきた生徒は、
「初めまして! 鳩羽菖蒲と言います! よろしくお願いします!」
なぜ彼女が写真部に?
だって部活体験に来てなかったのに。
「なあ……鳩羽菖蒲って……」
「そうだよ。1年にいる美女って噂の……」
「なんで1年のアイドルが写真部に?」
思いがけない出来事に周囲がざわつく。
彼女が僕の顔を見て「あっ」という表情に変わる。やはり僕のことを覚えているようだ。
「ねえ、部活体験に来てなかったのにどうして?」
僕の後ろの席に座った彼女に疑問をぶつけてみた。
「私、高校生になってから2つ塾を掛け持ちしててなかなか行けれなかったんです」
そうだったのか。
「でもさっきここの部屋に入ってきたときは驚いたよ」
「でも先輩の驚く表情良かったですよ」
それは褒められているのだろうか?
それより先輩って言われたことが少し嬉しかった。
僕たち写真部の活動内容は、定期的に撮ったいい写真を学校内に飾ること。
それまで1年生たちにカメラの使い方、撮り方などを教えなければならない。
だけどまあ、今年は1人しか入部してこなかったから、簡単だ。
と、思っていたのに……。
「あれ? 次はどうやるんでしたっけ?」
「えっと、だからその次はこうやるんだよ」
「あー! そうだった!」
意外なほどに彼女は機械音痴だった。
何十回説明しても、説明しても…理解してくれない。
だけど僕は理解してくれないことへの苛立ちより、何回も説明されて慌てる彼女が少し面白くて笑いそうになる。
だけど彼女の機嫌を損ねないよう、そこはなんとか堪える。
今日の部活が終わるまでには、ギリギリカメラの使い方を覚えてくれた。
「今日は本当にありがとうございました!」
「いや、こちらこそ」
僕と彼女は部活の帰りに一緒に帰った。
まさか友達がいない僕が誰かと一緒に帰るなんて考えたこともなかった。
「明日は何をやるんですか?」
「多分、撮った写真をSDカードに保存したりそれをパソコンに入れたり、することかな?」
僕がそう言うとあからさまに嫌そうな顔をする彼女。
表情豊かで思わず笑ってしまった。
「なにがおかしいんですか?」
見ると頬を膨らまして明らかに怒っている。
その表情もとても可愛かった。
「いや、なんでもない」
そう誤魔化しておいた。
「まあいいですけど、そういえば先輩ってメールとかしてます?」
「う、うん。してるよ」
「メールアドレス交換しましょう。今日のこともまとめて教えてくれると助かるので」
友達のいない僕はメールアドレスなんて家族のしか持っていない。
初めて他の人とアドレス交換…。
とても嬉しかった。
「いいよ。そういえば鳩羽さんってどこらへんに住んでるの?」
やっと名前が言えた……。
だけど彼女はその気持ちを受け取ってくれないようで。
「鳩羽さんじゃなくて菖蒲さんでいいです。私個人、名前で呼ばれる方が好きなんです」
「そ、そう」
そんなことを話しながら僕たちは帰った。
第二話どうでしたか。
作者が恋愛小説を書いたのもがこの小説で初めてなので、出来は少し不安です。
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