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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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概念の衝突と、逼迫する資金繰り



ニューヨークの空を覆う純白の虚無。


レベル5万の幹部たちを瞬殺した直後だというのに、俺たち【朝倉商事】の面々は、かつてないほどの重圧プレッシャーに晒されていた。


「社長! 役員が動きます!!」


秘書のしずくが、タブレットから目を離さずに叫ぶ。


純白のシルエット――【本社直属・執行役員】が、静かに右手を振り下ろした。


ドゴォォォン、といった派手な爆発音はない。

ただ、役員の手が指し示した直線上の空間が、高層ビル群ごと『無音で消滅ホワイトアウト』したのだ。


「な……ビルが、一瞬で消えた!? 瓦礫すら残ってないぞ!!」


復活したばかりの北米支社長、リチャードが顔を青ざめさせる。


「あれは物理攻撃じゃない。システムに対する『削除コマンド(デリート)』だ」


俺は漆黒のオーダースーツのネクタイを乱暴に引き剥がし、前に出た。


「俺たちの存在そのものを、バグとしてこの世界から消去しようとしている。……灰原! ルミ!」

「わ、わかってます!! 【ダメージのリボ払い】!!」


盾役の灰原が前に飛び出し、役員の放つ「消滅の波動」を正面から受け止める。


本来なら即死デリートするはずの攻撃だが、灰原のスキルは『消滅するという事象』すらも未来への借金として遅延させた。


「がはっ……!!」


だが、灰原の全身の毛細血管が弾け、目や口から血が噴き出す。


「しゃ、社長……! 相手の攻撃力(請求額)が……無限大すぎて、僕の口座キャパシティじゃ、あと数秒でパンクします……っ!」


「ルミ! 灰原の座標をズラせ!」


「やってますよぉぉ! 【強制配置転換】!!」


ルミが泣き叫びながら指を振る。


役員の消滅攻撃の軌道から、灰原や俺たちの空間座標をミリ単位で強制的にズラし続ける。


俺からの魔力供給(経費)は無限だが、ルミ自身の脳の処理速度(CPU)が限界に達し、彼女の鼻からツツーッと鼻血が垂れた。


「チッ……! いくら資金マナがあっても、相手の『行動権コスト』が高すぎるわ!!」


CFOのバハムートが、真紅の瞳を血走らせながら両手をかざす。


「【事象の買収】!! あんたのその削除コマンド、私が買い取ってやるわよ!!」


バハムートのスキルが発動し、役員の放つ消滅の波動がピタッと止まる。


だが、役員の行動を買い取るためのコストは、神話級の竜であるバハムートの全魔力をもってしても『ギリギリ相殺』できる程度でしかなかった。


「はぁっ、はぁっ……! 社長、マナのおかわり!!」


「持っていけ!!」


俺は神竜コア(特異点)から莫大な魔力を引き出し、バハムートに注ぎ込む。完全に自転車操業(赤字経営)だ。


『――抵抗プロセスを検知。エラーの規模が想定を上回っています』


役員が、無機質な声で告げる。


『――削除権限リソースを70%に引き上げます』


「……っ!!」


役員のシルエットがさらに白く輝いた瞬間、俺の前に展開されていたバハムートの買収権限が、ガラスのようにパリンと砕け散った。


「きゃああっ!?」


「バハムート!」


防衛線が突破された。


純白の消滅波動が、俺の体を直撃する。


ガギィィィィィィンッッ!!!


「ぐ、おおおおおっ!!」


俺は両腕を交差させ、全身の『管理者権限キャンセルコマンド』を総動員して、俺自身と後ろの社員たちを消去しようとする波動を強引に押さえ込んだ。


ギシッ……ミシッ……。


いかなる物理攻撃も弾き返してきた俺の『最強のオーダースーツ(概念武装)』に、初めて亀裂クラックが入る。


「朝倉!!」 


リチャードが絶望の声を上げる。


「騒ぐな……っ! これくらい、決算期前の残業(ブラック労働)に比べたら……どうってことねぇんだよ!!」


俺は口から血を流しながら、一歩、また一歩と役員に向かって前進する。


削り取られようとする俺のデータと、俺の中の特異点がそれを復元する修復ループ。純粋な「概念の綱引き」だ。


だが、このままではジリ貧だ。


相手はシステムの元締め。リソース(体力)は無限にある。対して俺たちは、生身の人間(と竜)の集まりだ。


「しずく!! まだか!!」


俺は血の滲む歯を食いしばりながら、後方でタブレットを叩き続ける秘書に叫んだ。


「……計算(監査)、完了しました!!」


しずくが、メガネの奥で鋭い光を放ち、顔を上げる。 


「役員の『削除権限』は絶対ですが、常に100%の出力で展開し続けているわけではありません! システムが『対象の抵抗値』を再計算し、出力を調整(最適化)する瞬間――そのたった一度のタスクの切り替え時に、システムの防御壁ファイアウォールが完全にゼロになる『空白の時間』が存在します!」


「時間は!?」


「コンマ0.0001秒! 次の出力調整は――今から、ちょうど7秒後です!!」


「上出来だ、完璧な監査アシストだぞ、しずく!」


俺はスーツの亀裂から血を流しながらも、狂気じみた笑みを浮かべた。


相手が理不尽な神だろうと、システムである以上「処理のラグ(決算の隙)」は必ず存在する。


「灰原! ルミ! バハムート! リチャード!」


俺は社員全員に向けて、社長としての『最終命令』を下した。


「あと7秒間、死ぬ気で俺に全資産バフを集中させろ! あのクソ役員に、俺たちの全額を賭けた『最後の一撃ダイレクト・アタック』を叩き込むぞ!!」


「「「はいっ、社長!!!」」」


限界を迎えていた社員たちが、俺の号令で最後の力を振り絞る。


レベルという概念が存在しない神との、ギリギリのデッドヒート。


コンマ0.0001秒の隙を突くための、全てを懸けた【敵対的買収タスクキル】のカウントダウンが始まった。

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