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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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決算(タスクキル)と、上位権限の略奪


「残り7秒!!」


しずくの叫びが、崩壊するニューヨークの魔境に響き渡った。


『――抵抗を排除します。削除コマンド、出力最大へ』


純白のシルエット――執行役員が、俺たちをこの世界から完全にデリートするため、両手を高く掲げた。


空間そのものが白く染まり、音も、光も、存在確率すらも削り取られていく。


「……社長!! わたしの全資産マナ、あんたに投資バフするわ!!」


CFOのバハムートが、真紅の瞳から血の涙を流しながら叫んだ。


彼女は自身の【事象の買収】の対象を、敵の攻撃ではなく『俺の身体能力』へと切り替えた。神話級の竜の莫大な魔力が、俺の漆黒のスーツへとなだれ込む。


「ぐっ……! 受け取れ社長ぉぉ!! これが限界まで膨れ上がった、僕の借金ダメージの総額です!!」


灰原が、自身の体が弾け飛ぶ寸前の赤黒いダメージの塊(役員から受け続けた削除波動の蓄積)を、俺の右腕へと『債権譲渡』する。


「ルミ!! 俺の座標を固定しろ!!」


俺はバハムートの魔力と灰原のカンストダメージを右拳に収束させながら、前傾姿勢を取った。


「やってますぅぅ! 鼻血止まんないですけど、残業代弾んでくださいね!! 【強制配置転換】、ターゲット・社長の右拳と、役員の胸のド真ん中!!」


ルミが白目を剥きかけながら、俺の右拳の空間座標を、本来なら絶対に届かない役員の『ゼロ距離』へと無理やり繋ぎ合わせる。


「……3秒前!!」


しずくが秒読みを続ける。


役員の放つ純白の消滅波動が、ついに俺のオーダースーツの防御壁を完全に食い破り、俺の全身の皮膚を焼き焦がし始めた。


「朝倉!! 俺の限界突破(全魔力)も持っていけぇぇ!!」


完全復活したリチャードが、自身のレベル1万2千の全エネルギーを俺の背中に叩き込む。


全身の骨が軋み、細胞がデリートされかけ、それを神竜コアが修復する無限地獄。


だが、役員の理不尽な波動の中で、俺の右拳だけは、全社員の血のにじむような『投資サポート』によって、システムすらも破壊しうる特異点として赤黒く輝いていた。


「……1秒前!!」


しずくのメガネが、役員の放つ光圧でパチンと割れた。


「――ゼロ!! 決算期ストライク・ゾーンです!!」


その瞬間。

コンマ0.0001秒。


執行役員が、次の対象を削除するためにシステムのタスクを切り替えた、完全なる空白。


役員を覆っていた不可視の絶対防御ファイアウォールが、スッと消失した。


「有給の邪魔をする奴は……神だろうが役員だろうが……!!」


俺は、繋がれた空間の糸をたぐり寄せるように、限界まで溜め込んだ右拳を、役員の純白の胸の中心コアに向かって真っ直ぐに叩き込んだ。


「全員、俺がリストラ(強制終了)してやるッッ!!!」


「――【管理者権限ルートアクセス:タスクキル】!!!」


ゴアァァァァァァァァァァァァッッッ!!!


俺の右拳から放たれたのは、ただの物理攻撃ではない。


灰原の蓄積ダメージ、バハムートの神話級マナ、リチャードの限界突破エネルギー、そして俺の神竜の『特異点の力』が完全に融合した、システムに対する【強行突破の改ざんコマンド(ダイレクト・アタック)】。


『――エ、エラー……。未定義の、処理、要求……』


役員の無機質な声に、初めて『ノイズ』が混じった。


俺の右拳が、純白のシルエットを深々と貫いている。


コンマ0.0001秒の隙に叩き込まれたその一撃は、役員が防御権限を再起動するよりも早く、その存在を構成する『根源のソースコード』を内側から食い破っていた。


『……処理、不能。……本プロセスを、強制、終了、しま……す』


ピキッ、ピキピキピキッ……!!


無敵の神であった執行役員の体が、ガラスのようにひび割れる。


そして次の瞬間、音を立てて無数の光のポリゴンとなって弾け飛び、ニューヨークの空へと完全に霧散していった。


「……はぁっ、はぁっ……」


俺は右腕を下ろし、血と汗に塗れた顔を上げた。


上空を覆っていた赤いエラー画面が消え去り、崩壊したニューヨークの街に、不気味なほどの静寂が訪れる。


「や、やった……!?」


リチャードが、信じられないものを見るようにへたり込んだ。


「倒し、ました……。私たちの、完全な黒字(勝利)です……!」


しずくが割れたメガネを押さえながら、その場にへたり込む。灰原とルミも、完全に限界を迎えて大の字で倒れ伏していた。


だが、戦いはこれで終わりではなかった。

役員が消滅した空間の中心に、太陽のように眩い『黄金の光の球体』が浮かび上がったのだ。


『――システムアナウンス。執行役員の消滅を確認』

『――膨大な未処理の経験値、および【上位権限(ルートアクセス権)】の流出を検知しました』


脳内に響く声。

それは、役員という「巨大なシステムのリソース」が、俺たちによって買収(奪取)されたことを意味していた。


「……来い」


俺が手をかざすと、黄金の光の球体は弾け、五つの光の筋となって、俺たち全員の胸の中へと吸い込まれていった。


『ピロリンッ!』


『――対象ユーザー群のステータス再計算を実行します』

『――ユーザー・朝倉健人の【管理者権限】が拡張されました。固有スキルが進化します』

『――ユーザー・雨宮しずく、灰原愁、星野ルミ、バハムートの固有スキルが【EXランク】へとアップデートされました』


「な、なんだこれ……!? 体の奥から、とんでもない力が……!!」


灰原が跳ね起きる。ルミも、バハムートも、自身の体を包む圧倒的な光のオーラに目を見張った。


しずくの足元からは、神獣クロがかつてないほど巨大な『漆黒の狼(概念捕食者)』へと姿を変えて咆哮を上げている。


レベルという既存の枠組みすら置き去りにする、理不尽な神の権限の略奪。


【朝倉商事】の全社員は、役員を敵対的買収したことで、システムそのものをハッキングする『EXスキル』へと、一斉に覚醒(進化)を果たしたのだった。

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