5 同族との出会い
ドリムは揺り起こされました。
目を開けると、ドリムとそっくりな顔が覗き込んでいました。
「あなたはぼくですか?」
ドリムは聞いてみました。
答えは返ってきませんでした。
ドリムが自分かと思ったのは、ドリムと同じハツカネズミでした。
「どうだい? もう寂しくはないだろう?」
ドリムが声のする方を見上げると、お馴染みになった丸い顔がありました。
「この子はどこの子ですか?」
「研究室にいるネズミだよ。産れも育ちも研究室だよ」
もう一匹のハツカネズミは、ドリムにじゃれ付いてきました。小さくて温かいネズミの感触は心地よく、ドリムはハツカネズミをぽんぽんと叩きました。
「この子の名前は何ですか?」
「名前はないよ。ハツカネズミはたくさんいるからね」
「そうですか。確かに、寂しくはありませんね」
ドリムはハツカネズミが気に入りました。
「そうだろう。ドリムや、もう死ぬことはないだろうね」
お月様のような丸い顔は、ドリムの巣箱を覗き込みながら言いました。まるで死んではいけないといわれているようでした。
「寂しくないと、ぼくは死なないのですか?」
お月様のような魔法使いは、少し困った顔をしました。
「ドリムや、お前は病気で死んだのでも、殺されたのでもない。自分で死んだのだろう」
死んだときのことは覚えていませんでした。お月様のように上から見ている魔法使いがそう言うなら、間違いなさそうな気がしました。
「そうかもしれません」
ドリムは言いました。魔法使いは続けます。
「人間の王様のような立派な家具に囲まれても、お花畑にいても、お前は死んでしまった。それも、自分で死んでしまったのだ。寂しくて死んだのでなければ、一体何が理由なんだね?」
ドリムにはわかりませんでした。そもそも、ドリムは自分がどうして死んだのか覚えていませんでした。
「ぼくに死んでほしくないのですか?」
「もちろんだとも。ドリムがどうして死んでしまうのかわからないと、私の研究は完成しないのだ」
「ぼくは死にたいのではありません」
ドリムは正直に言いました。どういうわけか、お月様のような魔法使いは驚いた顔をしました。
「では、どうして死んだりするのかね?」
「でも、どうしてぼくが死んではいけないのですか?」
「言っただろう、私の研究が完成しないからだよ」
「それは、お月様……魔法使いのあなたの理由です。ぼくの理由ではありません」
お月様のような魔法使いは、考え込んでしまいました。
ドリムはお月様のような魔法使いのことは気にせず、真っ白いハツカネズミの体を転がしました。じゃれ付かれていたので、丸い胴体をごろごろと転がしました。
飛びかかってきたハツカネズミを投げ飛ばし、乗りかかり、抑え込みました。
ハツカネズミを抑えているうちに、ドリムは何をしているのかわからなくなりました。
そろそろ死んでもいいかもしれない。そんなことを考え出したとき、お月様のような魔法使いが言いました。
「生きる理由が欲しいのかね?」
ハツカネズミを抑えたまま、ドリムは魔法使いを見上げました。とても珍しいことを言われたような気がしました。
「別に欲しくはありませんよ」
「あってもいいだろう?」
「そうですね、あってもいいかもしれません。邪魔にも荷物にもなりませんから」
「では、ドリムや、少し待っていておくれ。用意をするから。少しぐらい、死なないでいてもいいだろう?」
「そうですね」
ドリムが座り直そうと気を抜くと、抑えていたハツカネズミがドリムをひっくり返しました。
再びドリムはハツカネズミとじゃれあいました。
お月様のような魔法使いは、いそいそとどこかへ行ってしまいました。
ドリムとハツカネズミは、気が済むまで遊んでいました。




