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ネズミのドリム  作者: 西玉
ネズミのドリムと魔法使い
5/24

5 同族との出会い

 ドリムは揺り起こされました。

 目を開けると、ドリムとそっくりな顔が覗き込んでいました。

「あなたはぼくですか?」

 ドリムは聞いてみました。

 答えは返ってきませんでした。

 ドリムが自分かと思ったのは、ドリムと同じハツカネズミでした。

「どうだい? もう寂しくはないだろう?」

 ドリムが声のする方を見上げると、お馴染みになった丸い顔がありました。

「この子はどこの子ですか?」

「研究室にいるネズミだよ。産れも育ちも研究室だよ」

 もう一匹のハツカネズミは、ドリムにじゃれ付いてきました。小さくて温かいネズミの感触は心地よく、ドリムはハツカネズミをぽんぽんと叩きました。

「この子の名前は何ですか?」

「名前はないよ。ハツカネズミはたくさんいるからね」

「そうですか。確かに、寂しくはありませんね」

 ドリムはハツカネズミが気に入りました。

「そうだろう。ドリムや、もう死ぬことはないだろうね」

 お月様のような丸い顔は、ドリムの巣箱を覗き込みながら言いました。まるで死んではいけないといわれているようでした。

「寂しくないと、ぼくは死なないのですか?」

 お月様のような魔法使いは、少し困った顔をしました。

「ドリムや、お前は病気で死んだのでも、殺されたのでもない。自分で死んだのだろう」

 死んだときのことは覚えていませんでした。お月様のように上から見ている魔法使いがそう言うなら、間違いなさそうな気がしました。

「そうかもしれません」

 ドリムは言いました。魔法使いは続けます。

「人間の王様のような立派な家具に囲まれても、お花畑にいても、お前は死んでしまった。それも、自分で死んでしまったのだ。寂しくて死んだのでなければ、一体何が理由なんだね?」

 ドリムにはわかりませんでした。そもそも、ドリムは自分がどうして死んだのか覚えていませんでした。

「ぼくに死んでほしくないのですか?」

「もちろんだとも。ドリムがどうして死んでしまうのかわからないと、私の研究は完成しないのだ」

「ぼくは死にたいのではありません」

 ドリムは正直に言いました。どういうわけか、お月様のような魔法使いは驚いた顔をしました。

「では、どうして死んだりするのかね?」

「でも、どうしてぼくが死んではいけないのですか?」

「言っただろう、私の研究が完成しないからだよ」

「それは、お月様……魔法使いのあなたの理由です。ぼくの理由ではありません」

 お月様のような魔法使いは、考え込んでしまいました。

 ドリムはお月様のような魔法使いのことは気にせず、真っ白いハツカネズミの体を転がしました。じゃれ付かれていたので、丸い胴体をごろごろと転がしました。

 飛びかかってきたハツカネズミを投げ飛ばし、乗りかかり、抑え込みました。

 ハツカネズミを抑えているうちに、ドリムは何をしているのかわからなくなりました。

 そろそろ死んでもいいかもしれない。そんなことを考え出したとき、お月様のような魔法使いが言いました。

「生きる理由が欲しいのかね?」

 ハツカネズミを抑えたまま、ドリムは魔法使いを見上げました。とても珍しいことを言われたような気がしました。

「別に欲しくはありませんよ」

「あってもいいだろう?」

「そうですね、あってもいいかもしれません。邪魔にも荷物にもなりませんから」

「では、ドリムや、少し待っていておくれ。用意をするから。少しぐらい、死なないでいてもいいだろう?」

「そうですね」

 ドリムが座り直そうと気を抜くと、抑えていたハツカネズミがドリムをひっくり返しました。

 再びドリムはハツカネズミとじゃれあいました。

 お月様のような魔法使いは、いそいそとどこかへ行ってしまいました。

 ドリムとハツカネズミは、気が済むまで遊んでいました。


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