表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネズミのドリム  作者: 西玉
ネズミのドリムと姫の誓い
23/24

23 ドリムの結婚

 ドリムがイザベル姫のそばで生活するようになってから、ずいぶん長い時間が経ちました。

 イザベル姫は少しも変わりません。ドリムは少しずつ変わっていきました。

 ネズミと人間では、時間の経ち方が違うのです。

 ドリムはハツカネズミです。もともと、あまり長くは生きることができない動物です。


 少しずつ弱っていくドリムに、イザベル姫は心配して言いました。

「城の中に住んでいるのが、窮屈ではないのか?」

「ぼくの仲間は、実験用の箱の入っていても平気ですよ」

 イザベル姫は安心しました。


別の時に心配して言いました。

「食事が悪いのじゃろうか?」

「毎日、とても美味しく頂いていますよ」

 イザベル姫は安心しました。


別の時に心配して言いました。

「わらわと一緒にいるのが、嫌か?」

「どうしてそんなことを言うのです?」

「いや、無理をしてドリムがわらわと一緒にいるのではないかと思ってな」

「とても気持ちがいいですよ」

 ドリムはいつもの固定席である、イザベル姫の柔らかい胸を揉みました。

 イザベル姫は安心しました。


 でも、ドリムは少しずつ弱っていきました。


 ある日、イザベル姫はドリムに相談しました。

「父上が、私に結婚しろと言ってきた。相手も決まっている。どうやら、断ることはできそうにない。ドリム、どうしたらいいと思う?」

「『結婚』ですか……確か、以前に姫が教えてくれました。その人と、ずっと一緒にいることですね?」

「……うむ。そうなるな」

「では、ぼくと一緒ですか?」

「ん? そうじゃな。そうじゃった。わらわは、すでに結婚しているではないか」

 イザベル姫は嬉しそうでした。ドリムには、どうしてイザベル姫が喜んでいるのかわかりませんでした。

 ドリムが見上げていると、イザベル姫はドリムに向かって手を伸ばしました。いつものようにイザベル姫の胸にはさまり、ドリムは王宮を移動します。


 イザベル姫は国王の前に来ました。

 何度か見たことがありました。

 直接口を聞いたことはありませんでした。

 ドリムにとっては、イザベル姫以外の人間は、ただ人間でしかありませんでした。

「どうしたイザベル?」

 王様は尋ねます。王様は真ん中の大きな椅子に座っていました。左右には、立派な服を着た人間たちが並んでいました。王様のそばに控えていました。

「お父様、わらわはこの結婚はお受けできぬ。わらわはすでに、結婚しておるのじゃ」

「なに!」

 大きな声を上げて、人間が立ち上がりました。とても怖そうな人間だと、ドリムは思いました。

「誰とだ?」

「ドリムとじゃ」

「……何をいっておる?」

 ドリムは王様と始めて会いましたが、王様はドリムのことを知っているようでした。

 ドリムはもぞもぞとイザベル姫の胸の谷間から這いだしました。

「これがドリムです」

「イザベルと結婚したというのはそなたか?」

 王様は、ドリムに質問しました。疑っているようでした。ドリムは結婚した覚えはありせんでした。

「していませんよ」

 ドリムは王様に言いました。嘘はつけませんでした。

「ドリム、わらわとずっと一緒にいると約束したではないか」

「はい。だから、ずっとぼくは姫様と一緒にいます。それが結婚したということでしたら、そうなんですか?」

 ドリムには『結婚』が解りませんでした。だから、聞き直しました。

「うむ。そうじゃ。のう、父上」

「イザベルがそう言うのなら、仕方がない。しかし、王女が結婚式も上げないというのは許されん。結婚式の準備じゃ」

 王様の左右に並んでいた人たちが、一斉に返事をして、忙しそうに動きだしました。ずっとただ立っていた人間たちが、急に働きだしました。

「ちょっ、ちょっと待つのじゃ父上、本当に結婚式を開くのか?」

「うむ。当然じゃ」

「わらわの結婚式ということは、国を挙げての行事になるのではないか?」

「解っておるな」

「ド、ドリムをそんな場所に、連れ出すわけにはいかん」

「なら、仕方ないな。代役を立てるとしよう。隣国の王子などはいかがかな?」

 イザベル姫は答えず、ドリムの頭を撫でました。ドリムはイザベル姫の指を撫でました。

「戻りましょう」

 ドリムは言いました。イザベル姫が、とても落ち込んでいるような気がしたのです。

「ドリムはよくわかっているな。姫のことを頼むぞ」

 王様はドリムに大きな声でいいました。イザベル姫は王様に舌を出しましたが、ドリムは王様に手を振りました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ