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ネズミのドリム  作者: 西玉
ネズミのドリムと魔法使い
2/24

2 ドリムの理由

 ネズミのドリムは狭い箱の中で目を覚ましました。

 狭いといってもドリムにとっては十分な広さで、壁も天井も透明だったので、息苦しさは感じませんでした。

 ドリムは目を覚ます前のことを、しっかりと覚えていました。

 ドリムは自殺したのです。

 ドリムは目覚めていました。

 ドリムは生きていました。

 手の中にあったはずの、小さな武器がありませんでした。

 口の中が少し痛みましたが、折れたはずの立派な前歯は、すっかり生え変わっていました。

 ドリムは死んだはずでした。

 ドリムは生きていました。


「おお、ドリムや、目を覚ましたのかい?」

 箱の外、ドリムの部屋の外から、大きな声が降ってきました。

 ドリムが見上げると、お月様よりも大きな、しわくちゃの丸い顔がドリムの部屋を見下ろしていました。

 ドリムは大きな顔を恐れましたが、透明な箱の中にいるため安全だと思いました。

「あなたはお月様ではありませんね?」

 こんなに大きくてしわくちゃの月はないだろうと思い、ドリムは聞いてみました。大きくてしわくちゃでしたが、とにかく丸かったのです。

「もちろんだとも。私はお月様ではないよ」

「では、どうしてそんなに丸いのですか?」

 ドリムが尋ねると、お月様のように丸い顔は、楽しそうに笑いました。

「お月様でなければ、丸くてはいけないというわけではないだろう?」

 なるほど、お月様以外にも丸いものはあるかもしれない。

ドリムは反省しました。


「ぼくは眠っていたのですか?」

 ドリムは尋ねました。人間の言葉でした。どうして、人間の言葉を知っているのか、人間の言葉を発音できるのか、わかりませんでした。ですが、正しく伝わっていることは疑いませんでした。

「いいや、ドリムよ、きみは死んでいたのだよ」

「死んだ者は目を覚まさない。そうでしょう?」

「もちろんだとも」

 お月様のような顔はにっこりと笑いました。

「どうしてぼくは目覚めたのです? 死んだのに」

「それを教えてほしいなら、先に私に教えておくれ。ドリムはどうして死んだのかね?」

 ドリムは首を傾けました。

 死んだことは覚えていました。

 死のうとしたことは覚えていました。

 『どうして』と尋ねられるとは思いませんでした。

 ドリムは逆に尋ねました。

「どうして死んだのかを知りたいなら、先に教えてくれなければいけません。どうして、それを知りたいのですか?」

「それなら簡単だ。せっかく生き返ったのに、ドリムは自分で死んでしまったからなのだよ」

 ドリムはますますわからなくなりました。

 ドリムはもう一度尋ねてみました。

「ぼくは前にも死んだことがあるのですか?」

 お月様のような顔は、こっくりとうなずきます。

「もちろんだとも。ドリムは少し前まで、ごくあたり前のハツカネズミだったのだよ。私が魔法で知恵と声を与えたのだが、体の変化に耐えきれなくて死んでしまったのだ。だからドリムや。私はお前を生き返らせなくてはならなかったのだ。そうしないと、私の魔法が上手くいったのかどうかわからないからね」

「では、ぼくは当たり前のハツカネズミで、人間の言葉がわからなかったし、話すこともできなかったのですね」

「ほんの少し前まではそうだった」

「ぼくはあなたの魔法で死んだ」

「そうだね」

「あなたの魔法は成功したのですか?」

 お月様のような顔は、嬉しそうに両手を上げました。

「もちろんだよ、ドリム。きみはこうして二度も生き返ったし、ちゃんと人間の言葉を理解して話しているからね。大成功さ」

「おめでとうございます」

 お月様のような顔はにっこりしてから遠ざかりました。

 とても満足したようでした。

 ドリムは一人になりました。

 ドリムは死にました。


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