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ネズミのドリム  作者: 西玉
ネズミのドリムと姫の誓い
17/24

17 旅の再開

 ネズミのドリムには魂がありません。

 甦らせられた、死んだネズミです。

 魂がないドリムは、死ぬことが怖くありませんでした。

 生きていることに意味がなくなれば、いつでも死ぬつもりでした。

 ドリムには、生きる意味が必要です。

 ドリムはお月様のような魔法使いと約束をしました。

 約束を果たすという目的ができるまで、生きる意味がありました。

 ドリムは、病気のフィリップにお願いをされました。

 お願いを果たすまで、死ぬことはできません。


 ドリムはフィリップの棺桶に穴を開け、土を掘り、地上に出ました。

 白い体がすっかり汚れてしまいましたが、ネズミのドリムは気にしませんでした。

 外に出た時は、あたりは暗くなっていました。どうやら夜のようです。


 夜の墓地を、ドリムはとぼとぼと歩きました。

 夜の墓地で、赤く光る小さな点を見つけました。

 ふらふらと動く小さな明かりに嫌な感じがしたので、ドリムは墓石の一つに隠れました。

 ドリムが隠れていると、目の前を、よだれを滴らせた四本足の毛だまりが、牙を剥きだしにして歩いていきました。

 犬でした。

 墓地を縄張りにしているのかもしれません。

 ドリムは怖くなりました。

 人間よりは小さな生き物に見えました。

 人間より獰猛に見えました。

 人間はドリムと話ができますが、ドリムは犬とは話せません。

 犬は言葉がわからないのです。

 ドリムは墓地を見回しました。

 墓地の周りは森に囲まれていました。

 墓地は、普段は人の目に見えないように、森で覆われていました。

 犬に、あるいは犬たちに、見つかることを恐れたドリムは、森に飛び込みました。

 ドリムは、死ぬわけにはいかなかったのです。


 ドリムは森のなかをとぼとぼと歩きました。

 ドリムの視界の先に、小さな動くものがいました。

 ドリムと同じ、ネズミの仲間でした。

 ドリムはネズミを見ても、仲間だと思えなくなっていました。

 ネズミはネズミです。ドリムはドリムです。

 大きな動物よりは安心です。

 ドリムは近づこうとしました。

 ドリムの目の前で、小さなネズミが鋭い爪に摘ままれました。

 大きなフクロウが、ネズミを爪でつかみ、静かに舞い上がっていきました。

 食べるために違いありません。

 ドリムは怖くなりました。

 ドリムは木を登ることにしました。

 木に登っていれば、フクロウに見つかっても逃げられそうな気がしたのです。

 ドリムは、死ぬわけにはいかなかったのです。


 ドリムは、木の枝の上をとぼとぼと歩きました。

 ドリムが歩いていた木の枝が、突然強く揺れ出しました。

 ドリムが木の枝にしがみつきながら後ろを見ると、木の枝に、光る眼をした動物が座っているのがわかりました。

 その動物はあたりを見回していました。ドリムには気づいていないようでした。

 目の光る動物が枝を蹴り、地面に降りました。

 地面には、小さなネズミがいました。ネズミは慌てて逃げようとしましたが、光る眼をした動物は簡単に前足でネズミを捕まえ、食べてしまいました。

 目が光る動物は、チンパンジーだとドリムは気づきました。

 ドリムは恐ろしくなりました。

 ドリムは急いで小さな森から逃げだすことにしました。

 ドリムは死ぬわけにはいかなかったのです。


 ドリムは、道端をとぼとぼと歩きました。

 人間に見つかるのは嫌だったので、人間に見つからないように気をつけました。

 裏道を歩き、ゴミ箱をあさっていた毛玉に出くわしました。

 ドリムは、ネコだと気が付きました。

 ネコはドリムに気が付きました。

 ネコはドリムに顔を近づけました。

 ネコは牙を剥きました。

 ドリムは、今まで出会った動物に比べれば、ネコはなんて小さいのだろうと思いました。大きく開いた口に、ドリムは落ちていた空きビンを詰めました。

 ネコは苦しそうに暴れ出しました。

 ドリムは歩き続けました。

 ドリムは死ぬわけにはいかなかったのです。


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