16 友達からの手紙
フィリップは動かないまま、石の棺に入れられました。
ドリムは上手くしがみ付き、フィリップと一緒に石の棺に収まりました。
蓋がされると、真っ暗になりました。
さすがに真っ暗では何も見えないので、ドリムは懐中電灯を持ち込んでいました。フィリップを棺に移している間に、人間の腰から下がっているものをもらっておいたのです。
人間用の懐中電灯のスイッチはとてもかたかったので、ドリムは苦労して電灯を点けました。
フィリップは動きませんでした。
棺はしばらく揺られた後、上から何かを乗せるような音がしていました。静かになると、ひんやりしました。
地中に埋められたのかもしれないと思いました。なんとなく、息苦しかったのです。
ドリムはフィリップのそばにいました。
フィリップと約束したからです。
フィリップは動きませんでした。
ドリムは気にしませんでした。
懐中電灯をともした薄暗い棺の中で、ドリムは動かないフィリップと一緒にいました。
することがないので、フィリップの隣で横になりました。
話し相手もいないので、退屈でした。
フィリップとずっと一緒にいると約束しました。フィリップも死んでいるので、ドリムもこのまま、死んで一緒にいてもいいのかなと思いました。
棺の中には食べるものはありません。このままじっとして、フィリップの隣で死んでしまえば、フィリップとの約束を果たしたことになるのでしょうか。
ドリムは退屈して横になり、自分の握りこんだ手を見ました。
しばらく、ずっと握ったままだった前足がありました。
どうして握ったままにしていたのか、思いだすのに時間がかかりました。
フィリップに、小さな紙を渡されたのです。
フィリップに、後で返すように言われた、小さな紙でした。
ドリムは、どうして最近、動きにくかったのか理解しました。前足の片方を、ずっと握ったままだったからなのです。
フィリップに返さなくてはいけません。
ドリムは、フィリップに渡された紙を、約束通りにフィリップに返そうとしました。
ドリムは、ずっと握ったままだった小さな紙を、横たわったまま動かないフィリップの手に握らせようとしました。
でも、フィリップは読むことができません。
ドリムは、フィリップに紙を返したことになるのでしょうか。
よくわかりませんでした。
フィリップは、もう何も読むことも、見ることさえできないのです。
ドリムは、フィリップから渡された紙を広げてみました。
フィリップに紙を返せない時は、ドリムが読んでもいいことになっていたのです。
ドリムがずっと握っていたので、小さな紙はすっかり汚れていました。
ドリムは手の力が弱かったので、小さな紙はあまり痛んでいませんでした。
小さな文字で、いくつかの単語が並んでいました。
ドリムは、はっきりと文字を読むことができませんでした。
簡単な単語だけなら、読むことができました。
ドリムは文字を読んでみました。
「……お願い……ドリムは……生きて……」
フィリップは死んでしまいました。
ドリムは最後まで、フィリップのお願いを実行しようとしていました。
フィリップが死んでしまっても、ドリムはフィリップのそばにいようとするのだと、フィリップは知っていたのです。
ドリムは何度も文字を繰り返して読み、その意味を考えました。
ドリムの目から、涙があふれ、ドリムの目から、涙がこぼれました。
フィリップは、ドリムにいくつもお願いをしました。
ドリムは、フィリップの最後のお願いを叶えなければいけないと思いました。




