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ネズミのドリム  作者: 西玉
フィリップとの約束
16/24

16 友達からの手紙

 フィリップは動かないまま、石の棺に入れられました。

 ドリムは上手くしがみ付き、フィリップと一緒に石の棺に収まりました。

 蓋がされると、真っ暗になりました。

 さすがに真っ暗では何も見えないので、ドリムは懐中電灯を持ち込んでいました。フィリップを棺に移している間に、人間の腰から下がっているものをもらっておいたのです。


 人間用の懐中電灯のスイッチはとてもかたかったので、ドリムは苦労して電灯を点けました。

 フィリップは動きませんでした。

 棺はしばらく揺られた後、上から何かを乗せるような音がしていました。静かになると、ひんやりしました。

 地中に埋められたのかもしれないと思いました。なんとなく、息苦しかったのです。


 ドリムはフィリップのそばにいました。

 フィリップと約束したからです。

 フィリップは動きませんでした。

 ドリムは気にしませんでした。

 懐中電灯をともした薄暗い棺の中で、ドリムは動かないフィリップと一緒にいました。

 することがないので、フィリップの隣で横になりました。

 話し相手もいないので、退屈でした。


 フィリップとずっと一緒にいると約束しました。フィリップも死んでいるので、ドリムもこのまま、死んで一緒にいてもいいのかなと思いました。

 棺の中には食べるものはありません。このままじっとして、フィリップの隣で死んでしまえば、フィリップとの約束を果たしたことになるのでしょうか。

 ドリムは退屈して横になり、自分の握りこんだ手を見ました。

 しばらく、ずっと握ったままだった前足がありました。

 どうして握ったままにしていたのか、思いだすのに時間がかかりました。


 フィリップに、小さな紙を渡されたのです。

 フィリップに、後で返すように言われた、小さな紙でした。

 ドリムは、どうして最近、動きにくかったのか理解しました。前足の片方を、ずっと握ったままだったからなのです。

 フィリップに返さなくてはいけません。


 ドリムは、フィリップに渡された紙を、約束通りにフィリップに返そうとしました。

 ドリムは、ずっと握ったままだった小さな紙を、横たわったまま動かないフィリップの手に握らせようとしました。

 でも、フィリップは読むことができません。

 ドリムは、フィリップに紙を返したことになるのでしょうか。

 よくわかりませんでした。

 フィリップは、もう何も読むことも、見ることさえできないのです。


 ドリムは、フィリップから渡された紙を広げてみました。

 フィリップに紙を返せない時は、ドリムが読んでもいいことになっていたのです。

 ドリムがずっと握っていたので、小さな紙はすっかり汚れていました。

 ドリムは手の力が弱かったので、小さな紙はあまり痛んでいませんでした。


 小さな文字で、いくつかの単語が並んでいました。

 ドリムは、はっきりと文字を読むことができませんでした。

 簡単な単語だけなら、読むことができました。

 ドリムは文字を読んでみました。


「……お願い……ドリムは……生きて……」


 フィリップは死んでしまいました。

 ドリムは最後まで、フィリップのお願いを実行しようとしていました。

 フィリップが死んでしまっても、ドリムはフィリップのそばにいようとするのだと、フィリップは知っていたのです。


 ドリムは何度も文字を繰り返して読み、その意味を考えました。

 ドリムの目から、涙があふれ、ドリムの目から、涙がこぼれました。

 フィリップは、ドリムにいくつもお願いをしました。

 ドリムは、フィリップの最後のお願いを叶えなければいけないと思いました。


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