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反逆のリヴァースドール 空っぽのナナリー  作者: ニャンジロー
第三章 フォルトワースの悪魔
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3-17 帰還せし者達

~前回までのあらすじ~

カーディフが教主の座に就くために暗躍している事を語るジャスパー。

暗殺を命じられた自分達は捨て駒であり、口封じの為に消される。

彼はそれを知りながらも、仲間だけは逃がそうとカリンへ助力を求める。

自分の命を除外して考えるジャスパーをナナリーは一喝する。

そして彼女は、協力して一緒に脱出する事を提案するのだった。

ここはフォルトワースの遺跡管理事務室。

ナナリー達が突入した遺跡の入り口にある連絡所である。

ここでは彼女達が突入したC地区の他、A地区やB地区へ繋がるリフトを管理して

おり、探索者とのやり取りやサポートを行う為に設置された施設であった。


ここでは下層からの無線もギリギリ届くため、彼らはここで連絡を待ち、要請が

あればリフトを動作させるなどの探索隊の手助けをするのだ。


ナナリー達が遺跡に入ってから既に数時間が経過していた。

ナナリー達以外にも別のエリアを探索しているチームは居たが、カーディフの本来

の目的はカリン・シャルルの暗殺であった為、彼らは様々な理由を付け早々に引き

揚げさせられていた。

現在遺跡にいる探索隊はカリンが率いるシャルル隊だけになっており、彼の計画は

着々と進行していた。


事務室にはグラーツとランデックというテンプルナイトが待機していた。

グラーツはカーディフの部下であり、本部で待つカーディフと例の二つ目の出入り

口で待機しているリーズへ遺跡正門側の状況を知らせる役を担っていた。

もう一人のランデックは、別の教主候補のグリフィニア・カラカスの部下であり、

今回の事件の裏とは何も関わりもない人物であった。


彼ら二人は別々の思惑を持ちながら、シャルル隊からの帰還の連絡を待っていた。

事務室の通信パネルが光り、無線を受信したことを告げる。

目の前に座っていたランデックがスイッチを押し、通信に返答する。


「はい、こちら管理事務室。感度良好。シャルル隊応答せよ」


「…た、助けてくれ!

 シャルルさんに同行していたドモンだ」


軽い気持ちで応答したランデックだったが、聞こえて来た慌てふためく声に驚く。

緩み切っていた彼は真面目な顔になって通信機へ向けて声を掛ける。


「どうした、何があった」


「遺跡の下層で敵に襲われたんだ。

 暗くて良く分からなかったが、ありゃ、ギガンティアかもしれん。

 とにかくリフトを降ろして上に上げてくれ。

 うちの若いの二人とシャルルさんが戻らねえんだ。

 至急救援隊を組織してくれ。頼む」


「わかった、すぐ対応する。敵は追ってきているか?」


「大丈夫だ。上層までは来てない。

 今の所センサーに反応はない」


「わかった。リフト前で待機していてくれ」


ランデックはグラーツに向かって叫ぶ。


「緊急事態だ。シャルル隊が敵と遭遇、数名が行方不明という話だ。

 敵にギガンティアが居たと言う情報もある。

 すぐに本部へ連絡してくれ。

 俺は帰還者の引き上げをする。

 お前は本部への連絡して指示を仰いでくれ」


「待ってくれ。詳細はどうなっている?

 帰還者の内訳を聞いてくれ」


事情を知っているグラーツは慌てた風を装って状況を確認する。

何も知らないランデックはドモンへ連絡を取り、グラーツへ詳細を伝える。


「帰還したのはドモン、デリー、ライラの三人。ワーカー二台のみだそうだ」


「エル・ギガンティアはどうした?」


「一機は不明。もう一機は収納済みだそうだ。

 搭乗者のライラって奴は疲労困憊で倒れてるらしい」


グラーツは帰還者にカリン・シャルルが含まれていない事を確認し、任務が

滞りなく進んでいる事に期待を持った。


「そうか。詳細は分かった。本部へ連絡を取って来る。

 お前は彼らの引き上げを指示してくれ」


「了解」


二人はそれぞれ対応を始める。

ランデックはリフトの動作をしているワーカーへ連絡を取り、グラーツは本部へ

直通の連絡が取れる通信室へ移動した。

だが、彼が通信を送ったのは教団本部へではなかった。

遺跡のもう一つの入り口に待機していた、コーネリア・リーズに対してであった。



遺跡の入り口では、リフトに乗ってドモン達のワーカーが戻って来た。

彼らの傍へリフトの担当のワーカーが急いで駆けつける。


「事情は聴いたぞ。大丈夫なのか?」


このワーカーの搭乗者は暗殺の事情など知らない様だった。

ドモンは内心ほっとしながらも困った風を装いながら通信に答える。


「ああ、三人とも怪我はないんだ。ただ、逃げるのにえらく疲労してな。

 ともかくキャリアーに戻らせてもらう」


「そうしてくれ。救助隊についてはこちらに任せろ。

 何かあったら連絡をくれれば対応するから待機していてくれ」


「助かるよ。頼む」


ドモンはワーカーで敬礼をすると自分達のキャリアーに向かって走らせる。

デリーも会釈をしながられに続いた。


「…大丈夫みたいですね」


テンプルナイト達の対応が普段通りだった事に安心したのか、デリーからドモン

のワーカーへ通信が送られて来た。

ドモンの後ろで寝たふりをしていたライラも顔を上げ、ドモンと目を合わせると

ホッとしたような表情を浮かべた。


「ああ、恐らく俺らは抹殺のターゲットにはなっていないのだろう。

 皆が暗殺の件を知っている訳じゃないだろうしな。

 予定通り、俺らは待機して様子見だ。

 後は旦那達が上手くやってくれることを祈ろう」


ドモン達はキャリアーに辿り着くとテキパキとワーカーをコンテナに収納する。

彼らは息を潜め、事態が動くのを待った。



その頃、コーネリア・リーズは遺跡のD地区の第一階層に居た。

このD地区はカーディフの部下が発見した遺跡の二つ目の入り口である。

この入り口は情報が秘匿されており、カーディフの関係者の一部しか知らない。

このD地区の二階層をリフトで降りて行くと、ナナリー達が襲撃されたエリアへと

繋がっている構造になっていた。


リーズはカーディフの密命を受け、部下と共にジャスパー達の帰還を待っていた。

彼女達の目的は、まさにシャスパー達の口封じであった。

帰還した彼らを遺跡から出さずに抹殺する、それが任務の内容だった。

辛くもジャスパーの予測は的中していたのだ。


作戦遂行の為、余り広くないこのエリアには照明が設置され、それなりの明るさを

保っていた。

リーズはギガンティア「ヒメノカリス」に搭乗し、傍らにはテンプルナイト共通機

である「オルレア」タイプが二機控えていた。

それにはリーズに腹心であるフィラッハとヴェルスが搭乗しており、それぞれ大型

のアサルトライフルとショットガンを携行していた。


彼女の操縦席に通信が届く。

入り口で待機しているキャリアーからだった。


「リーズ様、グラーツから通信がありました。

 正門から入った探索者達が帰還したそうです。

 帰還したのは三名、機体はワーカー二機のみとの事です。

 カリン・シャルルと他のギガンティアは詳細不明。

 計画の進行が漏れた様子はない、とのことです」


「了解した。

 引き続き監視を続行するよう伝えろ。

 あと、騒ぎが大きくならないように箝口令が出た事にしておけ。

 他に動きがあるようならすぐ連絡するようにとも伝えろ」


「御意」


(カリン・シャルルは戻らなかったか。

 ジャスパーめ、上手くやったようだな)


リーズは少し気が楽になった。

カリンがジャスパーの手を逃れて帰還する事があれば、事が面倒になる。

その状況が回避されたと言うだけでも彼女にとっては朗報であった。


「リーズ様、ジャスパー殿から連絡です」


「来たか。何と言ってる」


「リフトを降ろすよう要求しています。

 あと任務状況の報告が。

 目標は、下層の未探索エリアへ落下。

 それ以外は乱戦によりロスト。

 味方の被害は、搭乗していたグランサムタイプを二機失ったと」


(直接殺害は出来なかったのか。

 それにしても被害が大きいな。

 サルベージャーとはいえ、機体はエル・ギガンティアを持っている集団だ。

 もう少し警戒するべきだったか。

 いや、三機全て戻って来るよりもやり易くなったと考えれば良いか…)


彼女は頭の中で状況を整理すると指示を出した。


「わかった。リフトを降ろしてやれ」


リフトの傍でワーカーがパネルを操作する。

上がって来たリフトにはジャスパー達が搭乗していた「グランサム」が一機乗って

おり、傍には大破して倒れている同型機がもう一機あった。

シャスパーが何とか一機だけでも機体を持ち帰って来たという事なのだろう。


リフトに居るグランサムから通信が入る。


「リーズ様直々にお出迎えとは光栄ですな」


乗っているのはジャスパーのようだった。

皮肉を込めた言葉が送られてきた。


「任務ご苦労。目標はどうなった」


「橋の爆発に巻き込んで下層へ落下させた。

 普通なら生きちゃいないだろう」


「いないだろう、じゃ困るのだがな」


「こちらは二機もやられたんだ。

 それでも一応作戦パターン通りに事を進めたんだ。

 もっと褒めてくれたっていいんだぜ」


「口の減らん奴だ。

 ラパスとスクレはどうした」


「大丈夫だ。脱出してこの機体に同乗している」


「そうか。

 とにかく休め。先のリフトにキャリアーを止めてある。

 疲れただろう。機体を預けてゆっくりするんだな」


「そりゃどうも。

 それで、休む前に一つ聞きたい事があるんだが…」


ジャスパーは一拍置いて尋ねる。


「何でフル武装で三機もお出迎えがいるんだ?

 俺に機体を降り、キャリアーに移れと言える程安全なエリアなんだろう?

 随分物騒なお出迎えじゃないか」


明らかに何か探りを入れるようなジャスパーの言葉。

リーズは少し顔をしかめたが、何事になかったような声で返す。


「お前達の安全を確保する為だろうが」


「何からだ?」


「何?」


「調査済みのエリアで、一体何と戦うつもりでギガンティアを三機も用意して

 いるんだって聞いてるんだよ」


「…」


リーズはその問いに答えられなかった。


間違いない。

奴は、ジャスパーは何かに気づいたのだ。

自分達が何をする為にギガンティアを持ち出しているのか。


リーズはその可能性を考えなかったわけではない。

だが、彼女は正直ジャスパーをそこまで賢い男だとは思っていなかった。

そんな彼女に対し、ジャスパーは決定的な言葉を発する。


「…敵が一機しか戻って来なくて、安心したか?」


彼女は言葉を失う。

自分の心を見透かされたように感じたからだ。

それを格下と思っていた人間にされるのは屈辱だった。


彼女は目の前にいるグランサムを睨みつける。

そして目を閉じると深呼吸をした。


奴が何を話そうが、何も変わらない。

目の前に居るこの男を始末すればそれで終わりだ。


そう心の中で唱えると、ざわついた心を静め、目を見開いた。

敵は目の前の一機。しかも乱戦帰りだ。

こちらは三機。装備も気力も充実している。負けるはずもない。


彼女は落ち着いた表情に戻ると彼に向かって言葉を投げかける。

恐らく最後になるであろう言葉を。

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