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反逆のリヴァースドール 空っぽのナナリー  作者: ニャンジロー
第三章 フォルトワースの悪魔
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3-11 暗闇の先は

~前回までのあらすじ~

フォルトワースの遺跡の探索がついに開始された。

ナナリー達は町の中心部の遺跡に案内される。

だが、シャルルにはギガンティアどころか随伴者もおらず、不遇な扱いに不安を

覚えていた。

そんな中、ナナリーはシャルルのワーカーに同乗したいと願い出る。

シャルルの仕事ぶりを見たいと言う彼女を受け入れ、シャルルはナナリーと共に

ワーカーに乗り込んだ。

それぞれ機体の準備が整う。

皆はレインの提案したフォーメションを確認する。

前方にフリージア、後方にスカーレットセージを配置しワーカー達を守る。

その後ろからセミキャリアーが自動的に付いて行くという形だ。

各人は担当の位置を確認し、通信回線の連携などの設定を済ます。

シャルルは全員に聞こえる様に設定した通信チャンネルで指示を出す。


「これより突入します。

 アシュランド様、下の階層の地図データは送りましたので下層へ向かうリフト

 まで先導をお願いします。

 ちなみに下の階の動力源は作動しておらず、暗いままです。

 気を付けて下さい」


「了解した。

 後、レインでいい。敬称は不要だ」


「承知しました、レインさん。

 途中撤退の判断などは私が行いますが、サルベージャーチームとしての指示は

 ドモン様…さんにお願いします。

 その方が皆動きやすいでしょうし」


「そうそう、砕けてくれてかまわないよ。

 ここには俺らしかいないんだ。気負う必要も無いよ」


ドモンの気さくな態度にシャルルの心も少し軽くなる。

ドモンは少し考えた後、話を続けた。


「指示だが、危険を一番に察知するのは旦那のいるポジションだから、戦闘や撤退

 の判断は旦那に任せたい。

 皆も旦那の指示に従ってくれ。

 旦那も危険だと判断したらすぐ皆に伝えてくれ」


「わかった。

 危険と判断したらすぐ指示を出す。

 その時はライラのスカーレットセージを盾に固まって後退してくれ。

 ライラ、皆を頼む」


「おう、任せろ」


三人の信頼し合っているやり取りをシャルルは心強く感じた。


「それでは出発しましょう」


シャルルがそう言うと、皆下層へ降りるリフトの上に機体を移動させる。

ワーカーがリフトを作動させると、ゆっくりと床が沈み始め下層へ降りていく。

下層は真っ暗だった。

得体の知れない地の底へ向かう光景は、それだけでも恐怖を感じる程だ。

しばらく経つと、リフトは下層に到着した。

天井のリフトが降りて来た穴から光が差し込んでいる。


「これより前進する。陣形を崩さず付いて来てくれ」


フリージアがゆっくりと歩き出す。

それに続いて三台のワーカーと最後にスカーレットセージが動き出す。

このC-1の区画は調査済みになっている。

共有された地図を確認しながら、皆フリージアに続いて移動する。

各機体はライトで周囲を照らしてはいるが、とにかく周囲は真っ暗だ。

先ほどリフトで降りて来た天井からもれる光が段々小さくなっていく。


ワーカーの中でナナリーは探知センサーを確認しながら周囲を見回す。

周囲は本当に真っ暗闇だ。

ギガンティアやワーカーのライトに照らされる岩山の中に朽ちた古い建造物が

いくつか見える。

ナナリーは暗く不気味な光景に不安を覚え、キョロキョロと周囲を見回す。


「怖いですか?」


シャルルが後ろをちらりと見て声を掛けて来た。

不意に話しかけられ、ナナリーは恥ずかしそうにセンサーを見るふりをした。


「ごめんなさい。慣れていないので」


「大丈夫ですよ。

 この区域は探索も終わっています。

 ガーディアンも駆逐されていますから危険はありません」


「そ、そうでしたね…」


「でも、わかります。

 まるで吸い込まれそうな闇ですからね。

 普通なら怖くても当たり前ですよ」


落ち着いているように見えるシャルルを覗き込みながら、ナナリーは尋ねる。


「シャルルさんは、怖くないんですか」


「怖いですよ。

 一人取り残されたらどうなるだろうって思いますね」


「その割には、平気そうな感じですね…」


「そう振舞っていますから。

 私、そういう立場に居ますので、そうせざるを得ないんです」


シャルルは自分を飾らず答えた。

つい、彼女は本音を話してしまう。

普段、こんな風に自分の気持ちを話す事はない。

少し距離を詰められただけでこんなに口が軽くなるのは、それでいいのかと

自問自答してしまう。

何か偽の友達とか恋人とかに騙されたら、自分は簡単に相手に情報を渡して

しまうのではないかと少し不安になった。


一方、ナナリーはシャルルの先ほどの言葉が少し気になっていた。

この人は幼いながらも立派に仕事をこなしている。

けれど、心の中はいきなり大人になれるわけではないだろう。

この人はやっぱり少し無理をして気を張っているのだろうと思った。

そんなナナリーの口からつい相手の心を探るような言葉が出てしまう。


「辛く…ないですか?」


それはシャルルの現在の心境を的確に突く言葉だった。

シャルルは少し沈黙した後、答えた。


「辛い時もあります。

 …でも、私にはこれしかないので」


これしかない。

その言葉は、恐らく周囲からの期待に応える事でしか居場所を得る方法がない

という事なのだろう。

ナナリーは詳しい事情を知るわけではない。

だが、シャルルは今まで甘えを許されずにやって来たのだろう。

やはり守られているだけの自分とは違う。

自分の力で立場を守ろうとするシャルルを、ナナリーはやはり立派だと思った。


「リフトを確認した。接近する」


レインから通信が入る。

ライトで照らされた先に、入り口と同じようなリフトがある。

これは下層と繋がっているのだろう。

シャルルは機体を前進させ、操作機器があると思われる個所へ向かう。


「私がリフトの動作確認をします。少しお待ち下さい」


シャルルはそう言うと、ワーカーに乗ったまま機器のパネルにアクセスする。

すると、機器からは反応があった。


(エネルギーが残っている… 動かせるのか。

 過去に入れられたエネルギーが、今まで残っていたという事なのだろうか…)


シャルルは少し疑問を持ったが、リフトが動かせる事を幸いと考えた。


「動かせそうです。皆さん、リフトへ乗って下さい」


皆、指示に従いリフト上に集まる。

皆が集まるとシャルルは言った。


「降りた先はいよいよ未調査区域です。

 皆さん、センサーに注意して進んで下さい」


そう言うとシャルルはリフトを下降させる。

少しずつ姿を現す下層は相変わらず真っ暗で、闇に引き込まれる様な恐怖がある。

皆緊張の為か無駄口を叩くものはいない。

リフトが地面に降りると、フリージアがライトを周囲に照らし、前に出た。


「左の壁面に沿って前進する。陣形を崩さないように付いてきてくれ」


レインはそう言うとゆっくりと機体を進める。

皆も周囲を確認しながらゆっくりと追従する。

周囲はあまり広くないようだった。


岩肌がむき出しな壁面に沿って歩いて行くと、巨大なゲートが姿を現した。

進んだ先にあったのが下層へ降りるリフトではなく、ゲートであった事に皆少し

驚いていた。


「遺跡の中にゲートがあるなんて… 動作できるか確認します。

 各機、周囲の警戒をお願いします」


シャルルはそう言うとゲートに接近する。

ナナリーは近づいてくるゲートを見上げながら呟く。


「どうして、遺跡の中にゲートがあるんでしょうか」


このゲートは入り口にあった物と似ていて、共通規格で作られている様だった。

シャルルはアクセスを試みる。


「確かに…

 下層を掘ってリフトを作るのは理解出来ますが、ゲートで区切る意味は何が

 あるのでしょうね。

 もしかしたら、本当にアストラルゲート何て物があるのかも…」


「アストラルゲート?」


「ゲートの先の空間を捻じ曲げて、無理やり空間を作る技術らしいですよ。

 古代文明の文献の記述でしか残っていないそうですが」


シャルルはナナリーと会話しながらゲートへアクセスを試みた。

意外と簡単に機器からの反応があった。


(これも動く… 奥に生きている動力炉があるのかもしれない…)


シャルルはそう思うと、皆に確認をする。


「このゲートも開けられます。周囲はどうですか?」


「周囲に動体、熱源は無い」


「ライトや暗視で視認できる範囲には岩山しかないな」


レインやライラから周囲の状況確認が入る。


「シャルルさん、確認できていない右の方も回ってみるかい」


ドモンが提案をしてくる。

シャルルはその言葉に頷き答えた。


「ゲートを開けてから後ろ側に敵がいたら危険です。

 手間ですが、このエリアを隅まで調査しましょう」


ナナリー達はゲートを通り過ぎ、壁に沿って進む。

ほどなくして右側の壁面に到着し、ぐるりと一周して入り口のリフトまで

戻って来た。


「リフトを確認した。さっき降りた時に使ったやつだな」


「相変わらず熱源、動体共に反応なしだ」


ギガンティアに乗る二人からの報告は共に異常なしだった。

シャルルは自動で記録される移動範囲のデータを確認する。

移動可能な範囲を全て回った事が確認出来た。


「狭いエリアですね。ゲート以外は特に何もない様ですね」


その言葉にがっかりしたようなデリーの言葉が返って来た。


「岩山ばっかりでお宝は何も見つからないですよ…

 これはもうゲートを潜るしかないんじゃないですかね」


お宝目当ての彼女の言葉はともかく、このエリア自体の安全は確保された。

そうなるとゲートを開けて進むしか道はなかった。


「そうですね。

 このエリアの安全は確保出来そうですので、ゲートを開けてみましょう」


ナナリー達は先ほどのゲートの前に戻る。

シャルルがゲートにアクセスを開始する。


「それではゲートを開放します」


念のためフリージアとスカーレットセージがワーカーを庇うように前に出る。

信号を受けたゲートがゆっくりと開いて行く。


先に待つのは宝の山か、それとも地獄か。

ナナリー達はゆっくりとゲートの中に進んで行った。

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