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反逆のリヴァースドール 空っぽのナナリー  作者: ニャンジロー
第三章 フォルトワースの悪魔
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3-9 彼女が一つだけ持っていた物

~前回までのあらすじ~

探索への参加の前に、教団側による所持機体の確認が行われた。

確認作業に現れたテンプルナイトは、ナナリーよりも年下に見える少女だった。

しっかりと仕事をこなす彼女にドモンは感心する。

ナナリーはそれらの話を聞き、自分とは違いきちんと役割を果たす彼女に尊敬の

念を抱いていた。

ナナリー達が参加する調査の前日の事だった。

テンプルナイト騎士団の一室で、カリン・シャルルは上司であるコーネリア・

リーズに呼び出されていた。


「えっ… 探索にギガンティアを出せないのですか?」


突然の事に驚くシャルル。

リーズは事務的に話を進める。


「そうだ。お前はワーカーで参加しろ」


「ですが、それだとサルベージャー達への支援が十分に出来ません。

 何かあったら…」


「必要無いから言っている。

 彼らの戦力の報告を見たぞ。

 エル・ギガンティアが二機もいるなら、お前が戦う必要もないだろう」


「しかし…」


「同日、他の箇所でも探査が行われるのは知っているだろう。

 そちらに回すのだ。

 お前は彼らの誘導と監視をしっかしてくれればいい。

 …不満か?」


圧力を感じるリーズの言葉。

シャルルは反論に意味はないと察した。


「いえ。承知しました。

 それでは武装型のワーカーを一台回して頂ければ」


「ちゃんと探知機能を強化した奴を回してやる。安心しろ」


「よろしくお願いします」


「以上だ。働きを期待しているぞ」


「お任せ下さい」


シャルルはそう答え、部屋を後にする。


(直前になってギガンティアを取り上げられるなんて…)


そう思ったが、彼女自身なんとなく理由は分かっていた。


これは自分へのあてつけだ。


孤児であり、年端も行かない自分がテンプルナイトに抜擢された理由。

それは教主様の命だ。

自分がエル・ギガンティア、リコリスへの適応率が高い事を教主様が感じ取った、

それだけの理由で選ばれたのだ。


リコリス教団の中で、教主となる者はリコリスとの適応率は絶対だ。

それを偶然にも教主様に見い出され、自分は教主候補として抜擢された。

何も持っていなかった自分が、たった一つだけ持っていた物。

それが、エル・ギガンティア、リコリスとの相性。


頼る物が無かった自分にとって、それは幸運な事だった。

衣食住を保証され、教育を受け、仕事も与えられた。

だからそれに報いられる様に常に努力して来たつもりだ。

学問も、武術も、ギガンティアの操縦も、この6年で大人にも負けない力を身に

着けたと自負している。

教主になどなれなくてもいい。

ただ、受けた恩を教団に返せればと、そう思っている。


だが周囲の人間はそうは思っていない。

降って湧いた教主候補の小娘に良い印象を抱くわけがない。

規律の厳しい騎士団だ。

表立っての嫌がらせは出来ないが、遠回しには色々やられてきた。

それでも私はそれらを気にせずに邁進して来た。


最近はそれも少し減ったと思っていたが、教主様のお体がよくないと言われる今、

教主の座を狙って地盤固めをする者もいるのだろう。

リーズ様も教主候補のカーディフ様と親しい。

私に余計な成果を出させないように、と考えているのかもしれない。

いっその事、教主になる事を拒否する誓約書でも書けば良いのだろうか。

しかしそれでは選んでくれた教主様の顔に泥を塗る事にもなる。


彼女はため息を付く。

生きていくのに心配のない生活を与えられたと言うのに、自分は針の筵の様なこの

立場から逃げ出したいと思っているのかもしれない。


そんな自分の気持ちに向き合おうとすればする程、彼女の心は暗く沈んでいく。

彼女は一人頭を振ってネガティブな思考を振り払おうとする。

そして思った。


今はただ耐えよう。

新しい教主様が決まればあてつけも減るだろう。


だがこの考え方は、自分が教主様の死を待っている様にも感じられた。

そして、教主候補でなくなり不要になった自分はどんな扱いを受けるのか…

彼女の思考はぐるぐると周り、心は晴れないままだった。


それでもカリン・シャルルは、与えられた役目を必死にこなそうとしていた。

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