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反逆のリヴァースドール 空っぽのナナリー  作者: ニャンジロー
第三章 フォルトワースの悪魔
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3-8 教団騎士の少女

~前回までのあらすじ~

ナナリー達は城塞都市フォルトワースへ到着する。

巨大な城壁を見てはしゃぐナナリーにレインは町や教団騎士の事を話す。

彼女達は町のガレージに到着すると探索に向けて早速行動を開始する。

一方、教団の教主ミスルトゥは、城の玉座で得体のしれないエネルギーの波動の

接近を感じていた。

フォルトワースへ到着したナナリー達。

ドモンはレインとデリーと共に探索の仕事の詳細を確認するために役場へ向かう。

ライラとナナリーは滞在中の宿を確保するために町の繁華街へ繰り出した。

彼女達は観光も兼ねて商店が並ぶ町の大通りを歩いていた。


「綺麗な町ですね」


ナナリーは辺りを見回しながら言う。


「そうだな。

 美しいと言うより清潔な町と言う感じだな。手入れが行き届いていると言うか」


ライラの言う通り、町は綺麗に整備されていた。

歴史のある町ではあるはずだが、それよりも綺麗に機能的に保たれているという

表現が正しかった。


「アンバー結晶のお陰でお金持ちだって話があったので、そのせいでしょうか」


「それもだろうけど、教団が管理しているから規則とか厳しいのかもな。

 汚したまま放っておくと、怒られたり罰金とられたりするとかな」


そんな話をしていると、通りの向こうから白い制服を着た集団が歩いて来た。

町の人達は皆その進行を妨げないように道を空け、会釈をする。

ナナリー達もそれに倣い、道の隅へ移動した。

ライラはその集団を見て呟く。


「きっと、あれがテンプルナイトだな」


威厳のありそうな制服の一団が、周囲を見回しながら歩いて行く。

その先頭には一回り小さく見える、背の低い少女が歩いている。

だがその姿は規律正しく、大きな旗を掲げ力強く皆を先導していた。

ナナリーは小声でライラに話しかける。


「何だが小さくてかわいくて、それでいてかっこいい人がいますね」


「本人の目の前で見た目の事を話すな。聞こえるぞ」


テンプルナイトが二人の前を通り過ぎる時、先頭の少女とナナリーの目が合う。

少女は足は止めずナナリーに視線を送る。

数秒間視線が合った後、何事もなかったように通り過ぎて行った。

二人はテンプルナイトの行軍を見送る。


「すごく見られてました…」


「あれは聞こえてたかもしれないな。

 悪意はなかったんだろうけど、口は禍の元だぞ」


「…反省します」


「まあ、もめた訳じゃないしな。

 珍しい物も見れてたし、とっとと宿を探そう」


「そうしましょう」


二人は宿の看板を探して大通りを歩く。

しばらくして良さそうな宿を見つけ、ライラは無事部屋を確保した。

そして日が暮れる頃、二人はガレージに戻って来たドモン達と合流した。

彼らは宿に戻る前に町の料理屋に入り夕食を取る事にした。


テーブルに付き、皆は料理を注文する。

料理の到着を待つナナリーは隣に座るドモンに尋ねた。


「ところで、例の探索のお仕事は取れたんですか?」


そう訊ねるナナリーにドモンは笑顔で頷いた。


「ああ、探索の募集は確かにあって申し込みも出来たよ。

 近日中に開始すると言う話だ。

 ただ、契約時にこちらの装備とかの確認が必要でな。

 所持してる機体の説明をしたら、受付の人が驚いてたよ」


楽しそうに話すドモンにライラが反応する。


「そりゃそうだろうな。

 エル・ギガンティアが二機もいるって言うんだからな。

 教団としては怪しい奴らが来たと思ってるんじゃないかな」


「まあ、その辺はちゃんと手続きしてくれたし大丈夫だろう。

 それと、明日はライラも来てくれ。

 機体を実際に確認したいと言われててな」


ドモンの言葉にライラは少し考え込む素振りを見せる。


「教団に見せちまって大丈夫かな。

 まあ、いずれは仕事でも使うし周りには広まるんだろうけど…」


「他のサルベージャーとは組まないようにしてくれるそうだ。

 意外と話が分かる感じだったから大丈夫だろう」


「そっか。

 そもそも疑ってたらこの仕事は受けられないしな」


「当日はテンプルナイトも探索に参加してくれるらしい。

 まあ、監視が一番の目的なんだろうが」


ドモンとライラのやり取りを聞きながら、デリーは期待に胸を膨らませる。


「いよいよですね! 

 キャリアーが買えるくらい儲かるといいなあ」


目をキラキラさせる彼女を、ドモンは少し呆れ気味に眺める。


「まあ、何が見つかるかはわからないからな。

 せっかくだし、良い物が見つかるまで何度か参加してみるのもありかもな」


そんな話をしている内に料理が運ばれてきた。

彼らは数日後に行われる探索に期待を膨らませながら食事を楽しんだ。



それから一夜明けて。

レイン、ドモン、ライラの三人は機体の確認の件で再度役場を訪れていた。

ドモンが役場の受付を済まし、担当者を待つ。


しばらくしてやってきたのは二人のテンプルナイトだった。

二人共女性で、一人はかなり小柄な人物だった。

ライラはその姿に見覚えがあった。


(この間、大通りで見た娘だ…)


テンプルナイトの二人は、どちらも白いフードの付いた騎士団のマントを羽織って

いたが、例の少女には大きすぎるのか少し不格好に見えた。

それでも彼女の所作は丁寧でしっかりとした声で喋り始めた。


「皆さん、初めまして。

 私はテンプルナイトのカリン・シャルルと申します。

 私が貴方達の当日のサポートを行います。

 どうぞよろしくお願いします」


シャルルは礼儀正しく礼をする。

ドモンは一歩前に出て手を差し出す。


「丁寧にどうも。マサキ・ドモンだ。

 このサルベージャー隊の責任者をやってる」


ドモンはシャルルと握手をしながら彼女を観察する。

ナナリーよりは年下に見える。

後ろにもう一人いるのにこの娘が話を進めるという事は、見かけによらずそれなり

の地位を持っているという事なのだろう。

若いのにしっかりしている、とドモンは好印象を持った。


シャルルはドモンと握手をしながレインとライラにも目をやる。


「私の姿を見て不安に感じる方もいらっしゃると思いますが、他のテンプルナイト

 と同じく教団より厳しく指導を受けております。

 どうかご安心を」


そう言うと彼女はほほ笑んだ。

ドモンは心を見透かされたようにも感じたが、それよりも彼女が自分の年齢の事で

苦心しているのだと察した。


「歳でどうこう言うつもりはありませんよ。

 もし誤解を与えるような態度を取っていたらすみませんね」


「いえ、慣れておりますので」


二人の様子を見ていたライラは、シャルルに近づいて行くと手を差し出した。


「ライラ・クリスターだ。よろしく。

 もう一人、後ろに居るのが…」


「レイン・アシュランドだ。よろしく頼む」


レインはいつものように素っ気なく答え、軽く会釈をする

シャルルはレインに会釈を返し、ライラと握手を交わした。


「それでは、倉庫に移動して機体を確認させてもらいます。

 万が一の町の安全の為です。ご協力下さい。

 確認の際に、後ろの者が撮影を行います。

 撮影した映像は機体と所有者の確認の為に使い、外部には漏らしません。

 契約書も用意しましたので、同意なさるなら書類にサインをお願いします」


後ろで控えていたテンプルナイトがドモンに近づき書類を手渡す。

それは情報の守秘義務について書かれた書類だった。

先ほど言われたような秘密を守ります的な文章が書かれていた。


「随分対応がしっかりしているんですな」


ドモンは少し感心しながら書類に目を通す。


「はい。契約に関しては厳格に行っております。

 外部の方と仕事をする際はこちらも最大限の警戒を行いますが、だからこそ

 相手側にも安心して頂くのが礼儀と心得ていますので」


(なるほど… 教団もアンバー結晶を売りさばく商売人でもある。

 信用は第一と言うわけか)


ドモンは一通り書類に目を通すとサインをし、シャルルに手渡した。

シャルルはサインを確認すると重ねてあった書類の控えの方をドモンへ返す。


「ありがとうございます。

 同意は得られたようなのでこちらにおいで下さい」


シャルルに促されて、三人は隣の倉庫へ移動する。

中は広く、ギガンティアも整備出来るような大きさだった。

綺麗に片づけられており、隅にわずかに物があるだけの広いスペースだった。


「確認はここで行います。

 普段ならここへキャリアーを入れて機体を確認するのですが…

 何分、エル・ギガンティアを持ちこまれた方は初めてなので」


シャルルの言葉を聞くと、レインは倉庫の中心の方へ歩いて行く。

中央付近で振り返るとシャルルに向かって話しかけた。


「この辺りに機体を出すが構わないか?」


「お願いします。

 機体の外部の撮影と、無駄な爆発物、申請以外の人員が潜んでいないかを

 確認させてもらいます」


「わかった」


レインとシャルルのやり取りを見て、ライラはレインの元へ駆けて行く。

レインはライラと少し会話を交わし、それぞれが干渉しない位置へ移動する。

そして二人はほぼ同時に機体を呼び出した。


倉庫の中に光の柱が出現し、二機のギガンティアが姿を現した。

テンプルナイトの二人はその光景を驚いて見つめる。


「これが… エル・ギガンティアですか」


驚くシャルルにドモンは意外そうに尋ねる。


「見るのは初めてかい?

 そちらの教主様もエル・ギガンティアを持っていると聞いたが」


「ええ。

 ですが、あれは悪魔を倒す為の剣です。

 普段のいざこざで使う事は禁じられていると聞いています。

 私も機体そのものは見た事はありません」


シャルルはそう言うと、手前にあるフィリージアに近づいて行く。

機体を見上げてレインに向かって話しかける。


「では撮影と簡単な確認をさせてもらいます。

 機体をしゃがませて下さい」


テンプルナイトの二人は機体の確認作業を開始する。

双眼鏡で各部を確認したり、搭乗者の居る操縦席を軽くのぞき込んだりと

色々やっていたが、それも長くはかからず確認は滞りなく完了した。


「ご協力ありがとうございます。

 特に問題はないと確認出来ました。

 数日内にご連絡を差し上げますので、探索の準備をしながらお待ち下さい。

 当日はワーカーも二台まで参加可能となっていますので」


「よろしく頼みます」


ドモンとシャルルは再び握手を交わす。

三人に会釈をするとテンプルナイトの二人は去って行った。



ドモン達は宿に戻り、留守番をしていたナナリーとデリーと合流する。

彼らは軽食を取りながら今回の確認の件について話し合っていた。

ライラはレインにテンプルナイトの印象を訊ねる。


「旦那から見て、テンプルナイト達はどう見えた?」


「特に問題はなかったな。

 機体を必要以上に調べる事も無かったし、騙す意図も無さそうだ。

 仕事を受ける事自体に問題はないだろう」


淡々と答えるレインの言葉にドモンは頷く。

彼もテンプルナイト自体には特に不信感は抱いていないようだ。

それよりも対応してくれた少女の方が印象に残っている様だった。


「それよりも、あの対応してくれたテンプルナイトの嬢ちゃんは凄かったな。

 大人顔負けのしっかり者だった」


「テンプルナイトの嬢ちゃん、って何ですか?」


会話を聞いていたデリーが不思議そうに尋ねる。

デリーの質問にライラが答えた。


「確認に来たテンプルナイトが小さい女の子でさ。

 ナナリーも見たろ、大通りの行軍。

 あの先頭に居たちっこい娘があたしらの機体を調べに来たんだよ」


ライラは通りの件を思い出し、ナナリーに話を振る。

ナナリーはその場面を思い出して驚いた表情を浮かべた。


「あの人がですか? そんな偶然もあるんですね」


「ああ、凄いしっかり者だったよ。

 あたしがあの歳の頃はもっとクソガキだったと思うけどな」


ライラは昔の自分とあの少女を記憶の中で比べて感心する。

そんなライラをドモンは少し意地悪そうな目つきで見つめる。


「そうだな。

 あのくらいのライラは、手伝いもしないで遊んでばっかりだったなぁ」


唐突に自分の昔話を周囲に暴露され、ライラは恥ずかしそうな顔をする。


「やめてくれよ… おやじに言われると誤魔し効かねえだろ。

 自分で言っといて何だけど…」


ライラが顔を赤くして拗ねるのを見て皆が笑う。

一緒に笑っていたデリーはふとその少女について小さな違和感を覚える。


「けど、そんなに若い子なんですか。

 騎士団にそんな年齢の子って、何か変じゃありません?」


ドモンはその言葉を聞いて、対応してくれたカリン・シャルルの姿を思い出す。


「多分、ナナリーより歳は下だろうな。

 ただ、仕事はしっかりこなしていたし、能力的には問題なさそうだったな。

 あの子なりに何か事情があるんだろ。

 テンプルナイトの組織自体がどうなっているのかは知らんが、偉い人の血縁だ

 とか、色々あるのかもしれないな」


ナナリーはドモン達と対応したシャルルの姿は見ていない。

彼女は行軍していた時のシャルルの姿を思い出し、思いを巡らせる。


(私より年下なのに騎士団で働いているなんて。凄い人なんだな)


自分は守られているばかりで大した事も出来ない。

それに比べるとなんて立派なのだろうとナナリーは彼女に尊敬の念を向けた。

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